海綿静脈洞はトルコ鞍の両側で, 上眼窩裂〜側頭骨錐体の内側に及ぶ一対の硬膜静脈洞.
視神経や下垂体, 副鼻腔と隣接している
内部には外転神経, 内頸動脈が通り, 外側壁には動眼神経(III), 滑車神経(IV), 眼神経(V1), 上顎神経(V2)が通る.
・III~VI (V3を除く)神経が通過する = 眼に関連する神経が通過.
海綿静脈洞症候群: CSS
海綿静脈洞に障害(炎症やMass, 外傷など)を生じ, 結果 III, IV, V1, V2, VIの神経障害を呈する
海綿静脈洞症候群 151例と, 他の報告から.
(10: Trans Ophthalmol Soc U K. 1953;73:117-152. 12: Mayo Clin Proc. 1970;45:617-623. Arch Neurol. 1996 Oct;53(10):967-71.)
・多いのは腫瘍性, 外傷性, 血管性.
また炎症や術後も原因となる.
・腫瘍性では, 鼻咽喉癌, 転移, リンパ腫, 下垂体腺腫, 髄膜腫など.
・感染症では, ムコール症, 細菌性髄膜炎, 蝶形骨洞炎
HIVに関連するリンパ腫.
海綿静脈洞症候群 126例の解析:
(III~VI神経のうち2つ以上の障害, もしくは神経障害+画像所見で定義)
(Medicine 2007;86:278–281)
・腫瘍性が63%を占める
・ついで動脈瘤, 動静脈瘻が20%, Tolosa-Hunt症候群が13%, 感染症も原因となる(肥厚性髄膜炎, 副鼻腔炎)
それぞれの原因別の特徴.
・視神経も障害されるのは腫瘍性, その他が多い.
・疼痛はどれも認められるがTHSで頻度が高い
・CTやMRIではTHSを除き異常所見が認められることがほとんど
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ということで, 海綿静脈洞の異常を疑った場合はまず考えるべきは悪性腫瘍.
Tolosa-Hunt症候群(THS)は有名ですが, 基本的に除外診断となる.
THSについては次のブログで書きます.