あまりエビデンスもなく, 潰瘍予防効果はPPIに劣り, 本当に効果があるのか微妙とよく言われる薬剤でもある(少なくとも自分の周りは).
ここでRebamipideの効果というものを再考してみましょう
NSAID潰瘍の予防効果について
NSAID潰瘍の予防効果をMisoprostol(サイトテック®)と比較
韓国, 中国, タイで行われたopen-label RCT. J Clin Biochem Nutr 2007;40:148-155
≥18yのRA, OA, SpAや他にNSAID長期使用が必要となる疾患で, NSAIDを12wk以上使用している患者群
≥18yのRA, OA, SpAや他にNSAID長期使用が必要となる疾患で, NSAIDを12wk以上使用している患者群
除外項目は慢性肝障害, 腎障害, 他の消化管疾患(GERD, 静脈瘤, 消化性潰瘍, 悪性腫瘍), 消化管手術歴, 4wk以内のPPI, H2−B, sucralfate, misoprostol使用歴, 他のNSAID, ステロイド, 抗コリン薬, 化学療法, 抗凝固薬使用
患者はRebamipide 300mg/d vs Misoprostol 600µg/dに割り付け12wk継続.
アウトカム
双方ともMLS*, 潰瘍形成リスクは同等.
High-risk群でも有意差は認められない.
副作用の頻度はRebamipideで有意に低い結果.
*MLS: modified Lanza score
0 | 出血,びらんなし |
1 | 1−2箇所の出血, びらんを1 gastric areaで認める |
2 | 3-5箇所の出血, びらんを1 gastric areaで認める |
3 | 出血, びらんを2 gastric areaで認める ≥6箇所の出血, びらんを1 gastric areaで認め, 合計で10を超えない |
4 |
出血, びらんを≥3 gastric areaで認める
胃全体で11箇所以上の病変を認める |
5 | 胃潰瘍あり |
NSAID継続使用が必要な479例を対象としたDB−RCT (Gut Liver 2014;8:371-379)
患者は19歳以上でRA, OA, SpA, 他のNSAID長期使用必要な患者群
またGFでMLS<3, 胃腸症状を認めず, 以下の1つ以上のリスクを認める
消化性潰瘍の既往, 60歳以上, PSL ≥5mg/dの使用
またGFでMLS<3, 胃腸症状を認めず, 以下の1つ以上のリスクを認める
消化性潰瘍の既往, 60歳以上, PSL ≥5mg/dの使用
除外項目は消化管手術歴, PLT低値, 凝固障害, GERD, 静脈瘤, Barrett食道, 食道狭窄, 悪性腫瘍, 消化不良, 脳血管障害, 冠動脈疾患, 慢性肝障害, 腎障害など
Rebamipide 300mg/d vs Misoprostol 600µg/dに割り付け12wk継続.
胃潰瘍の発症率は両者で有意差なし. 双方とも20%程度. 20%!!
治療失敗率も有意差なし.
治療失敗率も有意差なし.
胃腸症状はRebamipideで有意に低くなり, 副作用による脱落もRebamipideで少ない.
副作用の観点から, Misoprostolを使用するくらいならばRebamipideを使いましょう.
NSAID潰瘍率が20%と高い患者ではそもそもPPIやH2−Bを使いましょう
NSAID潰瘍の予防効果をH2-R阻害薬と比較
112例のNSAIDを使用中患者群を対象としたDB−RCT. J Gastroenterol 2006; 41:1178–1185
使用前にGFを施行し, その後Famotidine 20mg/d群 vs Rebamipide 300mg/d群に割り付け, 4wk後に再度GFを施行.
患者は20−75歳で4wk以上NSAIDを使用しており, さらに継続する群
胃切, 迷走神経切除, 5年以内の悪性腫瘍, 重度の肝, 腎障害, 4wk以内のPPI, H2−B, M1RAsの使用歴, 14d以内のステロイド使用は除外
併用して4wk後のModified Lanza scoreを比較した.
アウトカム: MLSの変化
NSAID潰瘍の改善効果はH2−Bの方が良好
Rebamipideは改善させないが, 増悪もさせない。
ちなみにピロリ菌の有無別の評価でも結果は変わらず.
RebamipideのNSAID潰瘍予防のMeta-analysisでは, 早期潰瘍予防効果はプラセボと比較してRR 1.55[1.02-2.36]と有意に認められる結果 Dig Dis Sci (2013) 58:1991–2000
小腸病変予防効果もRR 2.70[1.02-7.16]と有意に有効.
NSAIDによる小腸粘膜障害の予防効果について.
NSAIDは胃潰瘍のみならず小腸粘膜病変も来す.また, PPIは小腸粘膜障害のリスクになるということは以前ブログでも説明した (NSAIDとPPIの小腸粘膜リスク)
Rebamipideは予防効果を示す可能性がある.
10名の健常ボランティアを2群に分け, それぞれRebamipide + Diclofenac + Omeprazole投与: A, Placebo + Diclofenac + Omeprazole投与: Bを1wkずつローテーション.
投薬前後にカプセル内視鏡を施行し, 粘膜病変を評価した J Gastroenterol 2008; 43:270–276
Rebamipide投与群の方が小腸粘膜病変リスクが有意に低下する結果.
また同様に健常人11名でLow−dose ASA + PPIを使用し,
さらにPlaceboとRebamipide群に割り付け4wkずつローテーションし、比較したStudyでも有意に小腸粘膜病変予防効果が認められた. DB−RCT. World J Gastroenterol 2011 December 14; 17(46): 5117-5122
Placebo群では回腸における潰瘍やびらんが増加しているが, Rebamipide群では有意に少ない.
80例の健常人を対象としたRCT.
NSAID + omeprazoleを使用し, さらにPlacebo群 vs Rebamipide 300mg/d群に割り付け2wk継続. 治療前後にカプセル内視鏡をにて小腸粘膜病変を評価. J Gastroenterol (2011) 46:57–64
NSAID+PPI治療にて粘膜病変数は有意に上昇するが, 有意差は認められず.
Control群では0.1±0.3 → 16±71
Rebamipide群では → 4.2±7.8
小腸粘膜病変もControl群で63%, Rebamipide群で47%と Control群で上昇傾向にあるが, これも有意差なし.
小腸粘膜病変もControl群で63%, Rebamipide群で47%と Control群で上昇傾向にあるが, これも有意差なし.
2wkという期間が他のStudyとは異なる.
健常人ではなく, 長期ASA, NSAIDを使用している患者群を対象としたStudy
低用量ASA ± NSAIDを3ヶ月以上使用している患者群を対象 J Gastroenterol (2014) 49:239–244
GF, CFで明らかな病変を認めず, カプセル内視鏡にて小腸病変(潰瘍, びらん, 発赤, 点状出血など)を認める患者群
除外項目はgastro-protective drugの使用, GI出血, GI狭窄, GI手術歴, 重度肝障害, 腎障害, 心臓肺障害.
上記を満たす62例を対象としたDB−RCT. Rebamipide 300mg/d vs Placeboに割り付け, 4wk継続.
治療後のカプセル内視鏡所見により小腸粘膜病変を比較した.
治療後のカプセル内視鏡所見により小腸粘膜病変を比較した.
アウトカム;
結果はびらん, 潰瘍, 発赤病変すべてRebamipideで改善効果あり.
さらにRebamipideでは総蛋白の上昇が認められる.
小腸粘膜病変が改善することで栄養状態も改善する可能性がある!
その他: ピロリ菌除菌後のRebamipideによる潰瘍治療
ピロリ菌陽性の胃潰瘍で1週間の除菌療法を行った301例を対象としたRCT. J Gastroenterol 2007; 42:690–693
患者は20歳以上で潰瘍サイズ≥5mmの単一潰瘍, H pylori陽性.
除外項目はPPIやH2−Bを使用, NSAIDを使用, 除菌療法失敗歴あり, 十二指腸潰瘍,出血性潰瘍で出血リスクが高い患者群.
除菌療法後 Rebamipide 300mg/d vs Placeboに割り付け7wk継続.
7wk終了後に内視鏡検査を行い, 潰瘍の状態を評価.
7wk終了後に内視鏡検査を行い, 潰瘍の状態を評価.
潰瘍治癒率はRebamipideで有意に高い. NNTは7.2程度.
除菌成功の有無別の評価
除菌が成功していれば特にPPIやH2−Bなくても7割が潰瘍治癒する.
除菌が失敗すれば潰瘍治癒するのは半分程度のみ.
Rebamipideにより治療失敗, 成功に関わらず, 潰瘍治癒率は8割程度まで上昇する.
念のためのRebamipideという選択肢もありのなのかもしれない。