Aspirin, Clopidogrelと出血リスク
表の通り, Aspirin, ClopidogrelはGI出血のリスクとなる. (JAMA. 2011;306(21):2367-2374)
特に高齢者, 既往歴(+), NSAID併用, 抗凝固併用ではHigh risk
アスピリンによるGI出血
アスピリンは非静脈瘤性出血リスクを1.5-3.2倍. NNHは833.
Aspirin <100mgでは1.1%[0.9-1.3]
Aspirin 100-325mgでは2.4%[2.2-2.6]
Aspirin >325mgでは2.5%[1.8-3.1] の出血率.
Aspirin 100-325mgでは2.4%[2.2-2.6]
Aspirin >325mgでは2.5%[1.8-3.1] の出血率.
ClopidogrelによるGI出血
ClopidogrelではGI出血OR 1.3[1.1-1.5]で,
Aspirin単剤と比較すると出血リスクは少ない(0.5% vs 0.7%)
Aspirin単剤と比較すると出血リスクは少ない(0.5% vs 0.7%)
GI出血の既往がある患者では, Clopidogrelによる出血リスクは22%.
制酸剤によるリスク軽減効果
Dual Antiplatelet Therapy(DAPT)による出血リスク
Major bleeding riskは, アスピリン 325mgで1.0%, Clopidogrel単剤で0.85%
アスピリン+Clopidogrelで1.7%, ワーファリンで2.5%.
併用療法によるGI出血リスクは OR7.4[3.5-15], NNH 124.
Warfarinによる出血リスク
Major bleeding riskは1-7.4%/yr. GI出血リスク OR 1.98[1.61-2.34], Aspirinと併用ではGI出血 OR 6.48[4.25-9.87].
Triple therapyによる出血リスク
Warfarin+DAPTでは, DAPTと比較して HR5.0[1.4-17.8]の出血リスク.
Warfarin単剤治療と比較して HR5.38[3.48-8.32]の出血リスクとなる.
Dabigatranによる出血リスク
RE-LY trialではWarfarinと出血リスクは同等 RR0.93[0.81-1.07](150mg)
GI出血はDabigatran 150mg/dの方が高く, 150mg/d vs WarfarinではOR 1.50[1.19-1.89], 110mg/d vs WarfatinではOR 1.10[0.6-1.41] となる.
H pyloriによる出血リスク
Aspirin内服中の患者ではH pylori感染は十二指腸潰瘍OR18.5[2.3-149.4]
消化管出血既往がある群では, H pylori除菌はPPI内服と同等の予防効果 (GI出血率 1.9% vs 0.9% AD1.0%[-1.9~3.9])
除菌+PPIは除菌単独よりもより予防効果が高く, 双方行うべき.
抗血小板薬使用患者, リスクのある患者に対する潰瘍予防の推奨.
GI出血の患者では, 抗血小板薬は中止すべきか?
抗血小板薬中止による影響
Aspirin中止による心血管イベントリスクを評価したMeta.
6 prospective cohort trialsのMeta-analysis, N=50279名.
全体では, Aspirin中止による心血管イベントリスクRR 3.14[1.75-5.61]
特に冠動脈ステント留置群では高リスクであり, RR89.78[29.9-269.6]
(European Heart Journal (2006) 27, 2667–2674)
心血管系イベントの10.2%が直前にAspirin中止歴がある.
周術期におけるAspirin中止の影響を評価したMeta-analysisでは, Aspirin中止〜各イベント発症までの期間は,
急性冠動脈疾患 8.5±3.6d
脳血管疾患 14.3±11.3d
末梢血管疾患 25.8±18.1d となる. 早いものでは中止後5日で発症.
(Journal of Internal Medicine 2005; 257: 399–414)
GIFで止血後の上部消化管出血患者でアスピリンは続けるべきか?
Aspirin 80mg/d内服中に消化性潰瘍による出血を生じた156名 (Ann Intern Med 2010;152:1-9)
内視鏡カメラで止血後に, Aspirin再開 + PPI iv, po vs Placebo + PPI iv, po 8wk継続群で比較 (RCT, Double-blind, ITT)
Outcome; 30日間の再出血Risk, 全死亡Riskを評価
Outcome
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Aspirin
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Placebo
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Difference
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HR
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30d再出血
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10.3%[3.4-17.2]
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5.4%[0.3-10.5]
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4.9[-3.6~13.4]
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1.9[0.6-6.0]
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30d死亡
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1.3%[0-3.8]
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9%[2.7-15.3]
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7.7[0.9-14.5]
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0.2[0.05-0.90]
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50d死亡
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1.3%[0-3.8]
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12.9%[5.5-20.3]
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11.6[3.7-19.5]
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0.2[0.06-0.60]
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Aspirin再開は再出血Riskを増加させる可能性はあるが,
全体的な死亡率を低下させる.
内視鏡で止血が確認できれば早期に再開させた方が全体的な予後は良好と言える.
上部消化管出血患者では抗血小板薬はどうすべきか? (JAMA. 2011;306(21):2367-2374)
抗血小板薬は可能な限り早期に再開すべきとの考えが強い.
出血リスクよりも冠動脈疾患リスクの方が生命予後への関連が強い.
Warfarinも中止にするよりはINR 1.8を目処にコントロールする群が最も予後がよいという報告もある.
報告ではINR<1.5とするべきとの意見もあり, 日本人ならばINR<1.5を維持する方が良いかもしれない.
PPIとClopidogrelの併用について
PPIはCYP2C19で代謝され, ClopidogrelもCYP2C19で代謝され, 活性体となるため, 双方の使用によりClopidogrelの効果が低下する可能性.
これについては多数のStudyが行われ, 臨床的には問題ないという結論になっている
(別記載予定)