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2022年3月31日木曜日

MTX結節: MTX-induced (accelerated) nodulosis

中年のSeropositiveの関節リウマチ患者. 

MTX, SASPで治療を行い, 比較的速やかに関節症状は改善し, 以後数カ月治療を継続していた.

3ヶ月ほど前より指に小結節を生じるようになったと相談.

診察すると, 両手指に2mm程度の平滑な皮下結節を認めた. 関節とは接しておらず, 疼痛もなし.

RA自体の活動性は寛解のまま. 炎症反応の増多もなく, 結核やNTMを疑う肺病変も認めず.


この結節は?




MTXを使用中に皮下結節を生じることがある.

MTX-induced accelerated nodulosis

(Pharmacotherapy 2002;22(9):1157–1162)(Acta Derm Venereol 2014; 94: 357–358)(CMAJ. 2015 Jul 14;187(10):E327.)

・RA患者でMTXを使用中に生じる皮下結節であり, 
その頻度は8-11.6%とそれなりにある.

・MTX開始後〜出現までは3ヶ月〜12年間と様々


 総投与量も90-2700mgと幅が大きい.

・リウマチ結節との違いは,
 より小さいものが多く, 比較的急性に出現する. 

 また関節から離れた部位に生じる
 

 RAの疾患活動性への相関性はなく, 生じる際は関節炎は寛解, 低活動性のことが多い.



リウマチ結節

MTX nodule

サイズ


同じ大きさ〜より小さい

部位

指関節関節伸側

関節とは離れた部位
指に多いが咽頭や頭部アキレス腱心臓, 脾臓などにも報告がある

経過

慢性的

比較的急性に生じる

RA活動性

活動性が高い時期に生じる

低活動性〜寛解状態でも生じる

頻度

RA20-40%

MTX投与例の8-11.6%
ほぼRA症例で報告される
一部SLEPsA

その他


Bio投与にて増悪する例もあり


・MTXの抗炎症作用はアデノシン受容体が関連.

 単球の2つのアデノシン受容体 A1, A2のうち, 
A2受容体への刺激が抗炎症作用を呈するが,
  A1への刺激は巨細胞形成を引き起こし, 皮下結節の形成に関連する可能性が示唆されている
・また, HLA-DRB1*0401対立遺伝子との関連も示唆されている

・対応はMTXの中止で消退する例もあるし,

 MTXを継続しつつ, コルヒチン, SASP, HCQなどを併用し,
徐々に消退する例もある.

2022年3月24日木曜日

クリプトコッカス髄膜炎に対するLiposomal AmpBの1回投与+α vs WHO標準治療の比較

 (N Engl J Med 2022;386:1109-20.
DOI: 10.1056/NEJMoa2111904)

アフリカ5カ国におけるPhase 3 study(非劣性試験).


HIV陽性のクリプトコッカス髄膜炎患者を対象とし,

・Liposomal AmpB 10mg/kgをDay 1に1回投与
+ Flucytosine 100mg/kg/d, Fluconazole 1200mg/dを14日間投与群


・vs. WHO推奨治療(Amp B 1mg/kg/d + Flucytosine 100mg/kg/dを7日間, その後 Fluconazole 1200mg/dを7日間継続)群に割り付け, 予後を比較.

・患者は成人例, HIV陽性の初回クリプトコッカス髄膜炎患者で, 


 授乳婦や妊婦, ALT ≥200IU/mL, Leu <500/µL, PLT <50000/µLは除外.


母集団


アウトカム

・10wkにおける死亡リスクや真菌減少率は非劣性.



21日以内の副作用
・G 3-4の副作用は
有意に介入群で低い
・腎障害リスクや
貧血リスクは低い結果

2022年3月16日水曜日

ITP(自己免疫性血小板減少症)に対するオセルタミビル(タミフル®)

 ITPにタミフル®って, なにこの組み合わせ, という感想が最初.

いくつかの後向き研究において, Oseltamivirはインフルエンザ感染に関係なく, PLTを増加させる報告がある.

また, 敗血症で血小板減少を生じた患者において, Oseltamivirを追加すると血小板改善が早いとのRCTもある.


重症敗血症で血小板減少を合併(PLT≤5万/µL)している患者を対象とし,
通常の全身管理+抗菌薬に加えて, Oseltamivir併用群 vs 非併用群に割り付け比較したOpen-label RCT

(Journal of Hematology & Oncology (2017) 10:104)


・PLTの上昇や, 改善までの期間は有意にOseltamivir群で良好, 短縮.


 改善: PLT≥10万/µLで定義


症例報告やPilot studyでも, 
ITPに対するPLT改善を早める
効果が認められている.


そして, 2021年にPhase 2 trialが発表.


(Lancet Haematol 2021; 8: e289–98)

中国の5施設におけるOpen-label RCT(phase 2)

新規診断, 未治療の成人例ITPを対象とし,
 Dexamethasone + Oseltamivir群 vs Dex単独群に割り付け, 比較.

・患者はPLT<3万/µL and/or 出血症状を伴う症例.


 60歳以上の症例では他の血液疾患評価目的に骨髄検査を施行.

・除外: 3ヶ月以内にGC, Oseltamivirなど治療薬を使用.
 

 二次性の血小板減少, 悪性腫瘍既往, 重度の免疫不全, HIV, HBV, HCV, TB, 活動性感染症, 妊婦/授乳婦, 糖尿病, 高血圧, 心疾患, 重度肝障害, 精神疾患, 骨粗鬆症, IBD, VTEなど.

・治療内容: 

 Dexamethasoneは40mgを4日間,
Oseltamivirは75mg bidを10日間使用.

・Day 10でPLT <3万/µLの群では, 両群でさらにDexを同量使用.

・D+O群において, 初期には反応(PLT>3万)したが, その後再度低下した患者群では再度Oseltamivirを10日間使用可能とした.


・アウトカムはDay 14における血小板の反応,
 

 また6ヶ月間における反応性の維持効果を比較した.


母集団


アウトカム


・14日における反応性, 6ヶ月における反応の維持は
有意にOseltamivir群で良好.

・PLTピーク値も高いが,
 反応までの日数は両者で有意差なし

・Osertamivirは19%で
2サイクル使用した.



・治療反応維持期間は,
D+O群で9ヶ月間, D単独群で5ヶ月間

2022年3月14日月曜日

成人例のEBV関連血球貪食症候群の治療

 血球貪食症候群: Hemophagocytic lymphohistiocytosis (HLH)はNK細胞や細胞傷害性T細胞の消失や機能異常により免疫抑制機能が低下, その結果多臓器障害, マクロファージ活性化・増殖が生じ(Macrophage activation syndrome), 網内系での血球貪食が増加する病態.


原発性と二次性があり,

 原発性では先天性(家族性HLH), 免疫欠乏性(先天性免疫不全症候群に合併)があり,

 二次性では感染症(ウイルス感染, 敗血症), 悪性腫瘍(主にリンパ腫), 自己免疫/炎症性(SLEやAOSDが有名)が原因としてある.


参考(いくつか古いですが)

血球貪食症候群



感染症関連のHLHで最も多い原因がEBV感染症.
また, このEBVによるHLH特に予後が悪いため, 迅速な対応が重要となる.


EBVに伴うHLH 133例の解析(成人, 若年症例)
(HEMATOLOGY 2018, VOL. 23, NO. 10, 810–816)
・北京の単一病院において, 2009-2016年にEBV-HLHと診断された≥14歳の患者群を抽出し, 評価
・EBV-HLHはHLH-2004基準を満たし, さらにEBV-DNAが末梢血, 組織より陽性となった患者で定義.

アウトカム:
・HLH患者でEBV感染を認めた例が177例.
 このうち133例でEBV-HLHと診断された.
 
・リンパ腫関連が35例, 3例が遺伝性HLHと診断.
・男性例が92例, 女性42例, 中央年齢は26歳[14-77]

HLH-2004に含まれる臨床所見の陽性率と血液検査
・肝腫大を伴う頻度は半数以下と少ない. 脾腫の頻度は高い.

EBV-PCRが陽性のHLHでも, 悪性リンパ腫を背景としている可能性はある.
この報告では35/177が悪性リンパ腫であった.

反対に, Non-Hodgkin B cell lymphomaによるHLH症例31例の解析では, 46.15%でEBV viremiaが認められたという報告がある(Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2021 Feb;21(2):e198-e205)

ウイルス性HLHにおいて, EBV vs non-EBV症例の比較;
(J. Med. Virol. 88:541–549, 2016.)
・EBV-HLHは基本的に小児例で多いが, 成人や高齢者でも生じ得る(主に再活性化)
・LDHやフェリチン, CRPといったマーカーはより高値となる.


EBV-HLHの治療
・EBV-HLHでは, 初期治療はデキサメサゾン, エトポシド, シクロスポリンを用いる: HLH-94/04
・エトポシドはトポイソメラーゼII活性を阻害し, DNA合成を阻害し, 細胞死を誘発する薬剤.

HLH-94/04プロトコール (Blood. 2011;118(17):4577-4584) 
・初期治療として, エトポシド 150mg/m2, 週2回を2wk, 以後1wk毎に投与(~8wk)
  
 9wk以後は2wk毎とし, 改善まで継続
 
・デキサメサゾン 10mg/m2を2wk, 5を2wk, 2.5を2wk, 1.25を1wk
 (パルスは10mg/m2を3日間使用)
 
・CSA: シクロスポリン. トラフ 200µg/Lを目標. 
 HLH-94では9wk~で開始するが, HLH-2004では, CSAは初期治療より併用で開始する.
・髄注治療: MTX 12-15mg/m2の髄腔内投与 (中枢症状や持続性のCSF所見異常を認める場合に併用する)


HLH-94/04はEBV-HLHに限った治療ではなく, 先天性HLHも含む治療レジメ.
・自己免疫性疾患に由来するHLHは原疾患の治療が優先される.
・悪性リンパ腫などの悪性腫瘍関連でも原疾患に対する治療が優先. それに加えてエトポシドを使用することも考慮する.


特にEBV-HLHでは早期のエトポシド治療は重要な可能性が高い;

EBV-HLH 133例の治療とその反応性:
 
(HEMATOLOGY 2018, VOL. 23, NO. 10, 810–816)

・HLH-94, L-DEPはエトポシドを使用,
 その他では非使用例. 
 非使用例ではCRはなく, PR, NRのみ.
・L-DEP; Liposomal doxorubicin, Etoposide, HD-DEX, 
PEG-asparagase
・HLH-94レジメ治療は112/133, 
 L-DEPは6例,
その他は15例

日本国内の若年成人のEBV-HLH症例 11例と
Literatureより9例を解析
(Med Pediatr Oncol 2003;41:103–109)

・診断から4wk以内にエトポシドを使用した例(7例)と,
 それ以降に使用, 使用しなかった症例を比較すると,
 有意に早期使用例で予後は良好

Beijing Friendship Hosp.の血液内科に2017年に受診したEBV-HLH症例93例の解析.
(British Journal of Haematology, 2019, 186, 717–723)
・初期治療として, エトポシドを含む治療を行った群(Group 1) 52例と, エトポシドを使用しなかった群(Group 2) 41例を比較
・母集団は年齢制限をせず, HLH-04の基準を用いて診断.

 EBV-DNA >500 copies/mLを認め, さらに悪性腫瘍や原発性HLHを除外した群を対象.
・エトポシドはHLH-94ではHLH 150mg/m2, L-DEPでは100mg/m2を用いた.

・上記を満たす患者93例のうち, 54例が男性, 39例が女性

 年齢は26歳[1-70], 成人症例(>18y)が58例, 小児が35例.

初期治療にエトポシドを用いた群では
有意に生存率が良好.

年齢別の評価 Fig3: <18歳, Fig 4: ≥18歳
・成人例のEBV-HLHの方が予後が不良.

 成人例も小児例でも,
 初期治療(4wk以内)にエトポシドを用いるのは
予後の改善につながる可能性がある


成人の二次性HLH全体を対象とした報告では, エトポシドによる予後改善効果は認められず
成人の二次性HLHに対するEtoposide
(Acta Haematol. 2021;144(5):560-568.)
・2009-2020年に診断した成人の二次性HLH 90例を解析.

 このうち47%でEtoposideを使用, 53例では背景疾患の治療のみ.
・Etoposide使用例では, 150mg/m2が33%, 112.5mg/m2が5%, 100mg/m2が5%, 75mg/m2が48%, 50mg/m2が10%
減量の理由としては腎障害 59%, 肝障害14%, 双方 28%
・HLHの原因は血液腫瘍がおよそ半数, リウマチ性疾患が1-2割,
敗血症 2-3割など.

エトポシドはOSの改善には影響しない結果.
PFRやCFRにも影響はしない.

・血液悪性腫瘍群での比較でも死亡リスクは有意差なし
・EBVのみではなく, 二次性HLH全体に対する
エトポシドの予後改善効果は乏しい.

2022年3月4日金曜日

肺炎球菌性髄膜炎の比較, 予後へ関連する因子の評価

(Clinical Infectious Diseases® 2022;74(4):657–67)

20年間の肺炎球菌性髄膜炎症例の前向きコホート

・オランダにおけるNation-wide prospective cohort.
1998年-2002年と, 2006年-2018年の2期間における成人例の肺炎球菌性髄膜炎症例を評価, 比較.

・7価ワクチンが米国で推奨されたのが2000年. その後13価ワクチンが登場.


 細菌性髄膜炎に対するデキサメサゾンのRCTが発表されたのが2002年

 
>> つまり, 前半の期間はワクチンやDEXの使用が一般的ではなかった時期
 

  後半はそれらが一般的なプラクティスとなった時期と考える.


・合計1816例の髄膜炎症例を評価(1783名より)


Serotypeの変化

・肺炎球菌ワクチンが一般的となってから,
ワクチン関連株による髄膜炎は減少.


神経予後

・2002年にDEXのRCTが発表されてから, 神経予後良好例も増加傾向がある

・他の予後不良の因子としては,

 高齢者(≥75歳) OR 4.03


 男性 OR 1.51, 

 免疫不全 OR 1.50


 来院時意識障害, 脳神経障害, CSF所見, CRP値が挙げられる.

・DEXの使用は予後不良のリスクを低下させる
OR 0.58[0.46-0.74]



死亡リスク因子も

・高齢者, 男性, 意識障害, CSF所見が挙げられ,

・DEX使用は死亡リスクを低下
:全死亡OR 0.43[0.30-0.63]



2022年3月3日木曜日

DMARDや免疫抑制療法の術前の休薬についての推奨(ACR/AAHKS 2022)

 (https://www.rheumatology.org/Portals/0/Files/Perioperative-Management-Guideline-Summary.pdf)

メモです.

周術期におけるDMARDs, 免疫抑制薬の休薬推奨: ACR/AAHKS 2022 (待機的 股関節, 膝関節置換術における推奨ガイドライン) より

基本的に休薬しない

DMARDs, 免疫抑制療法

投与間隔

最後の投与〜手術までの期間

メトトレキサート

毎週

いつでも

スルファサラジン

1-2回/日

いつでも

ヒドロキシクロロキン

1-2回/日

いつでも

レフルノミド

毎日

いつでも

ドキシサイクリン

毎日

いつでも

アプレミラスト

2回/日

いつでも

重症SLEの場合は専門医にコンサルトしつつ継続が推奨

投与間隔

最後の投与〜手術までの期間

MMF

2回/日

いつでも

アザチオプリン

1-2回/日

いつでも

シクロスポリン

2回/日

いつでも

タクロリムス

2回/日

いつでも

リツキシマブ

4-6ヶ月毎

投与後4-6ヶ月目

ベリムマブ 皮下注射

毎週SQ

いつでも

ベリムマブ 静脈投与

毎月IV

4週目

アニフロルマブ

4週毎IV

4週目

ボクロスポリン

2回/日

いつでも




術前に休薬を推奨

DMARDs, 免疫抑制療法

投与間隔

最後の投与〜手術までの期間

インフリキシマブ

4,6,8週毎

5,7,9週目

アバタセプト静脈投与

毎月IV

5週目

アバタセプト皮下注射

毎週SQ

2週目

セルトリズマブ

2,4週毎

3,5週目

リツキシマブ

2週毎に2回, 4-6ヶ月毎

7ヶ月目

トシリズマブ静脈投与

4週毎IV

5週目

トシリズマブ皮下注射

毎週SQ(国内では2週毎)

2週目(3週目)

アナキンラ

毎日

2日目

セクキヌマブ(IL-17 ab)

4週毎

5週目

ウステキヌマブ(IL-12/23 ab)

12週毎

13週目

イキセキズマブ(IL-17 ab)

4週毎

5週目

グセルクマブ(IL-23 ab)

8週毎

9週目

トファシチニブ(JAKi)

1-2回/日

4日目

バリシチニブ(JAKi)

毎日

4日目

ウパダシチニブ(JAKi)

毎日

4日目



・生物製剤は投与間隔(半減期)+1週(RTXは1ヶ月)が目安.
JAK阻害薬は術前3日間あける.


非重症例のSLE

投与間隔

最後の投与〜手術までの期間

MMF

2回/日

1週間あける

アザチオプリン

1-2回/日

1週間あける

シクロスポリン

2回/日

1週間あける

タクロリムス

2回/日

1週間あける

リツキシマブ

4-6ヶ月毎

7ヶ月目

ベリムマブ 皮下注射

毎週SQ

2週目

ベリムマブ 静脈投与

毎月IV

5週目


・内服薬は1週間あける.
RTXは7ヶ月目, ベリムマブは投与間隔+1週間

2022年3月2日水曜日

多発肺嚢胞 + MALTomaで想起する疾患

中年女性. 

両側性, びまん性の多発肺嚢胞が認められ, その一部に結節性病変があり肺癌の疑いで手術治療が行われた.

膿疱は壁は薄く, 円形. 辺縁は明瞭. 散在性に多発していた.

1箇所で結節を伴い, その部位を切除. 組織からMALTomaに矛盾しない所見が得られたが, 他にもアミロイド沈着もあり...

と複雑で病態が難しい状態であった.

膠原病の可能性も視野に入れる必要があり, 相談.






さて, これは即答でSjogren症候群による肺アミロイドーシス (によるLymphocytic Interstitial Pneumonia)と言いたいところです.


肺は全身性アミロイドーシスで沈着しやすい臓器の1つ.

主に肺門リンパ節の石灰化や小結節, 気管支壁肥厚, 小葉間隔壁肥厚を呈することが多い.

(Radiographics. 2015 Sep-Oct;35(5):1381-92.)


しかし稀ながら, 嚢胞性病変を呈することがある.


アミロイドーシスによる肺の嚢胞性病変

(Chest. 2016 May;149(5):1223-33. doi: 10.1378/chest.15-1539.)

・組織的に証明された, 嚢胞性病変を呈した肺アミロイドーシス 21例の
Reviewでは, 


 背景に膠原病(CVD)を認めた症例が12例. 
このうち10例がSjogren症候群であった.

・MALTomaを合併した症例も多く, 
CVD+MALTomaは6例(6/12)


 CVD(-)症例では1例のみ.

・pSS症例では5/10でMALToma
を合併. 

 他の1例はRA.
またpSS症例の大半がAL-κによるもの.


嚢胞の形状


・多発性の円形の嚢胞が多く,
大きさは2cm以内のものが大半.

・嚢胞壁は薄く, 散在している


pSSに伴う肺アミロイドーシス症例28例の特徴

(Respirology (2010) 15, 860–868)

・結節, 嚢胞性病変が45.5%, びまん性結節が33.4%と
一般的なアミロイドーシスよりも嚢胞性病変となる例が多い

・リンパ腫合併例が9%


Mayo clinicにおいて1997-2010年に組織的に診断されたpSS患者における肺アミロイドーシス 8例を解析

(Respiratory Medicine (2013) 107, 616-621)

・年齢中央値は55歳[32-75]. 喫煙歴(+)の症例は無し.

・画像所見は8例全例が嚢胞性病変+結節であった.


 3/8でMALTomaを診断. 1例でリンパ過形成所見を認めた.


これらはLymphocytic Interstitial Pneumoniaに分類される

(Radiol Bras. 2020 Set/Out;53(5):287–292.)

・LIP症例 36例の画像所見をReviewした報告
より,

 背景疾患はSjogren症候群 42%, HIV 17%, アミロイドーシス 17%,


 pSS+二次性アミロイドーシス 11%, 特発性 8%, SLE 5%

・CT所見: 嚢胞性病変, 小結節が多い所見.



”黒色” 胸水の鑑別は?

 10年以上前, 某病院で当直中に 居残っていた後輩から

「・・・・・先生・・・ 黒色胸水、って何考えたらいいんですか?」

という質問をされたことがある.

夕方穿刺した胸水貯留患者の胸水が黒色だったというのだった.


その時は... 

「胆嚢刺したんちゃうん? 炭疽菌?」とかしか言えなかったが, 今なら言える!

黒色胸水の鑑別!


さて, Medicine (Baltimore)より,

(Medicine 2022;101:8(e28130).)

Etiology, pathological characteristics, and clinical management of black pleural effusion: A systematic review

・Literature reviewで抽出した黒色胸水の症例 32例を解析した報告

黒色胸水の原因
原因疾患は以下の通り;
 
 肺癌系: 肺腺癌(2), 肺のムチン性腺癌(1), 肺非小細胞癌(1), 
 
 他腫瘍: 転移性メラノーマ(7), 肺外転移性腺癌(1), 肝胆管癌(1), 縦隔嚢胞性奇形腫(1)
 感染症: Aspergillus niger膿胸(2), Rhizopus oryza膿胸(1)

 その他: 仮性膵膿疱+瘻孔(9)
, Boerhaave hdro pneumothorax(食道壁破裂 1例)
, 肺気管支瘻(1)
, コカイン使用(2)
, リウマチ性胸膜炎(1)
, 胸部子宮内膜症(1)