ジフェンヒドラミン中毒
咳止めシロップ, パブロンゴールドAによる中毒症
(ブロン中毒, 金パブ)
(ブロン中毒, 金パブ)
市販の咳止めシロップにはコデイン, クロルフェニラミン, カフェインなどが含まれている.
・例えば, 新ブロン液エースは1本120mlで,
ジヒドロコデインリン酸塩が60mg
グアイフェネシンが340mg
クロルフェニラミン24mg
無水カフェイン124mg 含有.
成人では1回10ml使用する.
・参考までに処方薬のリン酸コデインの場合は, 1回20mg, 1日60mgまで.
咳止めシロップの例(パブロンゴールドAを含む)と含有成分
新ブロン液エース®
(120ml) |
パブロン咳止め液®
(120ml) |
アネトン咳止めZ液®
(100ml) |
パブロンゴールドA
(1包) |
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コデインリン酸塩
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60mg
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60mg
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83mg
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8mg
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dl.メチルエフェドリン塩酸塩
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100mg
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125mg
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20mg
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クロルフェニラミンマレイン酸
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24mg
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16mg
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20mg
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2.5mg
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グアイフェネシン
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340mg
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400mg
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60mg
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無水カフェイン
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124mg
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100mg
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25mg
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リゾチーム
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100mg
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キキョウ流エキス
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1.6g
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オウヒ流エキス
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2.4g
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ゼネガ流エキス
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2.5g
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アセトアミノフェン
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300mg
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・基本的にリン酸コデイン, エフェドリン, カフェインが含まれる
また他に漢方がいくつか
しばしばこのコデイン, メチルエフェドリンを目当てに,これら薬剤を濫用する輩がいる.
・パブロンゴールドAの濫用を「金パブ」と呼ぶ.
パブロンゴールドAにはアセトアミノフェンも300mg含まれているため, 劇症肝炎のリスクにもなる点に注意.
・SSブロンという錠剤があり, コデイン30mg, メチルエフェドリン50mg, クロルフェニラミン8mgがが含有され, 依存症も多かった.
(Inter Med 47: 1013-1015, 2008)
各成分の特徴
(Inter Med 47: 1013-1015, 2008)
ジヒドロコデインはオピオイドの1つ.
・鎮痛作用はモルヒネの1/10であるが, 鎮咳作用を有する
・依存も他のオピオイドと比較して少ないが, 長期間の高用量の使用では身体依存をきたす.
・オピオイドの中毒症状:
Vital sign
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意識
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呼吸
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眼
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皮膚, 粘膜
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腸管
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尿
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Narcotic
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BP, HR, BT↓
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意識障害
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呼吸抑制
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縮瞳
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蠕動低下
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メチルエフェドリンはβ2受容体刺激作用を有する
・中枢にも作用し, 精神的依存をきたす
症状は頻脈, 振戦など.
カフェインは中枢刺激作用を有する
ジヒドロコデイン, メチルエフェドリン, カフェイン3種類の混合作用によりさらに依存性をもつと考えられる
・ジヒドロコデイン, メチルエフェドリン, カフェインの合剤による依存, 中毒症状を, 元々ブロンにより流行した経緯からブロン中毒, ブロン依存と呼ぶ.
ブロン液の依存により生じる症状
(IRYO 2000;54:201-205)
症状のタイプにより, 3つに分類
・分裂病型(幻覚妄想): 幻聴, 被害・注察妄想があり, 離脱期に自律神経症状を呈することが少ない
症状出現までの期間が比較的短期(数カ月〜1年)
断薬症状が比較的早期に消失する
・感情障害型: 不安, 焦燥感, 抑うつ感, 感情鈍麻が主症状.
離脱期に発汗, 振戦, 頭痛, 口渇, 下痢, 嘔吐などの自律神経症状や不安, 不眠, 落ち着きのなさなどの精神症状を呈する.
症状発現までの期間も2-3年と長期.
・移行型
ブロン, シンナー, メタンフェタミン中毒患者の症状タイプ
(北里医学 1988;18:677-689)
左から
幻覚妄想状態
感情障害
その双方
幻覚妄想状態
感情障害
その双方
・ブロンでは感情障害タイプが他よりも多い
またブロン中毒では離脱症状も他のシンナーやアンフェタミン中毒より多い.
ブロン中毒における症状タイプと, 離脱症状のリスク
・感情障害型では離脱症状も多い.
(デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物中毒)
同じ咳止めシロップでも, エスエスブロン液Lはコデインやメチルエフェドリンは含まれておらず, デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物が含まれている.
・エスエスブロン液Lの成分
デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物 240mg
グアイフェネシン 680mg
クロルフェニラミンマレイン酸塩 48mg
無水カフェイン 248mg
・デキストロメトルファンは処方薬で言えばメジコン®
デキストロメトルファン(DM)はケタミンやphencyclidineと同じ, 幻覚作用がある薬剤の1つ.
・経口摂取により速やかに吸収され, 2.5時間後に血中濃度はピーク
・体内でCYP2D6により代謝され, デキストルファンとなり作用する.
・Vdは5.0-6.7L/kg
代謝経路は腎臓. 糞便へは0.1%程度しか排泄されない
(Pediatric Emergency Care Volume 2004;20:858-63)
・治療用量では, DXはσ受容体に結合し, 鎮咳作用を呈し, 古典的なオピオイド作用(μ, δ受容体)はきたさない.
・高用量ではNMDAアンタゴニスト作用, PCP様精神症状を呈する
>> 興奮症状となる
(J Pharmacol Sci 106, 22 – 27 (2008))(Pediatric Emergency Care Volume 2004;20:858-63)
DMは通常の投与量ならば鎮咳作用を示し, オピオイドと異なり消化管症状を来しにくい薬剤であるが,
・高用量(120mg以上, もしくは2mg/kg以上)使用するとPhencyclidine(PCP)様の作用を呈する
>> 体外離脱感, 見当識障害, 離人症, 混迷, 傾眠, 嗜眠, 協調性の低下, 焦燥感, 行動や会話のいびつさ, 解離麻酔, 幻視など.
・特に幻視は>2.5mg/kgの高用量で生じる
急性中毒の報告: 上 6歳未満, 下 6歳以上
(Clinical Toxicology (2007) 45, 662–677)
・小児や若年での報告例が多い.
6歳以上では体重あたり2mg/kg以上の摂取でリスクとなる. 大半は5mg/kg以上の摂取
慢性中毒
・健常人ボランティアによる調査では, 60mg/dを7日間使用すると74%で軽度の副作用を認める(悪心嘔吐, 腹痛, 頭痛, 下痢, めまい)