COPD患者において, 重度の低酸素状態の患者では, 長期酸素療法(LTOT)は効果的
(Chest. 2010 Jul;138(1):179-87.)
PaO2=<55mmHg or =<59mmHg + (右室負荷 or 多血症)患者においては, LTOTは死亡率の改善, ADLの改善が証明されている.
右室負荷; Dependent edema, 肺性P波
多血症; Ht>56%
・2L/minを15HR/dで使用し, 生存率55% vs 33%(P<0.05)
(MRC study, Lancet. 1981 Mar 28;1(8222):681-6.)
・肺血管抵抗の減少, 多血症の改善にも有効
(NIH NOTT, Ann Intern Med. 1980 Sep;93(3):391-8.)
中等度の低酸素, 症候性のCOPD患者に対するLTOTの効果は未だ不明.
中等度の低酸素血症(PaO2 56-65)では, LTOTの生存率改善は認められない.(OR 1.39[0.74-2.59])報告もある.
運動時の低酸素血症(+)患者への酸素療法
・運動時低酸素の定義は一定していない.
大体がSat 88-90%をCutoffとすることが多い.
・運動中の低酸素はCOPDの死亡Riskとなる; 6分歩行テスト中のSat>=4%の低下 or Sat<90%は死亡RR2.63
・運動時のO2吸入により6分間歩行テストの距離が伸びる可能性が示唆.
また, LTOTではADLの改善, QOLの改善が示唆されるが, 明確な結論は無し.
そこに中等度の低酸素血症を伴うCOPD患者に対するLTOTの効果を比較したRCT(LOTT trial)が発表
LOTT trial: 中等度低酸素血症を認めるCOPDに対する酸素療法の効果を評価したopen-label RCT.
(N Engl J Med 2016;375:1617-27.)
・安静時 SpO2 89-93%のCOPD患者を対象.
・また, Study開始 7ヶ月後から運動時低酸素患者群も対象とした.
運動時低酸素は, 6分間歩行にて5分以上SpO2 ≥80%を維持し, 10秒以上SpO2 <90%を満たす患者群を対象.
上記を満たす患者群 738例を, 長期間酸素投与群 vs 非投与群に割り付け, 比較.
・酸素投与群では安静時低酸素血症患者では24h使用,
運動時低酸素血症患者では運動時と睡眠時のみ使用する.
・酸素投与量は, 2分間以上の歩行時のSpO2 90%以上となるように年1回調節する. 睡眠時と安静時は2L/min
・非投与群では重度の低酸素(安静時SpO2≤88%, 運動時≤80%, 1分以上)を満たさない限り, 長期間酸素は使用しない
母集団データ
アウトカム(1-6年間フォロー, 中央値18.4ヶ月)
・死亡リスク, 入院リスクは両者で有意差なし.
さらに,
・COPD急性増悪リスク RR 1.08[0.98-1.19]
・CODP関連入院リスク RR 0.99[0.83-1.17] も有意差なし
・QOL, 肺機能, 6分間歩行距離も両者で変わらない結果.
しかしながら,
・Studyの導入前1-3ヶ月以内にCOPD急性増悪を呈した患者群では酸素投与群の方が死亡, 入院リスクが低かった(HR0.58[0.39-0.88])
・71歳以上の高齢者でも酸素投与群の方が予後(死亡, 入院リスク)が良い(HR 0.75[0.57-0.99])
・QOLが低い患者群(Quality of Well-Being Scale score <0.55)も予後が良くなる可能性がある(HR 0.77[0.60-0.99])
ただし, これらも多変量解析を行うと上記患者群でも有意差はない.
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COPDに対する在宅酸素療法のRCTはあまりなく, 適応もよく分からない.
LOTTはその意味では重要なStudyといえる. 長期予後で差がでることも考えられるため, この時点では「意味無し」と無下に言えないと思う