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2017年9月15日金曜日

α1アンチトリプシン欠損症

α1アンチトリプシン(AAT)欠損症(欠乏症).
国家試験で聞いたなぁ、という認識の人も多いかもしれませんが, 実は隠れている可能性が多い疾患の一つ.

AATは好中球エラスターゼを阻害する作用をもつ.
さらにMatriptase阻害作用による粘膜絨毛のクリアランスの調節, Caspase 3阻害による細胞死の調節, 抗感染, 抗炎症, 抗酸化作用を有する.
・肝臓で産生され, 134mg/kg程度産生される. 40%は循環血液中に存在し, 残りは組織に認められる.
・AAT欠乏では炎症性サイトカインの抑制が効かず組織傷害, 特に肺障害を生じる. AAT<11µM/Lは肺気腫のリスクとなる.
(Drug Design, Development and Therapy 2017:11 2149–2162 )

α1-antitrypsin欠損症は常染色体優性遺伝形式の先天性疾患
・α1-antitrypsinSERPINA 1(14番染色体の長腕; 14q31-32.3)Codeされる.
産生されるPhenotype(protease inhibitor) PI*◯◯と表記される.
 ◯◯には等電位pHとしたときのPIの遊走度合いで分類され, A~Zが入る
正常はMであり, SZAAT欠乏症で多いパターン
 α1-antitrypsin欠損症で最も多いのがPI*Z であり, 95%を占める.
 他の稀なtypeでは “null variants”. これはPIを認めない状態.
 正常のPIPI*MM.
見逃されている例が多いとされ, 実際の欠損症(欠乏症)≤10%程度しか診断されていないと予測されている
(Am J Respir Crit Care Med Vol 185, Iss. 3, pp 246–259,)(Drug Design, Development and Therapy 2017:11 2149–2162 )

PI*と血中AAT濃度
(Drug Design, Development and Therapy 2017:11 2149–2162 )

Phenotypeで肝傷害をきたしやすいタイプ, 肺気腫を来たしやすいタイプがある.
・Zタンパクは肝細胞に取り込まれやすい
Genetic
Variants

Protein
Phenotype

血中Prot
Level

Molecular
Genotype

COPD Risk
肝障害Risk
ZZ
Z
Very low
ZZ
Very high
High
ZNull
Z
Very low
Z/non-S, non-Z
Very high
Unknown
MZ
MZ
Intermediate
Z/non-S, non-Z
Increased
Increased
MNull
M
Intermediate
non-S, non-Z/non-S, non-Z
Unknown
Non
SZ
SZ
Low
SZ
Increased
Increased
NullNull
None
None
non-S, non-Z/non-S, non-Z
Very high
None
(NEJM 2009;360:2749-57)

Phenotypeと血中AAT濃度と臓器傷害リスク
(CMAJ 2012;184:1365-1371)

スクリーニングStudyによるAAT phenotypeの頻度
(Respiratory Medicine (2009) 103, 335-341)

AAT欠損症の臨床所見
(Am J Respir Crit Care Med Vol 185, Iss. 3, pp 246–259,)
肺疾患(肺気腫, 気管支拡張), 肝障害(慢性肝炎, 肝硬変), 皮膚症状(脂肪織炎), 血管炎(ANCA関連血管炎)との関連がある
・他には糸球体腎炎, Celiac disease, 肺癌, 大腸癌, 膀胱癌脳血管瘤, 腹部血管瘤, Fibromuscular dysplasia, 膵炎との関連が報告.

肺疾患; 40-50台の肺気腫, 気管支拡張が一般的.
慢性的な咳嗽, Wheeze, 呼吸症状も多い.
PI*Z homozygoteにおけるFEV1の低下速度は23-316ml/yr
 増悪因子は喫煙歴, 男性, 30-44yr, 血中α1-antitrypsin低下気管支拡張薬への反応性低下.
・AATDの死亡原因の45-72%が呼吸不全, 10-13%が肝硬変によるもの.

肝障害; PI*Zとの関連が大きい.
・肺と異なり, 小児期, 新生児期より肝障害を認める.
小児期に肝硬変で死亡する例もある.
・Z protein(+)の乳児の10%Prolonged obstructive jaundice
 2%で肝不全を発症し, 肝移植が必要となる
・加齢とともに肝硬変に移行し, 無症候だが肝硬変であることも.

脂肪織炎; AATD0.1%と稀.
・PI*ZZ, PI*SZ, PI*SS, PI*MS での報告例.
外傷部位に生じる脂肪組織の壊死性病変のパターンが1/3

血管炎; PR3-ANCA関連血管炎
・Z-alleleAATDでは5.6-17.6%で上記血管炎を合併.
一般人口と比較して, 3-9倍の頻度.
・Wegener granulomatosis患者433名中,  PI*ZZ0.9%, PI*SZ 0.5%
 (対象群での頻度は双方とも0%. OR 14.58)
・c-ANCA関連血管炎患者において, AATDの検査を行うことが推奨される.

AAT欠損症の診断
(Am J Respir Crit Care Med Vol 185, Iss. 3, pp 246–259,)
AATは未診断が多く, COPD1%AAT欠損とされている
・遺伝子診断となるため, 十分説明したうえでの検査が望まれる
・ただし, それが判明してもOutcome改善に繋がる保障は無し.

推奨される検査
・血清タンパク, AATタンパクphenotype, AAT genotype
・AATタンパク測定はInitial testとしては有用だが炎症, 感染などで上昇し, heteroでは正常であるため感度が低い
AATの正常値は20-53µM.
 AAT <11µMで肺気腫のリスク上昇すると言われている.
・AATタンパクphenotypeは特殊な施設での検査となる
 Commercial besedGenotype判定kitはあるが, 低感度.

どのような患者群でAAT欠損症のスクリーニングを行うべきか?
・COPD foundationのガイドラインでは, COPD全例, 原因不明の肝傷害, 壊死性脂肪織炎, GPA, 原因不明の気管支拡張症
 家族歴がある患者などでスクリーニングを推奨している. (Journal of the COPD Foundation 2016;3:668)
・COPD全例で評価とはちょっと広すぎるとして, 若年発症のCOPD, 家族歴が陽性のCOPD例にて評価することを推奨する意見もある.(CMAJ 2012;184:1365-1371)

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喫煙歴はあっても40-50歳で高度な肺気腫はCOPDを認める場合はAAT欠損症を疑い評価はするようにしています.
全例、、、というのはやっていません.

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