DESによるPCI後のアスピリン+クロピドグレルといった2剤療法の期間については,
N Engl J Med. 2010 Apr 15;362(15):1374-82が有名
12mo以上前にDrug-Eluting Stent留置された2701名のRCT
(REAL-LATE*, ZEST-LATE trial*の混合)
過去12mo, 99.7%がAspirin + Clopidogrelを併用しており, その間, 出血イベント, 他の心血管イベントを認めなかった患者群.
Aspirin(100-200mg/d) + Clopidogrel(75mg/d) vs Aspirin単独群で比較. 19.2moフォローし, 心血管イベントを評価(ITT).
母集団と, DAPTの期間: 母集団にはSTEMI, Non-STEMI, UAPも含まれる.
母集団と, DAPTの期間: 母集団にはSTEMI, Non-STEMI, UAPも含まれる.
Outcome; 24moの累積発症率
Outcome
|
A+C併用
|
A単独
|
HR
|
MI, 心血管死亡
|
1.8%
|
1.2%
|
1.65[0.80-3.36]
|
全死亡
|
1.6%
|
1.4%
|
1.52[0.75-3.50]
|
MI
|
0.8%
|
0.7%
|
1.41[0.54-3.71]
|
Stroke
|
1.0%
|
0.3%
|
2.22[0.68-7.20]
|
Stent thrombosis
|
0.4%
|
0.4%
|
1.23[0.33-4.58]
|
Repeat revascularization
|
3.1%
|
2.4%
|
1.37[0.83-2.27]
|
12moを超えてAspirinにClopidogrelを併用してもOutcomeの改善には繋がらない.
出血Riskが上昇するため, 12moを超えての投与は推奨されないという結果.
出血Riskが上昇するため, 12moを超えての投与は推奨されないという結果.
ARCTIC-Interruption trial: 待機的DES留置予定の2440例を対象
DES留置後1年間DAPTを行い, その後DAPT中断が可能な1259例を, DAPT中止(ASAのみ継続群) vs DAPT継続群(6−18M)に割り付け, フォロー Lancet 2014; 384: 1577–85
AMIに対する緊急PCI患者は除外.
DAPT中断不可能群は割り付け前の1年間で虚血イベントを生じた群, 新たな再還流療法を行い, DAPT延長する必要がある群, ASA耐性, ASAによるGI出血などのASA投与継続が困難な群
DAPT中断不可能群は割り付け前の1年間で虚血イベントを生じた群, 新たな再還流療法を行い, DAPT延長する必要がある群, ASA耐性, ASAによるGI出血などのASA投与継続が困難な群
アウトカム
ステント内血栓リスク, 死亡, ACSリスクなどすべて両者で有意差なし.
他にもいくつかのRCTがあり,
Optimal Duration of Dual Antiplatelet Therapy after Drug-Eluting Stent Implantation: A Randomized Controlled Trial. Circulation 2013
DES LATE; 韓国でのopen-label RCT.
PCI施行した後, DAPTを12ヶ月間以上行い, 出血や心血管系イベントが無く, 安定していた5045名を対象.
ASA単独投与 vs ASA+Clopidogrel併用群に割り付け, 24ヶ月フォロー. 心血管イベントリスクを比較.
患者はDrug-eluting stentでPCIを施行後, DAPTを開始され, 重度な出血, 心血管イベント(MI, Stroke, 再狭窄)無く経過した患者群.
DAPTは12ヶ月以上継続し, 割り付け(12-18ヶ月)
患者群;
年齢は平均62.4歳, 男性が69.3%. PCIの施行理由は狭心症 39%, 不安定狭心症 37.5%, Non-STEMI 10.6%, STEMI 12.5%
PCI施行〜割り付けまでの期間は12-18mが81%, 18-24mが12%, 平均13ヶ月程度.
アウトカム;
心血管イベント, 死亡リスクどれも有意差無し.
出血リスクも両者で有意差は認めない. また, Sub-analysisでも有意差無し.
出血リスクも両者で有意差は認めない. また, Sub-analysisでも有意差無し.
DAPTの期間によるアウトカムを評価したMeta-analysis
The Scientific World Journal Volume 2014, Article ID 794078,
短期投与 vs 長期投与を比較した RR
アウトカム
|
死亡, MI
|
MI
|
再灌流療法
|
Stent内
血栓 |
Stroke
|
3M vs 12M
|
0.64
[0.25-1.63] |
0.50
[0.09-2.72] |
1.15
[0.69-1.91] |
0.67
[0.11-3.98] |
1.00
[0.32-3.09] |
6M vs >12M
|
1.09
[0.84-1.41] |
1.18
[0.80-1.73] |
1.00
[0.66-1.50] |
1.50
[0.77-2.95] |
0.66
[0.36-1.20] |
12M vs >24M
|
0.64
[0.35-1.16] |
0.71
[0.27-1.85] |
0.73
[0.44-1.20] |
0.81
[0.22-3.00] |
0.45
[0.14-1.45] |
全体
|
0.97
[0.77-1.22] |
1.05
[0.74-1.49] |
0.95
[0.72-1.24] |
1.23
[0.70-2.16] |
0.66
[0.41-1.07] |
アウトカム
|
全死亡
|
心血管
死亡 |
Major
Bleeding |
Total
Bleeding |
3M vs 12M
|
0.62
[0.20-1.90] |
0.50
[0.09-2.72] |
0.33
[0.07-1.65] |
0.50
[0.17-1.46] |
6M vs >12M
|
0.96
[0.70-1.32] |
1.00
[0.65-1.55] |
0.40
[0.18-0.91] |
0.24
[0.12-0.50] |
12M vs >24M
|
0.66
[0.33-1.31] |
3.03
[0.32-29.08] |
||
全体
|
0.87
[0.66-1.16] |
0.96
[0.63-1.46] |
0.48
[0.25-0.93] |
0.50
{0.16-0.54]
|
母集団別
|
Primary outcome RR
|
全体
|
1.01[0.82-1.23]
|
<65歳
|
0.97[0.65-1.43]
|
>65歳
|
1.03[0.80-1.33]
|
糖尿病
|
1.08[0.75-1.56]
|
糖尿病なし
|
0.96[0.73-1.25]
|
ACS/UAP
|
1.10[0.83-1.45]
|
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これらの結果から, AMI以外の待機的なPCI施行例において, DESを使用した場合のDAPTの投与期間は最低12ヶ月で良い可能性がある.
しかしながらこの結果を覆すRCTが発表: DAPT trial
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DAPT trial: >18yでDESを使用してPCIを施行, その後1年間DAPTを施行された患者群9961例を対象. N Engl J Med 2014;371:2155-66.
12ヶ月の時点でDAPTをASA単剤に切り替える群 vs DAPTを30ヶ月まで継続する群に割り付け.
除外項目は, ステント直径 <2.25mm, >4.0mmの症例, 妊婦, DAPTを中止せねばならない待機手術を予定, 余命<3y, 長期間Warfarin投与, 薬剤アレルギー, 同意得られない患者, BMSを併用している患者.
母集団データ:
アウトカムは再狭窄, 心血管系イベントリスクを比較した.
ステント内血栓やMIリスクはDAPT継続群で有意に低い結果.
ステント内血栓NNT 100
MI予防効果NNT 50
死亡リスクはDAPT群で若干高い.(NNH200)
出血リスクはDAPT群で2.6%上昇. NNH 40程度.
DAPT trialとREAL−LATE, ZEST−LATEの母集団を比較
年齢や性別, PCI施行理由はほぼ同じ(STEMI, non-STEMI 20%程度)
UAPはREAL−LATE, ZEST−LATEで多い(40%程度 vs 17%程度)
UAPはREAL−LATE, ZEST−LATEで多い(40%程度 vs 17%程度)
PCIの部位もほぼ同じ分布を示す.
異なるのが,
REAL−LATE, ZEST−LATEでは過去のAngioplasty 12%, MIが3.5%,
一方でDAPTでは過去のPCI 30%, CABG 11.5%, MI 21.5%と
明らかにDAPT群で冠動脈疾患既往歴が多い.
REAL−LATE, ZEST−LATEでは過去のAngioplasty 12%, MIが3.5%,
一方でDAPTでは過去のPCI 30%, CABG 11.5%, MI 21.5%と
明らかにDAPT群で冠動脈疾患既往歴が多い.
このリスクの違いがDAPTの期間に関連する可能性はある.
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DESの種類で差があるのかどうか見てみると,
DESの種類別に評価したRetrospective studyでは,
Coronary Artery Disease 2013, 24:217–223
2141名のACSに対してDESでPCIされた患者群のReview.
Cypher sirolimus-eluting stent(SES)とEndeavor zotarolimus-eluting stent(ZES)の何れかで治療されている患者群.
SESは第一世代のDESであり, ZESは第二世代のDES.
DAPTを12mまでで終了している群と, 12m以上継続している群で心血管イベントリスクを評価し, DESの種類別に評価.
母集団;
アウトカム;
全体では投与期間で死亡, イベントリスクは同等.
ステント別では, SESではより長期間のDAPTの方がイベントリスクは低下, ZESでは両者で変わらないという結果.
このSESに関して日本からのProspective studyがでており,
Intern Med 52: 703-711, 2013
日本国内のSES PCI症例のProspective study.
SESを使用し, PCIを施行された1691名を, DAPT<12m群 749例と>12m施行した942例で, 心血管イベントを比較. (12m以内に心血管イベント再発した症例は除外)母集団;
アウトカム;
SES留置群のProspective cohortではDAPT 12ヶ月未満, 以上の群で死亡やイベントリスクに差はなく, 第一世代, 第二世代DESで差を付ける必要はやはり無いのかもしれない.
….と思っていた所に, JAMAよりOPTIMIZE trialが発表.
長くなったのでまとめますと,
DESを使用した待機的なPCIで, 別段再狭窄リスクがものすごく高くない場合(Stent in stent等), 抗血小板薬の2剤投与は12ヶ月程度までで良く, それ以上の投与では出血リスクのみ上昇する可能性がある.
DESには第一世代であるSESと第二世代と言われるZESがあり,
SESではやはり12ヶ月のみでは不安かもしれないという危惧があるものの, まぁ、大丈夫であろうという見方もある.
ZESでは12ヶ月でよいのは確かであり、現在もっと短くても良くない? というStudyがでており, ただしこれ(OPTIMIZE)は1年予後までの発表であり, 今後の長期予後の発表が楽しみ。
という感じの認識でOK?
….と思っていた所に, JAMAよりOPTIMIZE trialが発表.
Three vs Twelve Months of Dual Antiplatelet Therapy After Zotarolimus-Eluting Stents. The OPTIMIZE Randomized Trial. JAMA 2013
OPTIMIZE trial; ZESにてPCI施行した3119名のopen-label RCT.
狭心症, 無症候性心筋虚血, 不安定狭心症, Recent MI患者, >50%の狭窄を認める患者群を対象.
STEMIや, ステント in ステント, Bare-metal使用歴が6ヶ月以内にある場合, DES使用歴(+), 待機的手術ある場合は除外.
DAPT 3ヶ月群 vs 12ヶ月群に割り付け, 心血管イベントを比較
母集団;
アウトカム;
短期投与群と長期投与群で, 1年以内の死亡リスク, 心血管イベントリスクに有意差無し.
0-90d, 91d-1y別の評価でも有意差は認められない.
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長くなったのでまとめますと,
DESを使用した待機的なPCIで, 別段再狭窄リスクがものすごく高くない場合(Stent in stent等), 抗血小板薬の2剤投与は12ヶ月程度までで良く, それ以上の投与では出血リスクのみ上昇する可能性がある.
DESには第一世代であるSESと第二世代と言われるZESがあり,
SESではやはり12ヶ月のみでは不安かもしれないという危惧があるものの, まぁ、大丈夫であろうという見方もある.
ZESでは12ヶ月でよいのは確かであり、現在もっと短くても良くない? というStudyがでており, ただしこれ(OPTIMIZE)は1年予後までの発表であり, 今後の長期予後の発表が楽しみ。
という感じの認識でOK?