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2020年6月12日金曜日

アスピリンの大腸癌予防効果

アスピリンは大腸癌に関連する遺伝子異常の1つであるPIK3CA(phosphatidylinositol-4,5-bisphosphonate 3-kinase, catalytic subunit alpha polypeptide gene.)を抑制することで, 大腸癌リスクを低下させる報告がある(N Engl J Med 2012;367:1596-606.)

アスピリン vs Placebo, ≥4yr比較した8 RCTsMeta-analysisでは,
(Lancet 2011;377:31-41)
アスピリン群では悪性腫瘍による死亡Riskが有意に低下.
 2.3% vs 3.0%, OR 0.79[0.68-0.92].
悪性腫瘍別の死亡Risk


0-5yr follow≥5yr follow

0-5yr follow≥5yr follow
食道0.78[0.27-2.23]0.43[0.11-1.72]原発不明癌0.56[0.28-1.15]0.56[0.09-3.38]
膵臓0.88[0.44-1.77]0.25[0.07-0.92]全固形癌0.88[0.72-1.08]0.64[0.49-0.85]
結腸0.78[0.39-1.56]0.41[0.17-1.00]血液腫瘍0.82[0.44-1.54]0.34[0.09-1.28]
1.85[0.81-4.23]3.09[0.64-14.91]全悪性腫瘍0.88[0.72-1.06]0.62[0.47-0.82]
その他消化管0.67[0.23-1.99]0.20[0.04-0.91]



消化管全体0.96[0.67-1.38]0.46[0.27-0.77]



0.92[0.65-1.30]0.68[0.42-1.10]



前立腺0.70[0.29-1.73]0.52[0.20-1.34]



泌尿器1.04[0.44-2.47]1.28[0.36-4.54]



他の固形癌0.86[0.52-1.44]1.01[0.51-1.98]



非消化管全体0.90[0.69-1.16]0.76[0.54-1.08]



・Studyは虚血性心疾患, 脳梗塞, TIAに対する治療であり, アスピリンDoseも様々.
 腫瘍発症を主なアウトカムとしていない点に注意.

45歳以上の女性において, ASA 100mgを隔日投与したRCTtrial終了後, 10年以上フォローしたObservational cohort.
(Ann Intern Med. 2013;159:77-85.)
・乳癌, 大腸癌, 肺癌の3つを評価
 長期間のフォローにおいて, 大腸癌のみリスク軽減効果が見込める.


964名の大腸癌, 直腸癌患者のProspective cohort.
(N Engl J Med 2012;367:1596-606.)
・アスピリン使用の有無, PIK3CA変異の有無別の生存率を評価.
・PIK3CA変異は161(うちASA使用は65),
・Wild-type PIK3CA803(うちASA使用は337)であった.
・ASAは大腸癌死亡リスクを低下させるがPIK3CA変異(+)のみで低下した
 さらに, 大腸癌診断前よりASAを使用している群でのみリスクは低下. 診断後に使用しても意味なし.
PIK3CA Type癌性死亡HR全死亡HR
Wild-type0.96[0.69-1.32]0.94[0.75-1.17]
Mutant0.18[0.06-0.61]0.54[0.31-0.94]

現在までは長期間のアスピリン使用により大腸癌リスクが低下する可能性が示唆されているものの, RCTはなくCohortによる知見が主であった.

この度, Lynch症候群における前向きのアスピリンによる予防効果を評価したRCTが発表

CAPP2: Lynch症候群におけるアスピリンによる大腸癌予防効果
(Lancet 2020; 395: 1855–63)
・Lynch症候群と診断された861例を対象としアスピリン 600mg/d使用群 vs Placeboに割り付け10年間以上継続. 大腸癌発症リスクを比較したDB-RCT.
・患者は25歳以上で, 病的mismatch-repair mutationが証明された患者, またはAmsterdam diagnostic criteriaを満たす患者の親族, 治癒したLynch症候群による腫瘍の病歴がある患者(大腸は保たれている)を対象.

アウトカム


・10年~20年以内における大腸癌発症率はアスピリン群で9%, Placebo群で13%. 
 HR 0.65[0.43-0.97]有意に大腸癌リスクは低下.
・大腸癌以外のLynch症候群関連腫瘍については有意差なし.

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高リスク患者において, 長期間のアスピリン使用は大腸癌リスクを低下させる.
数年では効果はなく, 少なくとも10年近くは使用し続けた方が良い
水道からアスピリン+スタチン水が出る日も近いか.