肺エコーで両側性、広範囲のB lineを見た場合, 心原性肺水腫なのか, ARDSなのか, 肺線維症などのIPなのか、、、迷うこともあると思います.
どのようなポイントが鑑別に有用でしょうか?
ICU管理となった成人患者のProspective study.
(Chest. 2015 Oct;148(4):912-8.)
・入室6時間以内のP/F比 <300の群を対象
・最終的な評価は59例が心原性肺水腫(CPE), 42例がARDS
33例がその他の原因であった.
・その他の原因の可能性をあげる所見は, 肺エコーにおいて, B−line比が低い所見であった
B−line比とは全領域のうち, B−lineを認めた領域の割合
CPEとARDSの鑑別には, 以下の項目が有用
・左胸水 >20mm +4点
・中等度〜重度のLV不全 +3点
・IVCの最小径 ≤23mm -2点
上記のスコアにおいて, ≤0ならばARDSを, ≥3ならば肺水腫±ARDSを疑う
ARDS患者18例, 肺水腫患者40例のエコー所見を比較した報告
(Cardiovascular Ultrasound 2008, 6:16)
・鑑別に有用なのはPleural line異常, Lung slidingの低下, Spared area, consolidation, Lung pulse
・Spared areaは密度の濃いB lineに混じって, 正常肺が認められる所見.
・Pleural lineの異常: ARDSでは胸膜ラインが歪となる
個人的に, この胸膜ラインは結構有用な所見ではないかと感じておりました.
そこに今回Chestからそのような文献がでましたのでさらに紹介します.
肺のMモードによる心原性肺水腫の評価:
心原性肺水腫症例12例と, 非心原性肺胞間質疾患(NAIS) 17例, Control群14例において, Mモードにおける胸膜, 肺所見を評価.
(CHEST 2018; 153(3):689-696)
・NAISはIPFが8例, SLEによるAIPが2例, ARDSが6例, NSIPが1例.
・肺エコーの評価はMモードにおける胸膜ラインの性状と, 肺部のMモードパターンを評価.
胸膜ライン: 持続性 or 断続性
肺パターン: 垂直 or 水平 で評価する
所見の例
各病態と所見のパターン
・心原性肺水腫では胸膜ラインは持続性となり非心原性肺胞間質疾患では断続性となる.
健常人では基本的に持続性.
・肺のパターンは, 非心原性肺胞間質疾患では垂直性, 心原性肺水腫でも垂直性が多いが, 双方ある. 健常人では水平性
これら組み合わせると,
・両側性のB lineを認めた場合, Mモードにおいて
持続性の胸膜ライン + 肺が垂直パターンならば心原性を疑う.
断続性の胸膜ライン + 肺が垂直パターンならば肺病変を考慮.
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前々から, 心原性肺水腫の肺エコーではB lineの割には胸膜が綺麗だなぁ、なんて思っていました.
その感覚はやはり有用だったのだなぁ、と少し嬉しく思いました
これからは意識して胸膜見ることにします.