抗INF-γ抗体
IFN-γ/IL-12は細胞内におけるMycobacteriaの除去に重要な役割を有する
・抗INF-γ抗体により中和されることで, 後天性免疫不全状態となる
NTM, non-typhoidal salmonella, Burkholderia sp, Penicillium marneffei, Cryptococcus neoformans, Histoplasma capsulatum, VZVの播種性感染症, 再発性感染症のリスクとなる.
(Dermatology 2013;226:157–166)
・抗IFN-γ抗体の報告例はアジア諸国から多い. 好発年齢は30-50歳
・人種や遺伝子が関与している可能性が示唆.
→ タイにおいて, 抗体陽性例32例とコントロール38例において, HLA-DRB1, DQB1を評価した結果, DRB1*15,16, DQB1*05:01,02は抗INF-γ抗体産生のリスク因子であった.
さらに, HLA-DRB1*16:02, DQB1*05:02は白人よりもアジア人で多いタイプであり, それがアジア人で報告例が多い理由の1つかもしれない.
(PLoS ONE 10(5): e0128481.)
・なぜ抗体がされるようになるかは未だ不明のまま
播種性NTM感染症と抗INF-γ抗体
・播種性NTM感染症は以下の1つ以上を満たす場合に診断される
1) 血液培養, 骨髄培養, 肝組織培養のいずれかよりNTMが陽性となる
2) 連続性のない2部位からNTMが検出される.
例えば呼吸器, リンパ節, 腹水, 胸水, 心嚢水, 関節液, CSFなど
3) NTM感染があり, 反応性皮膚病変を伴う場合(Sweet症候群, 全身性膿疱症, 結節性紅斑)
・播種性NTM感染症における背景疾患として重要なのはHIV感染症. 約半数がHIVを背景としている報告がある(Scandinavian Journal of Infectious Diseases, 2011; 43: 8–14 ).
非HIV患者における播種性NTM感染症46例のうち45例で抗IFN-γ自己抗体が陽性.
・年齢は56歳[50-67], 男女比はほぼ同等
・MAC症とM abscessesが多い
・肺以外の感染部位は
リンパ節が81.8%, 骨が61.4%, 関節20.5%
・結核の既往歴は4例であり
VZVの再活性化は62.2%, サルモネラ症の既往は40.0%
24.4%はそれら感染症の既往なし
(Medicine (2016) 95:25(e3927))
抗INF-γ抗体陽性のNTM感染症のLiterature review
・M aviumとM abscessusが報告例で多い.
・NTM以外にはヘルペスの再活性化, サルモネラ属による感染症
(Emerging Infectious Disease 2016;22:1124-1125)
このようにアジアにおける播種性NTM感染症と抗INF-γ抗体には関連性が深いと考えられ, 播種性NTM感染症を診断した場合は, 抗INF-γ抗体を評価すべきと推奨されている.
(Lancet Infect Dis 2015; 15: 968–80)
抗INF-γ抗体の評価
抗INF-γ抗体があるとQFT-TBの陽性コントロールが陰性化する
・抗INF-γ抗体がある場合, 全血を用いるQFTの陽性コントロールが陰性化し, 血球を分離して評価するT-SPOTの陽性コントロールは陽性となる.
ELISAで評価可能であるが, コマーシャルベースでは不可
・新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科, 新潟大学医歯学総合病院汗腺管理部で研究しており, 論文も多く発表されているため, そこで測定可能かもしれない
抗INF-γ抗体に対する治療
抗INF-γ抗体に対する免疫抑制療法やリツキシマブも試されている
・播種性NTM感染症において, NTMの治療に加えてステロイドやリツキシマブを使用することで, 抗INF-γ抗体を抑制し, 免疫を改善させることも試される.
・症例報告レベルでは効果を認めているとしているものもあり.
(Clinical Infectious Diseases 2014;58(6):e115–8)
・一見矛盾していそうな治療であるが, 理には適っている. でもしにくい…