敗血症性ショックとステロイド
基本的に, 「敗血症性ショック」, つまり補液負荷でも反応しない症例において, 血圧を上昇させる効果が期待できるもの, という認識になる.
それ故, 補液負荷で反応する患者群(重症敗血症)では使用しない.
2012年に行われた米国ICU医へのアンケートでも,
Severe sepsisに対しては83%がステロイド投与を推奨せず, Septic shockに対しては81%がステロイド投与を推奨している
(Journal of Critical Care (2012) 27, 351–361)
現在, ADRENAL studyという敗血症性ショック患者を対象としたステロイドの効果を評価するDB-RCTが進行中である.(Crit Care Resusc 2013; 15: 83–88)
その中で, 重症敗血症患者を対象としたDB-RCTが発表されたので紹介する
Effect of Hydrocortisone on Development of Shock Among Patients With Severe Sepsis. The HYPRESS Randomized Clinical Trial. JAMA
重症敗血症患者へのステロイド投与(HYPRESS trial)
・敗血症性ショックではなく, 重症敗血症患者 380例を対象としたDB-RCT.
・Hydrocortisone 200mg/dを持続投与 5日間, その後減量しDay 11に終了群 vs Placebo群に割り付け, 敗血症性ショック移行リスクを比較した.
・敗血症の定義は感染+SIRSクライテリア2項目以上
敗血症性ショックの定義(十分な補液後も循環不全が持続)を満たす群は除外.
他の理由でステロイド投与が必要となる患者群も除外.
*十分な補液とは, CVP≥8mmHg(人工呼吸器管理では≥12mmHg), CVO2 ≥70%で定義
母集団データ:
・APACHE IIやSOFAスコアを見るとやはりFrench trialあCORTICUSよりも随分低いアウトカム: 敗血症性ショック移行率, 死亡リスクは有意差なし.
ショック移行までの時間も有意差はない
合併症の比較
・ステロイド投与群では高血糖リスクが上昇する程度.
-----------------
基本的に敗血症に対するステロイド投与はガイドライン通り, 「補液で反応しない場合に使用する」と考えておけば良い
ADRENAL trialの結果が待ち遠しい