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2016年12月22日木曜日

Refeeding Syndrome

(Head & Neck Oncology 2009, 1:4)(BMJ 2008;336:1495-8)

Refeeding syndromeは低栄養状態の患者に対して, 栄養を開始することで, 水分, 電解質の致命的な変化を来す症候群のこと
・低P血症が中心. Na, H2O, Glu, Prot, Fat, thiamine, 低K, 低Mgも.
・頻度は不明だが, Pを含まないTPOでは100%で低Pを生じる
 (Pを含んでも、18%で生じる)
・ICU患者では, 栄養を開始してすぐ(1.9d(1.1))に34%で低Pを認めた

Refeeding Syndromeの機序
・低栄養を続くと, 血中P, Mg, Kは低値となる.
・そこで再度栄養 ⇒ インスリン分泌 ⇒ P, Mg, Kの細胞内Shift ⇒ 低P, Mg, K血症が増悪.
・PはATP合成, RBCの酸素結合, 腎の酸塩基調節に関与
⇒ 低Pの増悪にて細胞機能が障害される
・Kの減少 ⇒ 不整脈, 心停止, 横紋筋融解など
 Mg減少 ⇒ 心機能低下, 神経筋障害
 VitB1低下 ⇒ Wernicke-Korsakoff’s syndrome, Beriberi
 水分は浸透圧により細胞内に移行し, 浮腫をきたす.

生じ得る症状
(Nutrition 30 (2014) 1448–1455)

Refeeding Syndromeのリスク因子
(BMJ 2008;336:1495-8)
Refeeding SyndromeのHigh Risk患者
Anorexia nervosa 慢性低栄養
慢性アルコール中毒  Marasmus, 長期のダイエット
悪性腫瘍  病的肥満, 持続的な体重減少
術後患者  >7d絶食の高ストレス下の患者
高齢者  吸収不良症候群
コントロール不良のDM 制酸剤(Mg, Al)の長期使用(Pと結合)

利尿薬の長期使用

NICE guidelineのHigh Risk Criteria
以下の1つ以上 以下の2つ以上
BMI <16 BMI <18.5
過去3-6moで意図せず>15%Wt loss 過去3-6moで意図せず>10%Wt loss
>10d栄養を殆ど摂っていない >5d栄養を殆ど摂っていない
栄養前に低P, Mg, Kがある アルコール中毒, 薬剤, インスリン
化学療法, 制酸剤, 利尿剤の使用

他のリスク因子
(Nutrition 30 (2014) 1448–1455)

アムステルダムの病院において, 2011年2月〜4月に内科に緊急入院となった178例中, 97例(54%)がNICE criteriaを満たした
(Neth J Med. 2016 Mar;74(3):116-21.)
・このうち14例でRefeeding syndromeを発症(リスク群の14%)
・低リン血症+臨床症状で診断.
・非リスク群の81例からは低リン血症が1例のみ

特にRefeeding syndromeのリスクとなる因子は,
 入院時の低BMI
 悪性腫瘍による入院
 悪性腫瘍の既往 であった

入院成人患者で栄養が開始された243例の前向きCohort.
(BMJ Open 2013;3:e002173.)
・このうち133例がNICE criteriaで高リスク群に分類.
・10日以上の栄養摂取不良, >15%の体重減少, 初期Mg低値は感度66.7%, 特異度>80%でRSを予測(体重減少は59.1%)
・初期Mg低値は独立したリスク因子であった

Refeeding Syndromeの予防
栄養開始前にP, Ca, K, MgをCheck, Risk FactorをCheck
・カリウム 2-4mEq/kg/d, リン 0.3-0.6mEq/kg/d, Mg 0.2mEq/kg/d IVもしくは0.4mEq/kg/d 経口
栄養開始前にThiamine, Vit B, 電解質補正をStart
・Thiamineは200-300mg/dで開始.
・他マルチビタミンやビタミンB合剤も1日3回投与で開始する
 上記補正は少なくとも10日間は継続
栄養は低Calより開始し, 4-7dで徐々にUPし目標値へ
・10kcal/kg/24hより開始する.
・BMI≤14の高度低栄養の場合, 心臓, 循環モニタリングしつつ, 5kcal/kg/24hより開始
栄養開始後2wkは電解質バランスをフォローする

NICEガイドラインにおけるRefeeding syndrome予防のフローチャート
(Head & Neck Oncology 2009, 1:4)

ICU患者でRefeeding syndrome(低P血症で定義)となった339例を対象とし通常の栄養管理 vs 栄養制限群に割り付け, 比較したRCT.
(Lancet Respir Med 2015; 3: 943–52 )
・患者は≥18歳のICU患者で, 栄養を開始して72h以内に血清P <0.65mmol/L(2.0mg/dL)となった患者群(基礎値より0.5mg/dL以上の低下も必要)
・他の低P血症の原因がある場合は除外(透析, 最近の副甲状腺切除, 高P血症の治療中など)

栄養制限プロトコール:
〜2日間
2日〜

20kcal/h
リンの補正必要なし
40kcal/h, 60kcal/hを経て2-3日で通常量へ

リン補正必要あり
20kcal/hで継続

途中で再度リン低下
20kcal/hへ
アウトカム: 各指標の変化

アウトカム: 
・60日、90日生存率は有意にカロリー制限群の方が良好な結果.
 入院期間は長くなる

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Refeeding Syndromeで重要なのは,
・リスクのある患者を抽出し,
・カロリーに先行して電解質、ビタミンをしっかりと補正すること,
・カロリーは緩徐に開始しつつ、電解質をフォロー
 途中で電解質が狂えばカロリーは増やさず/もしくは減量して電解質を逐一補正、を心がける.

このLancet Respir Med 2015; 3: 943–52のStudyは個人的にすごく印象深い報告でした.