PCPはCD4+ cellの活性低下がリスクとなるが, 動物実験ではB cellも免疫に関与している結果がでている.
・Mayo clinicにおいて, 1998-2011年に リツキシマブ使用中に発症したPCP症例は30例.
ステロイド併用が73%で, 10%はリツキシマブ単独投与下でのPCP発症であった.
PCPの予防投与をされていたのは1例のみで, 大半が予防投与無し.
53%がICU管理となり, 死亡率は30%であった.
(Chest 2013;144:258-265)
リツキシマブ使用中の患者でのPCPの予防推奨は未だはっきりしていないのが現状.
そんななか, 韓国より後ろ向き解析が発表.
(Chest 10.1016/j.chest.2021.11.007)
RTX使用患におけるPCP予防の効果を調査した韓国からの報告
・韓国のSeoul National Univ. Hosp. において, 2002-2018年にRTXが使用された患者群 3524例を解析.
・このうち血液疾患が2500例, リウマチ性疾患が559例, 臓器移植が465例.
・ST合剤によるPCP予防が行われたのが1001例であった (RTX投与開始から28日以内に開始された群をITT解析で採用. 28日を超えて開始された例が254例あり. )
・アウトカムは予防の有無と1年間におけるPCP発症リスク.
・PCPの診断は検体からの病原菌の検出(染色やPCR)があった症例で, さらにエキスパート2名がカルテをReviewし, 経過や画像より妥当性を検討.
母集団
a) PN, ASP, クリオグロブリン血管炎を含むb) ITP, TTP, IVL, WMを含む
c) GFR<60mL/min, d) Ly<800/µL, e) PSL≥30mg/d
・膠原病ではAAVとRAが多い 他はSLE, 炎症性筋疾患
・AAVでは予防されている例が多いが, RAでは少ない
・ST合剤の投与期間は 平均153.8±107.6日間
アウトカム
・2759.9pt-yのフォロー期間でPCPは92例で発症.
(リウマチ性疾患10例, 血液疾患74例, 移植18例)
・疾患群別の発症率(/100pt-y, Control群)は,
全体で4.11[3.26-5.12]
リウマチ性疾患で2.96[1.19-6.09],
血液疾患 4.50[3.44-5.78],
臓器移植 7.01[3.63-12.25]
・RTX開始〜PCP発症までの中央期間は86±80日間
・ PCP関連死亡率は27.2%
・PCPの発症リスクに大きく関与する因子は,
腎機能低下(GFR<60) aSHR 2.38[1.75-3.23]
高用量ステロイド(PSL≥30/d) aSHR 3.09[2.22-4.30] であった.
ST合剤による予防効果
・PCPの頻度は Control群で4.13, 予防群で1.47/100pt-yと 有意に予防群で低下
・高用量GC使用例を除外した群では aSHR 0.14[0.04-0.52]
IPTWを適応しない場合 aSHR 0.26[0.14-0.47]
1:1のPropensity score matchedでの比較 aSHR 0.35[0.16-0.79]
・他の免疫抑制療法/抗癌剤を使用していない群でも同様の予防効果
・予防によるNNTは32[24.8-39.4]
副作用によるNNHは101[61.9-261.1]
・また, 予防効果は140日以上継続した症例でさらに高い.
疾患群別の評価では
・リウマチ性疾患, 血液疾患, 移植患者群すべてST投与による PCP予防効果は良好に得られる.
・リウマチ性疾患患者では, 死亡リスクの低下効果もあり.
・疾患群別のNNTは,
リウマチ性疾患 23[16.6-36.4]
血液疾患 36[27.7-46.6],
移植患者では27[13.6-101.1]
・高用量GC併用群では17[12.1-25.7]とさらにNNTは良好となる
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RTX使用患者でもST合剤によるPCP予防は考慮する価値がありそう
国内ではAAVが主なので, 大体併用していますが