特発性筋炎では心筋障害を伴うことがあり, 予後に関連するために注意が必要.
また, 冠動脈疾患リスク自体, 自己免疫性炎症性疾患では上昇する.
心筋障害は潜在性のことも多く, 「心筋障害あるかも」とまず思うことが大事.
心原性トロポニンは心筋障害の評価に有用であるが,
cTnIは心臓選択性が高いものの,
cTnTは骨格筋にも微量ながら含まれるため,
特発性筋炎では偽陽性となることが知られている.
(Ann Rheum Dis 2015;74:795–798)
第一世代のcTnT assayは骨格筋のTroponinと交差反応を示す.
・これは骨格筋Troponinと6-11アミノ酸のみが異なるため.
次世代のAssayでも偽陽性はある.
・対してcTnIは骨格筋Troponin Iと比べて31個のアミノ酸が多く結合しているため, 検査の特異性が高い.
現在使用されている第二世代のcTnIは交差反応は無い.
(Ann Rheum Dis 2015;74:795–798)
先天性, 後天性の筋症(代謝性や横紋筋融解を含む)52例の解析では, cTnTやCKは持続的に上昇を認める一方, cTnIは持続的に正常範囲であった
・また, CKの上昇につられてcTnTも上昇を認める傾向がある
(J Am Coll Cardiol 2014;63:2411–20)
PM, DMで臨床的に心筋障害を認めない39例の解析
(Clinica Chimica Acta 306 (2001) 27–33)
・CK-MBは51%で上昇, cTnTは41%で上昇を認めたが, cTnIは2.5%(1例)のみ.
cTnT正常例, 上昇例別の評価
・cTnTが上昇していてもcTnIは正常のことが多い.
・cTnT上昇例ではミオグロビンやCKMBも高値
特発性炎症性筋症 49例を後ろ向きに解析
・PM23例, DM16例, CTD関連筋炎が10例
・CKとcTnTを評価した28例では,
CK上昇していた23例中18例がcTnT上昇.
CK正常の5例中5例がcTnT正常
・CKとcTnIを評価した41例では,
CK上昇していた29例中, cTnI上昇は1例のみ
CK正常の12例中, 12例がcTnI正常
(J Rheumatol. 2009 Dec;36(12):2711-4.)
成人発症の特発性筋症患者123例における心筋障害と心原性酵素の関連を評価.
(Using serum troponins to screen for cardiac involvement and assess disease activity in the idiopathic inflammatory myopathies. Rheumatology (Oxford). 2018 Mar 12.)
・DM 32%, PM 28%, Anti-synthetase syndrome 30%, 免疫介在性壊死性筋症 7%, IIM-CTD overlap 4%
・上記のうち18例で心筋障害を認めた
(MDAAT: Myositis Disease Activity Assessment Toolの心障害で評価. Cardiac VAS score >0で定義)
・心筋障害に関連する因子は, Physician global disease activity VAS, HAQ-DI, Extramascular global VAS, cTnT, cTnI
・cTnT異常は感度83%, 特異度46%, PPV 21%
・cTnI異常は感度44%, 特異度95%で心筋障害を示唆する. PPV 62%
・また, CKが正常でもcTnTやcTnIが陽性の場合は疾患活動性があることを示唆する結果.
cTnTによる潜在性心筋障害の評価
・cTnTで評価する場合は
cTnTが正常ならば心筋障害は否定的.
軽度上昇ならばECGやエコー所見を評価する
高度上昇ならば心筋障害ありと判断
(Ann Rheum Dis 2015;74:795–798)
cTnIによる潜在性心筋障害の評価
・cTnIで評価する場合は
正常ならば否定, 陽性ならば心筋障害あり.
(Ann Rheum Dis 2015;74:795–798)