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2016年7月12日火曜日

高感度トロポニンのフォローで心筋梗塞を評価する

循環器科が常に24時間常在している病院ならばあまり困ることはないかもしれませんが,
そうではない環境では, 夜間の心筋梗塞疑い症例の扱いに困ることもあるかと思う.

明らかにST上昇があるSTEMIで, CK-MBも上昇していて・・・ということならば困ることなくすぐにオンコールを呼ぶか, 転院を考慮しますが, 問題はnon-STEMIで, CPKの上昇もなく, 他の心電図もあまり有意な所見もなく...

そして頼りのトロポニン値が正常〜ごく軽度の上昇程度の場合. これは困る.

そのような時に1時間、2時間、3時間後のトロポニン値を評価する方法が有用かもしれない.
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トロポニンにはC, T, Iの3種類認められる.
・Troponin Cは心筋, 骨格筋で同一. TとIは心筋と骨格筋で異なり, 心筋特異性Trop T, Iは心筋梗塞の診断に有用.
・心筋梗塞早期ではTroponin Iのほうがより高感度, 数日〜7日ではTroponin Tの方が高感度と言われている.
・また, Trop Tは溶血でも上昇する可能性がある.

トロポニンはその時のみ評価ではなく, 1時間後, 2時間後の変動をみることで, non-STEMIのルールイン/アウトに有用というデータが幾つかある

(国内で可能な検査は高感度トロポニンTであり, ここではTrop Tのデータを載せる)

高感度Trop Tの経時的フォローによるnon-STEMIの評価

胸痛でERを受診した872例を対象とし, 0hと1h後の高感度Trop Tを評価したprospective study. (Arch Intern Med. 2012;172(16):1211-1218.)
・436例でderivationを行い, ルールイン/アウト アルゴリズムを作成
・さらに436例でvalidationを施行.
・STEMIや透析患者は除外.
母集団

来院時のTrop T値の分布
ルールイン/アウトの基準と感度, 特異度

基準
Derivation
Validation
ルールアウト
0h値 <12ng/L
且つ 1h値Δ<3ng/L
感度 100%
NPV 100%
感度 100%
NPV 100%
判定保留
上下以外

AMIは8%
ルールイン
0h 52ng/L
もしくは1h値Δ
5ng/L
特異度 92%
PPV 69%
特異度 97%
PPV 84%
*国内の単位はng/mLであり, 上記数値 x 1/1000となる. 正常上限値は0.014ng/mL

ERでAMIを疑われた患者群を対象とし, 0h, 2h後の高感度Trop TをフォローしたProspective study (The American Journal of Medicine (2015) 128, 369-379 )
・STEMIは除外.
・1148例でDerivationを施行し, 517例でValidationを施行.

Derivation cohortの結果よりルールイン/アウトのためのアルゴリズムを作成.

基準
Derivation
Validation
ルールアウト
0h, 2hでのTrop T<14ng/L
且つΔ<4
感度 99.5%
NPV: 99.9%
感度 96%
NPV 99.5%
判定保留
上下以外
AMIは15%
AMIは15%
ルールイン
0h, 2hでのTrop T53
もしくはΔ
10
特異度 96%
PPV 78%
特異度 99%
PPV 85%
AMIが疑われる306例を対象とし, 0h, 3hにおける高感度Trop Tを評価したprospective cohort (JAMDA 14 (2013) 409-416 )
・306例中NSTEMIは38例(12%)
・0hと3hにおけるTrop Tの値, 変動値のカットオフと感度, 特異度

ルールイン/アウト アリゴリズム

基準
Derivation
Validation
ルールアウト
0h値 <23ng/L
且つ 3hΔ<3ng/L
感度 100%
NPV: 100%
感度 100%
NPV: 100%
判定保留
上下以外

AMIは1%
ルールイン
0h 108ng/L
もしくは3hΔ
7ng/L
特異度 86%
PPV 41%
特異度 88%
PPV 54%

発症6時間未満のACSを疑うER受診患者1282例を対象とし, 来院時, 1h, 2h, 4h, 14hで高感度心臓トロポニンT(hs-cTnT)を評価した前向きStudy. [Ann Emerg Med. 2016;68:76-87.] 
・前もって決めていたカットオフは,
 hs-cTnTが<12ng/L 且つ 1h後の変動が<3ng/Lならばルールアウト
 hs-cTnTが≥52ng/L または 1h後の変動が≥5ng/Lならばルールイン
 それ以外は経過観察とした.
・最終的にACSと診断されたのは16.6%.

hs-cTnTの判断基準において,
 ルールアウトされたのが63.4%. NPV 99.1%[98.2-99.7], Sn 96.7%[93.4-98.7]
 ルールインされたのが14.4%. PPV 77.2%[70.4-83.0], Sp 96.1%[94.7-97.2]
 経過観察群が22.2%. このうちACSは22.5%であった
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AMIかどうか迷う症例: 胸痛でERを受診したものの, ECG変化が乏しく, トロポニンも正常〜軽度上昇程度, エコーでも明らかな壁運動低下がない症例など.
 でも否定しきれないという患者では, その後1~3hで再度トロポニン評価するとよい.
 上記ルールアウト基準を満たせば, NPVは90%後半であり, 否定しやすい.
 一方で判定保留ではnon-STEMIである可能性は1-20%程度あり, 要注意
 ルールイン基準を満たした場合, non-STEMIの可能性は50%以上.

迷う症例ではフォローすることが重要といえる.

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