ここ数年, いくつかの報告で心不全患者に対する鉄剤投与の有用性が報告されている
(ブログに以前書いたと思ったのですが, 見つからなかったので再度書きます)
FAIR-HF trial; Fe欠乏を合併したHF患者(EF=<40-45%) ±貧血 459名
(N Engl J Med. 2009 Dec 17;361(25):2436-48.)
・Fe製剤 200mg IV/wk vs Placeboに割り付け, 24wk後のNYHA, QOLを比較.(Feは正常値になれば1回/mo)
・鉄欠乏はフェリチン<100mcg/L, またはフェリチン100-299mcg/L + Transferrin Sat<20%で定義.
・Baselineのデータ; HYHA II 17.4-18.7%, III 82.6-81.3%, Hb 11.9±13g/dL
Outcome
Outcome(@24wk) | Fe剤 | Placebo | OR |
自覚症状; Much~Moderately improved | 50% | 28% | 2.51[1.75-3.61] |
NYHA I-II | 47% | 30% | 2.40[1.55-3.71] |
・自覚症状は有意に投与群で改善を見込める例が多く, NYHA I-IIも増加する
・4-12wk時点でもFe剤投与群で有意に症状改善傾向が強い.
・又, 貧血の有無にかかわらず, 自覚症状の改善は認める.
・副作用は消化管症状が有意に多い以外は同等.
IRONOUT HF: HFrEF(EF<40%)で鉄欠乏を合併している患者群を対象としたDB-RCT.
(JAMA. 2017;317(19):1958-1966. )
・鉄欠乏はフェリチン15-100ng/mLもしくは101-299ng/mLでトランスフェリン飽和度<20%で定義
・上記を満たす患者225例を
経口Iron polysaccharide 150mg bid vs Placeboに割付け, 16wk継続. Peak O2 uptake(VO2)の変化, 6分間歩行距離, NT-proBNP値, KCCQ(QOLスコア)をフォローした.
母集団
アウトカム
・VO2や歩行距離, NT-proBNP, KCCQなど全て有意差ない結果2019年発表のMeta-analysis(The American Journal of Medicine (2019) 132:955-963 )
・心不全に対する鉄剤投与を評価した10 RCTsのMeta
全死亡リスク: OR 0.76[0.43-1.37]
心不全入院: OR 0.39[0.19-0.80]
死亡, 心不全入院: OR 0.47[0.32ー0.69]
他, NYHA, LVEF, 6MWT, pVO2は鉄投与群で改善.
で, 今回発表されたAFFIRM-ARF
(Lancet. 2020 Nov 12;S0140-6736(20)32339-4. doi: 10.1016/S0140-6736(20)32339-4.)
AFFIRM-AHF: 急性心不全で入院し, 且つ鉄欠乏を合併し, LVEF<50%を満たす患者群を対象としたDB-RCT
・鉄欠乏: Ferritin<100µg/LもしくはFerritin 100-299でTransferrin sat <20%で定義)
・上記患者群を退院前, 退院後6wkにCarboxymaltose鉄をIV, その後, 鉄欠乏持続+Hb 8-15g/dLの患者では維持量として12wk, 24wkにもIVを施行
vs Placebo群に割り付け, 心不全入院リスク, 心血管死亡リスク, 症状を比較した.
・投与量は体重, 鉄欠乏の程度で決定.
・フォロー期間中にCOVID-19が流行し, 医療機関や患者群への影響が懸念された. 各国で最初の1例が報告されるまでの期間をpre-COVID-19 sensitivity analysisに含み解析.
母集団: 1回でも投与された1108例を導入
アウトカム
・心不全による入院リスクは鉄剤投与群で有意に低下する
・心血管死亡リスクは有意差なし.
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HFrEF患者で鉄欠乏がある場合, 鉄剤の投与(StudyではIVが多い)は心不全による入院リスクを低下させることが示されている.
症状も, NYHAも改善させる可能性がある.
今はカルボキシマルトース鉄(フェインジェクト®)があるので, 定期外来でIVするのでよいし, やりやすくなっているマネージメントと思う.
(でもあんまりやられているの, 鉄チェックされている心不全患者はまだあまり見ない・・・)