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2016年7月6日水曜日

スタチンによる筋性間欠性跛行?

症例: 80代女性. 両下肢の重だるい感じ.
 高脂血症でスタチンを使用中の女性. それ以外に既往はなく, 喫煙歴もなし.
 心血管系疾患の家族歴があり, スタチンを数年前に導入された.

 数カ月前より歩行時に両下肢が重だるい, 痛む感じがあり, 長時間歩行できなくなった.
 大体20-30分程度歩行すると出現する. 休み休みならば問題無し.
 疼痛部位は両側大腿前面, 下腿が同時に痛み始める.
 四肢のしびれはない.

間欠性跛行と判断され, ABIや脊柱の評価をされたが異常は認められず, 紹介.

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間欠性跛行は主に血管性(末梢動脈疾患)と神経性(脊柱管狭窄症)がある(参考: 間欠性跛行の鑑別)

スタチンによる筋症状の特徴は以下の通り.
・筋症は体どの部位でも生じて良いが, 最も多いのは下肢(大腿と下腿)
・疼痛は重い感じ, こわばり, こむら返りとして自覚することが多く, 稀ながら脱力もある.
また運動時に自覚/増悪することが多いため, 身体活動も低下する.
・投薬開始から1ヶ月後に出現することが多いが6-12ヶ月と幅がある
・また投薬中断後2ヶ月間は持続する可能性がある
(Med Clin N Am 98 (2014) 429–444)

症状はスタチンによる筋痛として矛盾はしません.
このように, スタチンによる筋症状を間欠性跛行と捉えることはあるのかどうか?

VigiBaseにおいて, スタチン(Simvastatin)とEzetimibeの単剤/併用中に脊柱管狭窄症を診断された症例を抽出
・VigiBaseはWHOによる医薬品の副作用データを各国から収集したデータベース.
・これより, 両者薬剤を使用中に脊柱管狭窄症を報告されたのは12例.
 6例が併用, 5例がSimvastatinのみ, 1例がEzetimibeのみ.
・これら報告の大半が偶発的な発見であったり, 薬剤への関連は不明瞭.
 しかしながら3例は有意な投薬と症状の関連性が認められた.
 3例とも投薬の中止と共に症状が改善している.
 2/3はCPKが正常範囲であった.

(International Journal of Risk & Safety in Medicine 24 (2012) 215–219)

ということで報告例は少ないですがありそうです.

あまり認知されておらず,  実はスタチンによる”筋性間欠性跛行”(と呼んで良いのかどうかわかりませんが)の症例を, 軽度の脊椎症やABI低下あればそれで診断してしまっていることもあるかもしれません.

特に末梢血管障害がある患者ではスタチンは高率で使用しているでしょう.

ちなみに, CPK上昇がなくても筋症はあります.
83名の外側広筋を生検(CMAJ 2009;181:E11-8)

健康男性
10
Age-matched control
10
臨床的Statin-associated myopathy(+), Statin>3wk前に中止
15
臨床的Statin-associated myopathyの既往(+), Statin内服中
29
4-20年間, Statin内服中の患者
19
・Current Statin Userの9.5%, Past Statin Userの9.0%で筋組織の障害を認めた.
・筋組織の障害はCPK低値, 正常でも認めており,CPK値は筋組織障害を反映しない可能性を示唆.

また, スタチン中止〜症状改善までの期間を評価したStudyでは,
69例のMild statin myopathyで原因薬剤を中止しフォロー.
・平均年齢 62.1±11.7歳, 男性71%
・スタチン使用期間は29.6±33.1ヶ月.
・フォローアップ期間は18.2±19.1ヶ月.
・症状は筋痛 91.3%, 倦怠感 68.1%, 筋力低下 68.1%.
・所見で筋力低下が認められたのは26.1%
 CPK 789.9±988.0, CPK正常は24.6%, CPK上昇は75.4%. CPK>1000は23.2%
中止後の症状, 所見の改善
アウトカム
%
症状不変
14.5%
症状軽快
13.0%
症状消失
72.5%
1M以内
24.0%
3M以内
62.0%
6M以内
90.0%
1y以内
96.0%
3y以内
98.0%
5y以内
100%
改善例と不変例の比較では, CPKの値, 脱力の有無で有意差無し
( J Clin Neuromusc Dis 2013;14:103–109)

中止後3ヶ月でも6割しか改善がない.
少なくとも半年は止めておきたいところ.

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