(West J Med 1979;130:133-42) (J. Nutr 2000;130:1344S-9S) (Am Fam Physician 2009;79:768-72)
Feに次いで体内で豊富な微量元素
蛋白構成, 酵素反応, 遺伝子合成に関与
Polymerase, proteaseの補助因子
Thymulin(T-cellに影響)の補助因子
黄斑変性に関与すると言われている.
様々な食材, サプリメントに含まれており, 通常枯渇することはないが, 低栄養, 吸収障害, アルコール中毒患者では欠乏があり得る.
血中Zn濃度は体内Znを反映しないため, Routine測定は推奨されない
亜鉛欠乏の症状
成長遅滞, 思春期遅発, 勃起不全, 下痢, 脱毛症, 舌炎, 爪変形, Hypogonadism, 免疫低下
表皮障害, 創傷治癒遅延
腸性四端皮膚炎(J Am Acad Dermatol 2007;56:116-24.)
亜鉛欠乏関連疾患
Crohn病, Celiac disease, Chronic alcoholism, Cirrhosis, Sickle cell disease
Acrodermatitis enteropathica; 通常新生児で認める.
亜鉛欠乏関連状態
妊娠, 母乳栄養, ベジタリアン, 長期の点滴栄養, 短腸症候群, 消化管手術
亜鉛補充療法にて, 年齢関連性黄斑変性の予防効果が期待できる.
Wilson病の治療として亜鉛補充もある.
しかしながら, URI, 創傷治癒, HIVに関しては有意差は認めていない.
亜鉛の代謝
Znは微量元素であり, 体内の総量は体重の0.01%以下
体重75kgの成人に存在するZnは2.5g.
30%は骨, 60%は筋組織に分布している.
濃度が高い臓器は, 眼球, 毛髪, 精巣, 骨 > 肝臓, 腎臓, 筋肉
血中では80%がRBCに分布し, 炭酸脱水素酵素として機能.
血漿Znの正常値は70-110mcg/dL, 血清Znはそれより10%高い.
血漿中では, 約50%が緩くAlbと結合しており, 遊離 or Alb結合 Znとして存在する.
7%がアミノ酸と結合しており, 残りがα2-macroglobulin, 蛋白と強く結合し存在する.
Transferrinとも結合し, 亜鉛の身体内分布に役立っている.
Tissue
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Zn mcg/g
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Tissue
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Zn mcg/g
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Tissue
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Zn mcg/g
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Tissue
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Zn mcg/g
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副腎
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6
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毛髪
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175
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筋肉
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48
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皮膚
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6
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血液
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7
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心臓
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27
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卵巣
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12
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脾臓
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19
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骨
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66
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腎臓
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37
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血漿
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0.7
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精子
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125
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脳
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13
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肝臓
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38
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前立腺
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87
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尿
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0.3
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GI tract
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21
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リンパ節
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14
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亜鉛の吸収部位は十二指腸, 小腸近位部
吸収率は20-30%と記載されているものが多い.
Zinc 65による評価では, 摂取後15minで体内に取り込まれ, 2-4hrで血中濃度がピークとなる
摂取後21日目で約70%が排泄されている
Znの排泄に最も関与する部位が小腸であり, 未吸収のZn + 胆汁排泄Zn + 膵排泄Znが便中に排泄される
尿中には0.3-0.5mg/d, 汗では115mcg/dL, 2-3mg/dの排泄がある
亜鉛の1日必要量
鉄のような, 貯蔵Znは存在しない. 筋骨格のZnも代謝には使用されない
生後~4moで3mg/d, 5mo~12moで5mg/d
1-10yrで10mg/d, 学童~成人で 15mg/d
妊婦, 授乳婦では20-25mg/dを必要とする
亜鉛欠乏の原因
Factors
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Example
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Intake不足
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Low-income diets
高齢者 タンパク, カロリー吸収障害 |
Zn必要量の上昇
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成長期, 妊娠, 授乳
タンパク同化の亢進 |
Availabilityの減少
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Phytate, Fiber
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吸収の低下
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吸収不良症候群, 脂肪便
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Excessive loss
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高Zn尿症
外科手術, 熱傷 発汗増多, 出血 |
医原性
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キレート剤(ペニシラミン)
経静脈栄養 |
Genetic defects
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Acrodermatitis enteropathica
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鉄剤と同時に摂取するとZnの吸収率が減少するとの報告が多いが, Controversialであり, 気にする必要は無し (Am J Clin Nutr 1998;68:442S-6S)
TPNでは通常70-80mcg/kgのZnが血中濃度維持に有効.(Am J Clin Nutr 1981;34:1853-60)
亜鉛の検査
血清Zn値は炎症期には低下する.
炎症性蛋白であるIL-2やT-helper type 2 cytokineによりZip14 zinc transporterが誘導されるためとされる.
また, Albと結合するため, 低AlbでもZn値は低下する
また, 明らかに亜鉛欠乏性皮膚炎で, 亜鉛補充に反応した症例でも血清Znは正常範囲内のこともある. 血清Znは全体の0.1%のみであり, 厳密にコントロールされる為.
また溶血するとZn値は上昇する.
より信頼のおけるのはRBC, 毛髪の亜鉛濃度と言われる.
Zn依存性酵素の評価; ALP, copper-zinc superoxide dismutase, Lymphocyte 5’-nucleotidase.
Zn-regulated protein; Eryhthrocyte metallothionein
上記の評価も考慮されるが, 国内では困難.
銅欠乏症
銅欠乏症では貧血+Neu減少を来す (Am. J. Hematol. 82:625–630, 2007)
銅欠乏症は,
微量元素の補充を行っていないTPN, EN.
胃全摘後, Short bowel syndrome, 吸収不良症候群, 牛乳のみで栄養された乳児, 多量の亜鉛摂取(慢性のコイン摂取など) で認める.
鉄芽球性貧血 ± 好中球減少 ± PLT減少を認める.
2003-5年で原因不明の貧血 or MDS疑いでNorth Carolinaの大学病院に紹介された患者126名.
その内8名(6.3%)がCu欠乏症であった.
年齢 32-71yr, 全例女性. MCV 81-101. 7例が正球性, 1例のみ大球性.
骨髄異形成は7/8で(+). Neu減少合併7/8, 神経障害5/8.
基礎疾患; 慢性下痢, MGUS, 胃摘後3例, IBS, 無しが2例
銅欠乏による神経障害 (Clinical Chemistry 57:8 1103–1107 (2011))
銅欠乏では, 失調, 痙性歩行, 神経症, 眼神経症, 運動神経変性を呈し得る.
失調は感覚性失調が主であり, 振動核の低下を伴うことも多く, 後索障害が示唆される.
また, 腱反射は減弱するが, Babinski徴候は陽性となる.
ALSと同じ様な症状. 下位ニューロンの障害が主となる.
Neurology 2013;80:e120-126より, 神経障害のタイプと原因の表