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2016年2月22日月曜日

肺炎後の肺癌リスク

肺炎治療後に胸部XPをフォローしていますでしょうか?
肺炎の経過をフォローするのには画像所見はあまり重要ではありません.
 肺炎の改善と画像所見の改善には幾分かズレがあり, 画像所見の改善は遅いです.
 従って, 経過が芳しくない場合, 非典型的な経過では画像所見をフォローしますが, 一般的な市中肺炎の経過では画像所見のフォローは必須とも言えません.

肺炎後の胸部XPのフォローの目的の1つに, 肺癌の評価という目的があります

3398名の胸部XPで診断された肺炎例のCohort.
(Arch Intern Med. 2011 Jul 11;171(13):1193-8.)
・治癒後90d, 1yr, 5yrにおいて, 胸部XPで発見された肺癌頻度を評価.
・>50yrが59%, 男性例52%, 喫煙者17%.

肺癌が発見されたのは, 1.1%@90d, 1.7%@1yr, 2.3%@5yr.
・発見までの期間は平均109d[27-423].
肺癌発見のリスクとなる因子は, 
 >50yr HR19.0[5.7-63.6], 男性 HR1.8[1.1-2.9], 喫煙者 HR1.7[1.0-3.0]
・発症後<90dにXP評価した1354例に限定すると, 2.5%で肺癌(+).
・さらに>50yrに限定すると, 2.8%で肺癌(+)であり, 
 高齢者の市中肺炎後のフォローとしてXPは考慮してもよいかもしれない.

イスラエルの大規模病院における後ろ向き解析において,
40歳以上で30 pack-years以上の喫煙歴を有し, さらに市中肺炎で入院した患者群を評価.
(The American Journal of Medicine (2016) 129, 332-338)
・上記のうち肺癌(転移を含む)の既往がない381例中,  退院後1年以内に肺癌を診断されたのは8.14%[5.9-11.2]

・肺癌の検出は, 3ヶ月以内で2/3

母集団のデータ:
・喫煙量の中央値は大体60pack-yearsと超ヘビースモーカーと言える.
・肺癌のリスクはCOPDの有無に関わらない (COPDは肺癌(-)群の52.2% vs 肺癌群の60.6%)
・肺癌の家族歴の有無は数値として差があるが, 有意差は認めない. 肺癌の家族歴がある患者群が少なすぎる為.

肺炎の部位と肺癌のリスク
上肺野の肺炎では肺癌のリスクが高くなる.

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とても興味深い結果.
喫煙者(30 pack-yearsを超える)で, 40-50歳以上で, さらに上肺野の市中肺炎症例では,
肺炎改善後の胸部レントゲンフォローが必須と言えるかもしれない.
(特に入院症例では)

肺炎改善後は特に必要性がなければそのままフォローも終了することも多く, 結構抜け落ちるかもしれないマネージメント.

健康診断で年1回の胸部XPを評価している場合はまだ良いでしょうが,
それを確認しつつ, 上記を満たす患者さんでは, 少なくとも1ヶ月後, 3ヶ月後くらいには胸部XPをとりに来てもらう必要があるかもしれません.