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2014年12月19日金曜日

炎症性腸疾患とCMV

炎症性腸疾患とCMV感染症について
World J Gastroenterol 2014 January 14; 20(2): 509-517 
炎症性腸疾患, 特にUCの経過中にCMVが陽性となることがある
 CMV自体, 重症患者では陽性となることが知られており, 腸炎の経過や予後には関連しないという報告もあれば腸炎の増悪に関連しているとの報告もあり, その意義よくわかっていない.
 CMVの治療の併用についても, 寛解率の上昇や大腸切除リスクの低下が認められるという報告もあれば, 予後に影響しない報告もある.

IBD患者における組織中CMV陽性率 Digestive and Liver Disease 44 (2012) 541–548 

CDよりもUCの方が陽性率が高い傾向がある.
ステロイド不応性のIBD患者におけるCMVの陽性率と結腸切除率 Digestive and Liver Disease 44 (2012) 541–548 

Ganciclovirによる治療についての報告 Digestive and Liver Disease 44 (2012) 541–548 

 小規模の報告のみ. また非治療群と比較されたわけでもないため, なんとも言えない.

また診断方法にも問題がある
 CMV腸炎のGold standardは組織中のCMV抗体, DNAの証明であり, 血中mRNAやアンチゲネミアでは感度, 特異度共に不十分である可能性

検査の基本は組織におけるCMV DNAの検出
 よく行われるAntigenemiaやpp67 mRNAは感度, 特異度共に不十分.
Digestive and Liver Disease 44 (2012) 541–548 

187例のUC患者を評価. (Inflamm Bowel Dis 2013;19:1156–1163)
 Group I(105): 6ヶ月間steroid−free, thiopurine-freeの患者
 Group II(82): ステロイド不応性の患者群に分類し, 血清CMV IgM, IgG, antigenemia, real-time PCRを評価.

Group 1
Group 2
IgG(+)
75.2%
81.7%
IgG(-), IgM(-)
24.8%
18.3%
IgM(+)
0
1.2%
CMV Ag(+)
5.7%
32.9%(27)
CMV DNA

10/13
組織(HE染色)

7/27
 ステロイド不応性には組織所見やCMV DNA陽性例が多い

岡山大学付属病院でのRetrospective study. World J Gastroenterol 2014 January 14; 20(2): 509-517 
 UCで治療を行った患者群でCMV antigenemiaを評価した118例を対象
 CMV陽性群, 陰性群を比較した.
 初期寛解達成までの期間はCMV陽性例で有意に長い(21d vs 16d).
 30ヶ月フォローでの再発リスクや結腸切除リスクはCMVの有無に関わらず同等であった.

38例のIBD+CMV感染症患者の長期フォロー(30例がUC, 8例がCD) Eur J Gastroenterol Hepatol 2004;26:1146–1151 
 IBD再燃 875例の入院例のうち, 38例(4.3%)でCMV感染を認めた
 CMVの診断は組織所見, Immunohistochemistry ± CMV antigen, CMV DNA
 38例中13例が抗ウイルス薬(ganciclovir 5mg/kg bid 2wk)で治療を行った.
 治療群では12Mでの寛解, 腸切除率は変わらない.
 重症例やステロイド不応性ではCMV治療群の方が寛解率が良好となる


これらから,
UC患者では効率にCMVは陽性となる可能性がある
CMV自体がUCの重症化や再燃リスクに関わっている可能性は不明。治療の必要性も不明。
ただし, ステロイド不応性のUCにおいて, CMVが陽性ならばそれを治療する価値はあるかもしれない。
CMVの評価はアンチゲネミアやmRNAではなく、組織中DNAを評価すべきである。

ということはわかる。
それを踏まえたExpert opinionとしてのアルゴリズム: Digestive and Liver Disease 44 (2012) 541–548 
ステロイド不応性のUCで, 組織CMV DNAにて>250/mgでGanciclovirを併用