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2021年7月16日金曜日

脱毛症 Alopecia

脱毛症 Alopecia

Alopecia areata: 円形脱毛症


Alopecia ophiasis: 蛇行状脱毛症


Alopecia totalis: 頭蓋脱毛症


Alopecia universalis: 全身性脱毛症


Alopecia areata(AA)は比較的頻度の高い, 炎症性, 非瘢痕性の脱毛性疾患.

・T細胞が関連した免疫反応で, 毛胞や爪がターゲットとなる

(Int J Dermatol. 2018 Dec;57(12):1464-1470.)

・一般人口の2%で認められる.

・AAのSubtypeに, Alopecia totalis(AT), ohiasis(AO), universalis(AS)といったものがある.

 
AA: 円形の脱毛症 2.13%[1.83-2.46]


 AT: 頭蓋全体の脱毛症 0.08%[0.04-0.13]


 AO: 蛇行状に脱毛したもの 0.001%[0.001-0.057]


 AU: 全身性の脱毛症 0.03%[0.01-0.06]

・頻度は人種でも異なる.

 人種では, South American(8.7%), African(7.1%)で多く, 次いでNorth American(2.5%), Asian(1.5%), 最も少ないのはEuropean(0.6%). [頻度はAAの頻度]

・自己免疫疾患患者では特に頻度は高い

 自己免疫性疾患(-)群ではAA 1.8%[1.5-2.2%], AT 0.07%[0.03-0.12], AU 0.03%[0.01-0.06]

 
SLE患者では7.4%[2.3-15.3]


 白斑症では2.8%[1.9-3.9]


 乾癬では3.3%[0.9-7.2]

(J Am Acad Dermatol. 2020 Mar;82(3):675-682.)


AA, AT, AU症例 1641例のReview

(Skin Appendage Disord. 2021 Jan;7(1):8-12.)

・AAが84.8%, ATが4.9%, AUが10.2%


 男性は46.6%, 


 平均年齢はAA 29.9±14.5歳, AT 29.5±16.2歳, AU 32.8±14.5歳

・それぞれの年齢分布: 大体同じような分布となる

・発症に季節性はとくにない


スペインにおけるAT/AU 132例のReview

(J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017 Mar;31(3):550-556.)

・AUが80例, ATが39例.

・AAの家族歴は12%で陽性

・AAからAT/AUへ進行する期間の中央値は1年間[0-32]

 
91%が4年以内に進行を認めた.

・自己免疫性疾患の合併は23%(31例)
 

 甲状腺疾患が20%(26)と最も多く, 次いで白斑症(4例), I型糖尿病(3例),
 乾癬が4例.


 他の合併症はアトピー性皮膚炎(20%)

他の症例Reviewから,

(J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017 Mar;31(3):550-556.)

・AAの家族歴陽性例は6.6-24.4%

・爪の異常所見は7.3-29.4%で認められる.

・自己免疫疾患の合併は12.9-38.4%
甲状腺疾患は0-25.1%
アトピー性皮膚炎は5.2-49.2%


Alopeciaと悪性腫瘍の関連はあるのか?

(Sci Rep. 2018 Jun 27;8(1):9748. doi: 10.1038/s41598-018-28142-1.)

・2007-2014年に診断, 治療を行なったAlopecia 668604例と年齢, 性別を合わせたControl群において, 悪性腫瘍リスクを比較.

・AAが608190例, 平均年齢は40.16±12.74歳, 男性50.78%


 AT/AUが60414例, 平均年齢は41.29±13.86歳, 男性52.46%


 平均フォロー期間は4.92±2.32年

・悪性腫瘍リスクは, AA群でHR 1.04[1.02-1.07], AT/AU群でHR 1.07[1.01-1.1]と軽度上昇


 各論では, 甲状腺癌がAA群 HR 1.17[1.12-1.21], AT/AU群 HR 1.33[1.21-1.47]


 前立腺癌がAA群 HR 1.26[1.14-1.39], 膀胱癌がAA群 HR 1.22[1.06-1.40]と上昇.


・目立って上昇するわけではないが,
 一部の悪性腫瘍のリスクになる可能性がある.
 デルマドロームとしてはあまり考える必要はないのかもしれない

AT, AUの予後
・AAと診断された患者の7%がATやAUに進展する.
・AT/AUの予後はAAよりも悪いとされ, 
Meta-analysisでは自然寛解するのはAT/AUの8.5%のみ.
 さらにAUはATよりも寛解達成は少ない
(J Eur Acad Dermatol Venereol. 2020 Apr;34(4):709-715.)


Alopeciaの治療

2000-2016年に報告されたAT, AUの治療のReview
(Int J Dermatol. 2017 Aug;56(8):801-810.)
・免疫抑制薬の外用: DPCP(diphenylcyclopropenone)
 ステロイド: mPSL IV/PO, ベタメサゾン
 免疫抑制療法: アザチオプリン, MTX, CyA,
 光線力学的治療
 TNFα阻害薬, JAK阻害薬などが治療として用いられる

・どれも一定の効果は期待できるものの,
どれが最も優れているか,
第一選択とすべきかは不明確

JAK阻害薬はAlopeciaの治療として有用な可能性がある.



74例のAT/AU症例を後ろ向きに解析
(Acta Derm Venereol. 2019 Jan 1;99(1):41-46.)
・この内18例がTofacitinib内服, 26例がPSL+CyA, 30例がDiphenylcyclopropenone(DPCP)外用による治療が行われた.
・治療開始6ヶ月におけるSeverity of Alopecia Tool score 50%以上の改善率は
 
Tofa群で44.4%, PSL+CyA群で37.5%, DPCP群で11.1%と
Tofa, PSL+CyA経口群で脱毛の改善は良好.


JAK阻害薬外用による治療:

16例のAU症例を対象としたDB-RCT.

(Int J Dermatol. 2018 Dec;57(12):1464-1470.)
・外用JAKi群として, 2% tofacitinib外用 vs 1% ruxolitinib外用

 Control群として, 0.05% Clobetasol dipropionate外用(ステロイド) vs Placebo外用群の
4本のチューブを渡し, それぞれ Blindされた状態で
左右眉, 左右頭部の4箇所に固定して塗布.

 その後の毛髪の生え具合を比較した.

・アウトカム
 
 2% tofacitinib外用部位では6/16
 
 1% Ruxolitinib外用部位では5/16
 
 Clobetasol dipropionate外用では10/16
 
 Placeboでは0/16で毛髪が部分的に改善.

改善の例. 
全部位が改善を認めた症例もあり.
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2021年7月12日月曜日

中年〜高齢発症の自己炎症性疾患: VEXAS症候群

VEXAS症候群

(N Engl J Med 2020;383:2628-38.)

・X染色体上に存在するUBA1遺伝子の変異による
成人発症の自己炎症性疾患.

・ユビキチン化を開始する主要なE1酵素である, 
UBA1のメチオニン-41が影響される

・VEXAS: vacuoles, E1 enzyme, X-linked, autoinflammatory, somatic.

・中年〜高齢発症の, 

 治療抵抗性の発熱, 

 血球減少(骨髄, 赤芽球系の前駆細胞に空包変性を伴う), 骨髄異形成, 

 好中球の皮膚, 肺浸潤, 

 軟骨炎, 血管炎などを呈する.

 
>> RP, Sweet症候群, PAN, GCAといった自己免疫性疾患や, MDS, MMといった血液疾患として発症する.

・UBA1モザイク変異は造血幹細胞や多能性前駆細胞, 顆粒球・単球前駆細胞, 巨核球・赤芽球前駆細胞, リンパ系前駆細胞に多く認められるが, 末梢血では骨髄系細胞にのみ残存し, 
成熟リンパ節に変異は認められない. 

 変異リンパ球が増殖しなかったか, 除去された可能性が示唆される

 線維芽細胞にも認められないことが確認されている


VEXAS syndrome 25例 (N Engl J Med 2020;383:2628-38.)

・X染色体上の遺伝子変異であり, 男性が100%

・発症年齢は64歳[45-80]

・症状は発熱, 皮疹, 肺病変, 
耳・鼻の軟骨炎
静脈血栓症.

・血液障害では大球性貧血, 
骨髄細胞の空胞変性の頻度が高い

・疾患としては,
 RP, Sweet症候群, MDS, MM/MGUS,
 PAN, GCAの基準を満たす患者が多い


VEXAS syndromeと診断された12例

(J Allergy Clin Immunol. 2021 May 25;S0091-6749(21)00819-8.)

・発症年齢 67歳[47-79]

・症状, 臓器障害は 発熱 100%, 

 皮膚症状 10/12, 
肺病変 8/12, リンパ節腫大 7/12, 

 心臓・血管 6/12, 軟骨炎 6/12, 


 関節 4/12, 神経 4/12, 泌尿生殖器 4/12, 


 消化管 3/12, 眼 3/12, 
腎臓 2/12

・発熱+大球性貧血を認める例が大半

・骨髄所見は大半が異形性, 空包変性を認めるが, MDSの基準を満たすのは4例
血球貪食の所見は2例で認められた


横浜市立大学からの報告.

(Ann Rheum Dis. 2021 Mar 31;annrheumdis-2021-220089. doi: 10.1136/annrheumdis-2021-220089.)

・RP 13例(男性11例, 女性2例)の末梢血, 骨髄組織由来のゲノムDNAを用いてUBA1遺伝子変異を評価した報告

・男性例11例中, 8例でUBA1遺伝子変異を認めた.


 UBA1遺伝子変異例では, MDS, 血管炎, 皮疹, 発熱などを伴い,
骨髄所見では空包変性が認められる例が多い

・また, 女性例1例の血液で低頻度のUBA1遺伝子の体細胞遺伝子変異が検出された


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新しく発見された中年〜高齢発症の自己炎症性疾患.

中高年男性, 血球減少(特に大球性貧血), 
自己免疫を疑わせる兆候ではVEXASを考慮.

2021年7月7日水曜日

関節リウマチ患者における重大な感染症のリスク: RABBIT score

ドイツのRA患者のCohort, RABBITのデータを解析
重大な感染症合併リスクを評価した報告

(Ann Rheum Dis 2011;70:1914–1920.)

・2001-2006年にbDMARDまたはcsDMARDを使用開始した患者を導入し, 前向きにフォロー


・非抗TNF阻害薬による治療開始後の経過観察機関は除外.


 また, アナキンラの使用, ベースラインデータのみの患者も除外

・フォローにおける感染症合併リスクを評価

 抗TNF阻害薬に関連した感染症は, 感染症の発症から3ヶ月以内に使用している場合に定義(継続しているか, 3ヶ月以内のcsDMARDの切替例が含まれる)

対象集団

重大な感染症の頻度

・開始後2年間は抗TNF阻害薬でリスクは有意に上昇

 
3年目では有意差を認めない

開始後2年までの重大な感染症のリスク因子

・高齢者, 慢性肺疾患, 治療失敗回数>5回,

 
GC 7.5mg/d以上の使用


 抗TNF阻害薬の使用などは有意なリスク.

リスク因子による重大な感染症合併リスク

・GC量と抗TNF阻害薬の使用は強いリスク因子となる


このデータより, RA患者における重大な感染症リスクを評価するRABBIT scoreが提唱

RABBIT risk scoreの計算

https://biologika-register.de/en/rabbit/rabbit-risk-score-of-infections/

(Ann Rheum Dis 2014;73:1673–1676.)


Validation studies

RABBIT cohortの2009-2012年に登録された患者群で
前述のRABBIT risk scoreを評価.

(Ann Rheum Dis 2014;73:1673–1676.)

・1522例のRA患者においてRABBIT scoreを評価し,
 実際の重大な感染症の頻度と比較

・一致性は良好


RA患者1557例において,
 RABBIT scoreを評価したExternal validation

(Rheumatology 2021;60:2223–2230)

・ギリシャにおけるprospective RA cohort.


 RABBIT scoreによる重大な感染症リスクの予測と
実際の合併率(導入から1年以内)の相関性を比較した.

・重大な感染症の定義: 入院が必要な感染症, 抗菌薬IVが必要な感染症, 日和見感染症(VZVやTB含む).

・RABBIT scoreはデータが利用できた1359例で評価された.

・重大な感染症は38例.
2.3/100pt-y

観測された重大な感染症頻度と
RABBIT scoreにて予測されたリスク

・score 1-2ではリスクは予測よりも低い傾向
それ以外はおおよそ同じ感じ

このCohortにおける重大な感染症合併リスク因子

・罹患期間, 重大な感染症の既往, PSL ≥10mg/dの使用
糖尿病, 慢性肺疾患

2021年7月6日火曜日

人柱: Dino-liteのデルモスコープ(Dermoscopy), キャピラロスコープ(Capillaroscopy)を買ってみた

 Iphoneに繋げて使用できるエコー, Butterfly IQを以前購入しました

外来での診療が充実しており, 購入したことは悔いてはおりません. オススメです.


今回は, Dino-liteのMediscope(C4)を米国アマゾンより購入してみました.

これは, 皮膚鏡, 爪床の毛細血管ループを見ることが可能(とのこと)なデジタル拡大鏡(20-220倍)です.

Mediscopeと銘うってますが, 別に医療用ではなく, 偏光機能のついたデジタル拡大鏡で, 型番はAF4115ZT, これだけでしたら日本国内でも購入可能です.

13万円...高いですが.
ちなみに, 米国アマゾンでは, 単体で599ドル, Wifiでスマートフォンと接続できるデバイスが300ドルで、合計899ドル.
直接日本へは送付してくれないため, 個人輸入業者を咬まして, 手数料+送料, 関税で+1-2万円, 
合計, 10万円ちょっとで届きます.

国内で同じものを揃えると, Wifiデバイスも3.5万円くらいしますので, それなりに.

さらに, このMediscopeでは, 指にフィットするカーブしたレンズカバーが付随します.
レンズカバーガイドは, このカーブが2つと, 深め1つ, 浅いの1つ.
カバーがなくても, 保持台があれば安定して評価は可能かもしれません.


で, 普段10倍の皮膚鏡を使用して, 爪床の毛細血管の診察をしているのですが,
最近目のピントが合い難くなり, ちょっと厳しい感じなってきました.

記録用に写真も綺麗にとりたいという希望もあり, 
思い切ってこのDino-lite Mediscopeを購入してみたという次第です.

Amazon.comで購入し個人輸入業者(今回はShipitoを使用)を介して送付.
途中税関で引っ掛かり(医療用で引っかかった), 届くのに合計2週間弱.



ついに




到着です.

おもったよりも一回り小さく, 軽い.
Wifiアダプターを使用するとこんな感じで,

PCに接続するとこんな感じ


さて使ってみよう.


まず, この類のデジタルスコープを使用する場合,
偏光機能は必須.
通常の拡大鏡や皮膚鏡を用いる場合, キシロカインゼリーで浸潤させて観察しないと, 皮膚の凹凸で光が乱反射し, 皮下にある毛細血管や皮疹の評価ができなくなる.

その点, 偏光機能がある拡大鏡ではキシロカインゼリーを使用する必要がなく, 観察が楽です.

Nail-fold capillaryの観察;
モデル: 妻, 外科医.

上が偏光あり, 下が偏光なし.
全然違う. みやすい.
一部拡張しているように見えるのは怪我.




モデル: 俺, 内科医
見えるわー



皮膚の観察
モデル: 俺
指にあった黒子.
上が偏光あり, 下が無し



結論: 楽しい.

2021年7月5日月曜日

薬剤過敏性症候群(DIHS)と血球貪食症候群(HLH)

 疾患例: 30歳女性. てんかん既往があり, 3週間前に抗てんかん薬をラモトリギンに変更した病歴がある.

4日前からの発熱, 体幹の皮疹が出現. 徐々に増悪したために来院.

来院時, 全身の癒合傾向のある紅斑, 掻痒+. 

関節痛はなし。口内炎+, 眼球結膜充血などなし.

血液検査では, 軽度の肝障害と, 中等度の血小板減少, 白血球減少, LDHの上昇を認めた.

さらにフェリチン, TGの上昇を伴い, 血球貪食症候群が疑われた.

(症例は架空です)

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タイミング的にはラモトリギンによるDIHSとHLHの合併っぽい.

DIHSでは血球減少を伴うことは多くはないが, ありえる, 程度の認識であった.

この症例のようにHLHの合併というのはどの程度報告があるのか?

また原因薬剤はどのようなものが多いのか?


Literature Reviewにおいて, DIHSとHLHを合併した報告は23例

(Int J Dermatol. 2020 Sep 21. doi: 10.1111/ijd.15196.)

・原因薬剤として,


 抗菌薬 (Amoxicillin 2例, Ceftriaxone, Doxycycline, 
Cefpodoxime, Penicillin, VCM, teicoplanin, ST合剤)

 Sulfasalazine 5例
, Allopurinol, Tocilizumab, 鎮咳薬, Phenobarbital 2例


 抗てんかん薬 (Lamotrigine 3例, Phenytoin, バルプロ酸)

・複数報告がある薬剤はAmoxicillin, Lamotrigine, Sulfasalazine, Phenobarbitalがある.

Lamotrigine自体, 薬剤性HLHの原因として報告例がある

(Neurology. 2019 May 21;92(21):e2401-e2405.)


参考: ラモトリギンはDIHSの原因薬剤として4番目に多い

薬剤名

N

%

薬剤名

N

%

カルバマゼピン

746

33.9399454049136

スルファメトキサゾール/トリメトプリム

39

1.77434030937216

アロプリノール

332

15.1046405823476

フェニトインナトリウム

37

1.68334849863512

フェニトイン

173

7.87079162875341

ミノサイクリン塩酸塩

37

1.68334849863512

ラモトリギン

149

6.77888989990901

クロルプロマジン/ブロメタジン配合役

32

1.45586897179254

ゾニサミド

133

6.05095541401274

ジアゼパム

30

1.36487716105551

フェノバルビタール

132

6.00545950864422

ミダゾラム

30

1.36487716105551

メキシレチン塩酸塩

130

5.91446769790719

フロセミド

29

1.31938125568699

サラゾスルファピリジン

126

5.73248407643312

ロキソプロフェンナトリウム

28

1.27388535031847

バルプロ酸ナトリウム

115

5.23202911737944

アスピリン

25

1.13739763421292

アセトアミノフェン

42

1.91082802547771

ファモチジン

25

1.13739763421292

医薬品副作用データベースより, DIHS 2198例の原因薬剤 (薬剤疫学 2014;19(1):31-37)


参考: DIHS + HLHの診療チャート


(Int J Dermatol. 2020 Sep 21. doi: 10.1111/ijd.15196.)

2021年7月2日金曜日

メトホルミンによるPET/CTの腸管への集積亢進

Metformin使用中の患者でPET/CTをとると, 
腸管にびまん性に集積が認められることがある.


(AJR 2010; 195:1404–1410)

・METは高血糖患者で
腸管のGluの取り込みを
60%増加させるため
PET/CTでの集積が生じるとされる(BMJ Case Rep 2014. doi:10.1136/bcr-2013-202058)

・最近のPET-MRIを用いた報告では, 
Metforminにより, グルコースは腸管壁ではなく, 腸管内腔へ集積していることが示されており,
Metがグルコースを便中に排泄している可能性が示唆されている(Diabetes Care. 2020 Aug;43(8):1796-1802.)


PET/CTを評価した糖尿病患者77例と, 
性別, 年齢, BMIを合わせた非糖尿病患者のControl群と
腸管の集積を比較した報告.

(Clin Nucl Med 2011;36: 452–456)

・45/77でMetforminを使用

・腸管への取り込みは
以下のScaleを用いて評価(紹介する様々なStudyで同様のVisual scaleを使用)

アウトカム

・糖尿病患者では非糖尿病患者と比較して,
有意に腸管の集積が亢進する.


・Met(-)のDM患者と非DM患者の比較では差はなし.

・DM患者群において, Met(+)と(-)の比較では,
有意にMet(+)群において腸管への集積が上昇.


Met(+)のDM患者 32例, Met(-)のDM患者23例(其々G1a, 1b)
非DM患者 95例(G2)のPET/CTを評価

(Eur J Nucl Med Mol Imaging (2008) 35:95–99)

・DM患者, 非DM患者の比較では, DM患者で有意に腸管の集積は亢進

・Met(+), (-)の比較ではMet(+)で有意に取り込みは上昇


 Met(-)のDM群はControl群とほぼ同等.


では, PET/CTのどのくらい前にMetforminは中止すべきか?

>> 少なくとも2日以上前. 可能ならば3日前とか


PET/CTを評価する患者群を以下に分類し, 評価:

(AJR 2010; 195:1404–1410)

A) Met(+)のDM患者 107例
 

 このうち, PET/CT撮影時も継続させた77例をA1,
 

 PET/CT撮影の2日前に中止させた30例をA2


B) Met(-)のDM患者 31例


C) 非DM患者 52例

・DM患者のうち10例は, Met継続した状況と中止した状況の2回PET/CTを評価.

・血糖値と腸管の集積を各群で比較.

アウトカム


・回腸〜結腸にかけて, 
Metを継続したDM群で有意に集積が亢進する.
・撮影の2日前にMetを中止したDM群や,

 Met(-)のDM群では, 集積はControl群と同等

継続, 2日前中止の2回評価した患者

・2日間の中止で明らかに集積は低下.
・血糖値は変わらない〜やや増加するが
集積は低下する.

240例のDM患者を以下の4群に分類し, PET/CT所見を評価
(Ann Nucl Med (2016) 30:629–636)
A) Met中止<24h 86例 
B) Met中止 24-48h 40例

C) Met中止 48-72h 12例 
D) Met使用無し 102例

アウトカム

・Visual score 3-4は48-72h前に中止しても, 下行〜直腸の集積は亢進

SUVmaxの評価

・これも48-72h前の中止でも下行〜直腸の集積は亢進している.
・中止とともに徐々に低下するが, 2日前では不十分かも.

PET/CT前のMet中止期間を比較したRCT.

(Radiology 2018; 289:418–425)

・糖尿病でPET/CTを撮影する患者 90例を対象とし,

 
24h前に中止する群, 48h前に中止する群, 継続群に割り付け, 
腸管への集積を比較.

・48hの中止により有意に
腸管の集積は低下する.


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Metforminを使用している場合, 腸管への集積が著明に亢進する.

中止により, 集積も低下する. 一般的には2日前に中止することが推奨されるが, それでも下行〜直腸の集積は亢進している.

疾患や病態により, しっかりと腸管を評価したい場合は72h以上前の中止を検討した方が良い

2021年7月1日木曜日

Primary Aortic Mural Thrombus 原発性大動脈壁在血栓

 疾患例: 60歳台女性, 1年前に腎梗塞の既往があり, その際の造影CTにて大動脈弓部に有茎性の血栓が認められた. 

 精査にて明らかな血栓症のリスクとなる凝固障害疾患は認められず. 動脈硬化は認めるものの, 軽度〜中等度程度であった. 大動脈瘤や解離は認めない. 

 抗凝固療法にて血栓は退縮し, およそ半年の治療で抗凝固療法は終了となった.

 その数ヶ月後, 左上肢末梢の虚血症状, チアノーゼが出現. 再度精査にて同様の弓部の血栓症の再発が認められた.


というようなプレゼン.

Aortic mural thrombusは動脈硬化が強い患者や動脈瘤, 解離がある患者で多く認められる病態.

稀にそれらがない, 軽度な動脈硬化のみ, または正常血管でも生じ, 末梢塞栓症の原因となる例が報告されている: Primary Aortic Mural Thrombus(PAMT)

・Afや心臓からの塞栓を認めない四肢の虚血や臓器梗塞患者において, AMTは重要な鑑別の一つである.

・2011-2013に四肢, 臓器血管の閉塞で受診した88例を評価した報告では, 

 このうち19例が大動脈の壁在血栓による塞栓症と判断された.


 胸部Aoが10例, 腹部/腎動脈分岐までが3例, 腎動脈分岐以遠が6例 (J Vasc Surg 2014;60:1524-34.)


2013年のLiterature Reviewより, 非動脈硬化・動脈瘤・解離症例の大動脈壁在血栓症例200例解析した報告. 治療は主に抗凝固薬, 外科手術が行われている.

(Ann Vasc Surg 2013; 27: 282–290 DOI: 10.1016/j.avsg.2012.03.011)

・平均発症年齢は50歳前後. 男女差はほぼない

・並存疾患として多いものは高血圧, 糖尿病, 高脂血症, 他に血液疾患, 悪性腫瘍が1割, 一部でIBD

・症状は四肢虚血が6-7割, 脳卒中が1-2割, 臓器虚血が2-3割となる.

・血栓の部位は, 弓部と下降Aoが多い.

 外科手術が行われた患者群では弓部が多く
内科敵治療では下降Aoが多い.

・血栓の大きさは3-4cm程度.


 無茎性(sessile)が12%. 茎がある症例が多い.


 大動脈壁の動脈硬化は3-5割で認められる.

画像所見の例:

(Ann Vasc Surg 2013; 27: 282–290 DOI: 10.1016/j.avsg.2012.03.011)

予後:

・持続性, 再発性の壁在血栓は
抗凝固薬治療群で26.4%, 外科手術群で5.7%で認められた. p<0.001

・末梢の塞栓症の再発は37例(18%), この内29例は抗凝固薬治療群, 外科治療群は8例


 再発率は抗凝固療法群で25.7%, 外科治療群で9.1%, p=0.003

・Stroke, 四肢切断, 腸管切除は27.7% vs 17%と抗凝固群で多い傾向があるが,
 有意差はない. p=0.07


・四肢切断のみでは抗凝固療法群で多い: 9% vs 2.3%, p=0.04

・死亡率はそれぞれ6.2%, 5.7%と同等

末梢塞栓症の再発リスク因子

・血栓部位が上行Ao OR 12.7[2.3-38.8]


 血栓部位が大動脈弓部 OR 18.3[2.6-376.7]


 大動脈壁に動脈硬化(+) OR 2.5[1-6.4]


 Strokeで発症 OR 11.8[3.3-49.5]

 抗凝固療法を施行した患者ではOR 0.3[0.1-1]とリスクは低下する

壁在血栓の残存, 再発のリスク因子

・軽度の動脈硬化像 OR 4.8[1.8-13.4]

四肢切断に関連する因子

・弓部の血栓 OR 0.1[0.01-0.4]


 下降Aoの血栓 OR 0.2[0.01-0.7] と弓部, 下降Aoではリスクは低い


下降Aoのmural thrombusを調査したLiterature Riview

(J Vasc Surg 2017;66:931-6.)

・女性が多く,
82%が塞栓症後の評価にて
AMTが認められた.


・治療は内科的, 開胸手術, 血管内治療が同程度.


 TEVARでは再発率も低く,


 近年はTEVARが選択されることが
多くなっている


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・稀ではあるが, 塞栓症の原因の鑑別にAortic Mural Thrombusは意識しておきたい病態.
・再発リスクは2割程度あり、特に弓部, 上行Aoではリスクが高いため注意.
・治療は抗凝固薬の使用と外科手術, 血管内ステントがあるが, 近年はステントの成績が良さそうではある.