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2014年5月18日日曜日

逆流性食道炎

逆流性食道炎: Gastroesophageal Reflux Disease (GERD)
J Clin Gastroenterol 2007;41:131–137

GERDは胃酸逆流に伴う症状を呈する疾患群だが,
 米国の報告では, 40%が月に1回以上, 20%が週1回以上, 7-14%が毎日 GERD症状を認めるかなり多い疾患群
北欧の1000名にGIFを施行したところ (NEJM 2008;359:1700-7)
 食道炎 15.5%, Barrett’s 食道 1.6%
 食道炎(+)の1/3, Barrett’s食道(+)の40%のみ症状(+)であった. 
また, 食道炎の症状(+)の2/3が食道炎所見(-)

胸焼けを呈する疾患で最も多いのがGERD
症状が典型的で, PPIにて改善するならばそれで診断可能
他, Achalasia, 好酸球性食道炎も胸焼けを来す
GERDには内視鏡にて食道炎を認めるErosive Esophagitisと内視鏡所見正常のNonerosive Reflux Disease(NERD)がある
 以前はNERDはerosive esophagitisの前病変であり, 徐々にErosiveに進行すると思われていたが, 近年は患者背景や経過が違う疾患として考えられている.

NERD vs Erosive Esophagitis J Clin Gastroenterol 2007;41:131–137

NERD Erosive esophagitis
平均年齢 49yr 50yr
/女性 40/60 59/41
喫煙歴 23% 23%
アルコール 59% 64%
胸焼けの期間 >12mo 80% 81%
胸焼けの期間 ≤12mo 20% 19%
食道裂孔ヘルニア 29% 56%
平均体重; 男性 80.5kg 86kg
平均体重; 女性 69.5kg 76kg
H pyroli陽性率 34% 26%
LES pressure 正常 正常〜低下
LES <10mmHg 稀ではない
Reduced distal amplitude contractions Mild Moderate-severe
食道蠕動の異常 Mild Moderate-severe
食道 胃酸クレアランス 正常 Mild-Moderateの異常
pH<4の時間(%) 軽度増加 中等度増加
夜間食道内胃酸 軽度増加 中等度増加
NERDとErosive Esophagitisは年齢, 症状頻度は類似しているがNERDは女性で多く, Erosive Esophagitisは肥満患者, 男性で多い傾向.
NERDのLES圧は正常. 蠕動障害も軽度のみ.
アジア人での特徴 J Korean Med Sci 2010; 25: 1318-1322
韓国におけるNERD 500例, Erosive Esophagitis 292名の解析

NERD Erosive esophagitis
男性(%) 39.8% 78.1%
年齢 44.44±12.11y 46.13±11.89y
胸焼け 44.4% 9.3%
逆流感 71.4% 18.2%
BMI 24.05±3.25 25.07±3.10
現在の飲酒歴 40.2% 60.6%
現在の喫煙歴 23.2% 36.3%
食道裂孔ヘルニア 5.2% 32.9%
多変量解析で特に差を認めるのは性別と食道裂孔ヘルニアの有無.
NERDは女性, 食道裂孔ヘルニア(-)で多い.
このStudyでのErosive esophagitisは無症状例も含めているため, 症状頻度の差はそこから来ている可能性が高い.

GERDの薬物治療 (NEJM 2008;359:1700-7)
食道炎の治療
 ●PPI
対象 反応率

文献
vs Placebo 83% vs 18% @8wk NNT 1.7 Cochrane 2007
vs H2-blocker 83% vs 18% RR 0.51 Cochrane 2007
vs H2-blocker 84%  vs 52% RR 0.51 Clin Gastroenterol Hepatol 2005;3:543-52
投与量による違い Cocharne 2007
Low dose vs Standard once daily

NNT 5

Standard vs High dose once daily

NNT 25


 ●H2阻害薬
対象 反応率

文献
vs Placebo 41% vs 20% @6wk NNT 5 Cochrane 2007
Dose依存性の効果は認められない Cochrane 2007

食道炎の治療
 ● Erosive Esophagitisにおいて
対象 反応率

文献
PPI vs Placebo 56% vs 8% @4wk NNT 2-3 Hepatol 2004;2:656-64
PPI vs H2-blocker 77% vs 48% @4-12wk

Gastroenterology 1997;112:1798-810
H2-blocker vs Placebo 56% vs 45% @12wk


PPI 投与量による違い Cocharne 2007
Low dose vs Standard once daily 75% vs 79% Doseによる
明らかな影響は無し
Standard vs High dose once daily 73% vs 76%
 ●NERD患者群において
対象 反応率

文献
PPI vs Placebo 36.7% vs 9.5% NNT 3-4 Hepatol 2004;2:656-64
PPI vs H2-blocker 61% vs 40% NNT 5 26
H2-blocker vs Placebo 56% vs 45% @12wk RR 0.77 27
H2-blockerDoseによる影響は無し; Standard vs High: 45.8% vs 44.8%

Erosive EsophagitisではPPIの2ヶ月間の使用にて85-96%の治癒率が見込める.
 重度の食道炎ほど治療失敗率は上昇する傾向.
NERD患者を対象としたRCTでは, 4wkのPPI使用にて症状改善率は46-57%
 Systematic reviewでは, PPIによる症状改善率は, NERD患者では36.7%[34.1-39.3]
 Erosive Esophagitisでは55.5%[51.5-59.5]と, NERD患者のほうが治りにくい傾向がある.
また, 治療反応までの期間もNERD群で長くなる傾向.
(J Clin Gastroenterol 2007;41:131–137)

維持療法
食道炎の寛解
 PPI vs Placebo; 93% vs 29% 
 低用量のPPIは35-95%の患者に有用とされる

胸焼けの改善
 食道炎所見を認めない患者においては, 低用量PPIが83-92%の症例で有用

PPIは骨折Riskの上昇, C. diff腸炎Riskの上昇が証明されている
可能ならば長期間の投与は避けるべきで, 特に高齢者では3ヶ月以上は投与しないよう推奨されている.

手術療法  (NEJM 2008;359:1700-7)
Nissen Fundoplicationが行われる
 PPI治療とのRCT Traialでは, 7yr再発率は同等 (10.3% vs 11.8%) (Br J Surg 2007;94:198-203)
 術後合併症も多く, 嚥下困難が6%, 腹部膨満, ゲップ困難, 腸症状(下痢, 腹痛, 便秘)も認める
 合併症による再手術は1-3yrで7%に及び, 60%の患者は術後もPPI内服を必要としている

 手術, 内服治療でBarrett’s食道の割合は変わらず, 0.01%/year
 Barrett’s食道(+)群では, 腺腫合併率が0.50-0.75%/year

REFLUX trial: 357名のRCT, Surgery vs PPI内服 (BMJ 2008;337:a2664)
 12mo時点で, 外科手術群の38%(Fundoplication群の14%), PPI内服群の90%がPPI内服を必要としている.
 REFLUX score, QOLは外科手術群で有意に改善度合が大きい

LOTUS trial: (JAMA. 2011;305(19):1969-1977)
 Chronic GERD患者554名のOpen-label RCT.
 Esomeprazole vs Laparoscopic antireflus surgery(LARS)に割り付け, 5年間フォロー. 追跡率67%.
 患者; Los Angeles grade B以下の食道炎, 軽度のGERD症状(PPI内服下)
 Outcome; 治療不成功(PPI群では症状残存, LARS群ではPPI必要)

アウトカム: 治療失敗は両者で有意差無し.85-92%は治療成功.
5年後の各症状残存頻度.
症状 PPI LARS P
胃酸逆流感 13% 2% <0.001
胸焼け 16% 8% 0.14
心窩部痛 18% 18% 0.55
下痢 15% 16% 0.25
嚥下障害 5% 11% <0.001
腹部膨満 28% 40% <0.001
鼓腸 40% 57% <0.001
胃酸逆流感は外科手術群のほうが少ないが, 嚥下障害や腹部膨満等は増加する.
逆流感を改善させるのは手術の方が有用.

Barrett食道
GERDによる胃酸, 腸液の逆流で下部食道上皮が慢性炎症を来たし, 扁平上皮から円柱上皮に置き換わる減少. 癌発症リスクが上昇する.

Barrett食道と発ガンリスク
デンマークにおける1992-2009年のCohort N Engl J Med 2011;365:1375-83.
 11028名のBarrett食道患者を5年間フォロー.
 Barrett食道のAdenocarcinoma発症頻度は0.12%[0.09-0.15]/yr.
 一般人口におけるAdenocarcinoma発症リスクのRR11.3[8.8-14.4]倍.
 Low-grade dysplasiaではAdenocarcinomaは0.51%/yr.
 (dysplasia(-)群では0.1%/yrの頻度)

Barret食道と悪性腫瘍のリスクを評価したReview JAMA. 2013;310(6):627-636. 
 Barret食道の発癌リスクは年間0.25%であり, High grade dysplasiaがある場合は6%に及ぶ.
 PPI, 外科治療双方で発癌リスクに有意差無いが, 内視鏡的焼却術では有意に発癌リスクの低下が認められる.
 内視鏡によるフォローは, Dysplasiaを合併していないBarret食道では3-5年毎が推奨されている

Barrett食道の診断
診断は内視鏡所見と組織診断であるが, Cytospongeを用いた細胞診も有用
Cytosponge; 飲み込んで, 引っ張りだして細胞を精査する.

制酸剤を投与されている50-70yrの504名で評価. BMJ 2010;341:c4372
 Barrett食道は3.0%で認められ,
 Cytospongeの感度, 特異度;
 1cm程度のバレット食道; Sn 73.3%[44.9-92.2], Sp 93.8%[91.3-95.8]
 ≥2cm程度のバレット食道; Sn 90.0%[55.5-99.7], Sp 93.5%[90.9-95.5]


Barrett食道に対するアブレーションは発癌リスクを低下させる
 136例のBarret食道 + Low grade dysplasiaを認める患者を対象としたRCT.
(JAMA. 2014;311(12):1209-1217.)
 内視鏡によるRadiofrequency ablation群と経過観察群に割り付け, 3年間フォロー. High-grade dysplasia, Adenocarcinomaの頻度を比較.

 Ablationは最大5回まで施行可能とした.
アウトカム:
High-grade dysplasiaもしくは悪性腫瘍への進展リスクは Ablation群で25%低下. NNT 4.0[2.8-7.1]
 悪性腫瘍は7.4%低下する. NNT 13.6[5.8-∞]
合併症は, 15例で報告.

 腹痛で入院, Ablation後7日目に出血, 狭窄, 粘膜裂創等.

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