脳梗塞患者の降圧療法
脳梗塞ではt-PA使用患者ではsBP<185mmHg, 非使用感じゃでは<220mmHgを目標とする.
心不全や大動脈解離などが合併している場合は血圧をΔ15%まで低下させる。
[Ann Emerg Med. 2014;64:248-255.]
Stroke(ICH, Infarction)179名をLabetalol vs Lisinopril (トランデート®) vs Placeboで降圧(RCT, ITT) (Lancet Neurol 2009;8:48-56)
目標はsBP 145-155mmHg, ΔsBP 15mmHg
高血圧脳症, sBP>200は除外されている, 平均NIHSS score 9[5-16]
低血圧による症状出現時は中止とする
低血圧による症状出現時は中止とする
経口摂取可能ならば内服, 不可能ならば舌下 or IVで投与
Outcome | 降圧群(n=113) | プラセボ群(n=59) | RR |
2wk後の死亡, 完全依存 | 61% | 59% | 1.03[0.80-1.33] |
72hr以内のNIHSS 4以上の増加 | 6% | 5% | 1.22[0.32-4.54] |
24hr時点でのΔsBP | 21[17-25] | 11[5-17] | P=0.004 |
重大な副作用 | 0.91[0.69-1.12] |
SCAST; 脳梗塞, 出血患者2029名のDB-RCT. Lancet 2011;377:741-50
発症<30hrを対象とし, Candesartan 4mg(D1), 16mg(D3-7) vs Placeobに割り付け.
当然血圧はCandesartan群で有意に低下するが, 6mo 心血管系イベントは有意差無し(12% vs 11%, HR1.09[0.84-1.41])
他, 各Outcomeも有意差無し.
むしろCandesartan群でStokeの進行リスクがあがる傾向 (6% vs 4%, HR1.47[1.01-2.13])
むしろCandesartan群でStokeの進行リスクがあがる傾向 (6% vs 4%, HR1.47[1.01-2.13])
11 trialsのMetaでは, 死亡, 予後への影響は有意差無し(HR 1.04[0.97-1.12])
CATIS trial; 中国におけるSingle-blind RCT. JAMA. 2014;311(5):479-489.
脳梗塞発症48h以内で, sBP 140-220mmHgを満たす4071例を, 降圧群(24h以内に10-25%の降圧, 7d以内に<140/90を達成) vs 経過観察群(降圧薬を全て中止)に割り付け, 予後を比較.
血圧>220/120の患者, t-PA使用群は除外.
神経学的予後, 死亡リスク, 脳梗塞再発, 血管イベントすべて両群で有意差無し.
Subanalysisでも特に有意差のでる項目は無し.
>> 降圧しても予後の改善効果は乏しい。ただし、降圧しても予後が悪くなるわけでもない。どちらでも良い、という認識。
t−PA: プラスミノーゲンアクティベーター
発症3hr以内の投与にて
投与量は0.9mg/kg Max 90mg (国内は0.6mg/kg)
3MでのComplete or Near complete recover 31-50% vs 20-38%
NNT 7 と効果大だが, 3hr以内に来院する患者は2-5%程度のみ
NNT 7 と効果大だが, 3hr以内に来院する患者は2-5%程度のみ
副作用:脳出血 6.4% vs 0.6%
3M, 1Yでの死亡率に差は無し (NINDS rt-PA stroke Study)
Doseを1.1mg/kgとすると出血リスク↑↑
ATLANTIS, ECASS IIでは脳出血 8.0% vs 2.4%
11-13%で予後は改善するが,
6%で予後が増悪 もしくは死亡する可能性のある脳出血を起こす薬剤であること!
現在は発症4.5時間まで投与可能
脳梗塞後の時間とt-PAのまとめ: ECASS, ATLANTIS, NINDS, EPITHET trial
脳梗塞に対するt-PA(alteplase)治療を調査したRCTsのMeta. Lancet. 2010 May 15;375(9727):1695-703.
8RCTs, N=3670, 脳梗塞発症から300min以内の患者.
Outcome;発症3moのRS 0-1
時間 | Alteplase | Placebo | OR | NNT |
0-90min | 41.6% | 29.1% | 2.55[1.44-4.52] | 4.5 |
91-180min | 41.9% | 28.9% | 1.64[1.12-2.40] | 9 |
181-270min | 44.6% | 37.7% | 1.34[1.06-1.68] | 14.1 |
271-360min | 37.4% | 35.6% | 1.22[0.92-1.61] |
死亡率
時間 | Alteplase | Placebo | OR |
0-90min | 18.6% | 20.5% | 0.78[0.41-1.48] |
91-180min | 16.8% | 15.6% | 1.13[0.70-1.82] |
181-270min | 11% | 10.1% | 1.22[0.87-1.71] |
271-360min | 15% | 10.2% | 1.49[1.00-2.21] |
Parencymal hemorrhage type 2 | All intracerebral haemorrhage | |||||
時間 | Alteplase | Placebo | OR | Alteplase | Placebo | OR |
0-90min | 3.1% | 0% | - | 35.4% | 29.1% | 1.38[0.83-2.31] |
91-180min | 5.6% | 1% | 8.23[2.39-28.32] | 34.3% | 33% | 1.19[0.82-1.71] |
181-270min | 4.3% | 1.2% | 3.61[1.76-7.38] | 30.3% | 21.6% | 1.67[1.31-2.03] |
271-360min | 6.8% | 0.9% | 4.32[2.84-18.9] | 34% | 21.8% | 2.00[1.50-2.66] |
3-4.5hでのt−PA投与は神経予後改善効果がNNT14で期待でき,
死亡率を減らさない。ただし、脳出血は増加する。NNH 11程度。
9 RCTsのMeta-analysis Lancet 2014; 384: 1929–35
t−PA使用による神経予後良好に関与する因子を評価 (mRS 0−1)
t−PA投与時間別, 年齢別, NIHSS別の評価
≤3.0hではNNT 10程度 3.0−4.5hではNNT 20程度. ≥4.5hでは有意差なし.
年齢は高齢者でもt−PAを行う価値はある.
初期のNIHSS別の評価でもt−PAによる予後改善効果は期待できる結果.
年齢と投与時間別の評価.
>80y群では早期の投与でのみ予後改善効果がある. 3.0h以後では有意差なし.
t−PAによる脳出血リスクは上昇. NNHは50前後となる.
これも高齢者ではNNH 30前後
初期のNIHSSが高いほど出血リスクも高い.
t−PAは早ければ早いほど予後が良い
58353例のt-PA症例の解析. JAMA. 2013;309(23):2480-2488
onset-tPA投与までの時間と,院内死亡率, 神経学的予後, 脳出血リスクを評価.
アウトカム;
投与までの時間が短くなる毎に, 死亡率, 神経学的予後は良好となる.
15分短くなる毎に,
アウトカム | OR |
院内死亡 | 0.96[0.95-0.98] |
症候性頭蓋内出血 | 0.96[0.95-0.98] |
退院時自立 | 1.04[1.03-1.05] |
自宅退院 | 1.03[1.02-1.04] |
ラクナ梗塞に対するt−PA
脳梗塞に対するt-PAを評価したStudyではラクナ梗塞も含まれるが, ラクナ梗塞のみで評価したものは無し
実際適応に関しては医師により異なり, 推奨する人もしない人もいる.
推奨しない人は, 出血が致死的になる点を注意し, 推奨する人は出血は殆ど起らず, 現在までのRCTではラクナ梗塞群も含まれているので投与を推奨している.
11例のラクナ梗塞例と33例の非ラクナ梗塞例でt-PAを使用. Eur Neurol 2006;55:70–73
症候性出血は両群とも0例.
無症候性出血は各群9%で合併.
神経学的予後良好はラクナ梗塞群で27%, 非ラクナ梗塞群で60%.
有意差は認めないものの, 非ラクナの方がt-PA後の予後は良好(p= 0.083)
無症候性出血は各群9%で合併.
神経学的予後良好はラクナ梗塞群で27%, 非ラクナ梗塞群で60%.
有意差は認めないものの, 非ラクナの方がt-PA後の予後は良好(p= 0.083)
t−PAと脳出血
脳梗塞に対してt-PA治療施行された985名のCohort. Neurology® 2011;77:341–348
内195名で脳出血あり (19.8%[17.4-22.4]).
88.7%が24時間以内に発症.
t-PA後の出血Riskを評価; HAT score Neurology 2008;71:1417-23
DM(+) or Base Line Glu >200mg/dL |
|
No | 0pt |
YES | 1pt |
治療前のNIHSS Score | |
<15 | 0pt |
15-20 | 1pt |
>=20 | 2pt |
CTにて, 容易に低吸収域を確認 | |
できない | 0pt |
<1/3 MCA領域 | 1pt |
>=1/3 MCA領域 | 2pt |
0pt | 1pt | 2pt | 3pt | >3pt | |
患者数(400) | 153 | 121 | 84 | 33 | 9 |
全ICH(66) | 9(6%) | 19(16%) | 19(23%) | 12(36%) | 7(78%) |
症候性ICH(26) | 3(2%) | 6(5%) | 8(10%) | 5(15%) | 4(44%) |
致死性ICH(15) | 0(0%) | 4(3%) | 6(7%) | 2(6%) | 3(33%) |
ワーファリン使用者に対するt−PA JAMA. 2012;307(24):2600-2608
AHA/ASAガイドラインでは, ワーファリン内服中でもINR≤1.7であればt-PAの使用は可能とされているが, 根拠は無し.
GWTG-Stroke Registryの解析; 脳梗塞にてt-PAを使用した23437名のObservational study
内7.7%(1802名)がワーファリンを使用中, INRは1.20[1.07-1.40]
ワーファリン使用中とは, t-PA投与時から7日以内に使用歴があることを意味
Outcomeは36時間以内の症候性脳出血とし, ワーファリン使用群 vs 非使用群で比較.
ちなみにワーファリン使用患者のうち, INR 1.5-1.7は269名(15%)であった.
症候性の脳出血, 致死性の出血合併症, t-PAによる合併症, 死亡率全て有意差無し.
ワーファリン使用群の方が高齢, 基礎疾患も多く, 非調節ORではリスクは増大するように見えるが, 調節後は有意差無し.
<75歳, ≥75歳の解析も, INR値 1.5-1.7群の解析もワーファリン使用による合併症増加は認められない.
INR 1.7程度までならば出血リスクは増加しない.
日本人ではそもそも海外と比較してINRのターゲットが低く設定されており,これを適応すべきかは不明.
Neurology® 2012;79:31–38
アスピリン投与はt-PA療法の翌日から
t-PAで再灌流後も14-34%で再狭窄を生じる.
血小板作用の活性化が原因と言われており, 抗血小板薬の有用性が期待
ARTIS trial; 脳梗塞にてt-PA療法を施行する患者群のRCT. Lancet 2012; 380: 731–37
発症4.5時間以内でt-PAを適応としている.
t-PA投与後90分以内にASA300mg IV群 vs 24hr後から経口投与開始群に割り付け, 症候性脳出血, 神経予後を比較. (両群とも24hr後からは経口に切り替えている)
このTrialはN=800を予定していたが, 642名の時点で中止.
早期ASA IV群で有意に出血リスクが増加し, 予後は有意差無いため.
早期ASA IV群で有意に出血リスクが増加し, 予後は有意差無いため.
アスピリンはt-PA投与後 平均67分で投与されている.
Outcome;
3ヶ月後のmRS 0-2達成率は54.0% vs 57.2%, OR 0.91[0.66-1.26]
死亡率は11.2% vs 9.7%, p=0.54
症候性脳出血 4.3% vs 1.6%, AD 2.8%[0.2-5.4]
症候性脳出血は特に予後不良群で多く認められている.
症候性脳出血は特に予後不良群で多く認められている.
t−PA後の予後の予測
ASPECTS score : Alberta Stroke Programme Early CT Score
MCA領域を10カ所に分け, CT上虚血を認める部分を評価.
所見正常; 10pt, 虚血部位毎に-1ptで計算.
所見正常; 10pt, 虚血部位毎に-1ptで計算.
MCA領域; C, L, IC, M1-6, 島皮質
203名の脳梗塞でt-PA施行した患者のProspective study Lancet 2000;355:1670-74
内156名がAnterior circulation ischemia, 117でCT上虚血(+)
117名でASPECTSを評価し, 脳出血Risk, 3mo後神経予後を評価
Cutoff=<7としたとき,
予後不良(mRS 3-5, 死亡)に対するSn 78%, Sp 96%, OR82[23-290]
脳出血に対するSn 90%, Sp 62%, OR14[1.8-117]
予後不良(mRS 3-5, 死亡)に対するSn 78%, Sp 96%, OR82[23-290]
脳出血に対するSn 90%, Sp 62%, OR14[1.8-117]
CTではなく, MRI-DWIで評価した場合, Neurology 2010;75:555-61
477名のRetrospective study(from Japan)
DWI-ASPECT >=7ptは.
Sn88%, Sp33%でmRS 0-2を示唆. OR 1.85[1.07-3.24]
Sn88%, Sp33%でmRS 0-2を示唆. OR 1.85[1.07-3.24]
DWI-ASPECT>=9ptは,
Sn62%, Sp56%でmRS 0-1を示唆
Sn62%, Sp56%でmRS 0-1を示唆
DWI-ASPECT=<5ptは,
Sn40%, Sp87%で頭蓋内出血を示唆.
Sn38%, Sp88%で3mo死亡を示唆.
Sn38%, Sp88%で3mo死亡を示唆.
DRAGON score; Neurology® 2012;78:427–432
脳梗塞でt-PA療法施行した群の予後を推定
1319名でderivationを行い, 333名でvalidation施行.
Outcomeは3mo後の神経学的予後(mRSで評価)
Outcomeは3mo後の神経学的予後(mRSで評価)
DRAGON score; 0-10ptで評価
D
|
hyperDence sign, early CT sign | 各1pt |
R
|
発症前のmRS >1 | 1pt |
A
|
Age ≥80yr 65-79yr |
2pt 1pt |
G
|
Glucose >144mg/dL | 1pt |
O
|
Onset-treatment time ≥90min | 1pt |
N
|
NIHSS >15 10-15 5-9 0-4 |
3pt 2pt 1pt 0pt |
脳梗塞発症後 4.5h以内にt-PAを使用した228例で, DRAGON scoreのValidationを施行.
前のStudyと同様, score>7では予後良好例は無し. Stroke. 2013;44:1323-1328