ブログ内検索

2016年10月5日水曜日

喘息発作にアジスロマイシンが効く?

1-3歳の小児で繰り返す喘息様症状がある患者158例を対象としたDB-RCT.
(Lancet Respir Med 2016; 4: 19–26 )
患者はマクロライドアレルギーや, 心, 肝, 神経, 腎疾患がある患者
・臨床的に肺炎を疑う患者(RR≥50, BT≥39度, CRP≥5.0mg/dL)は除外
・3日以上症状が持続した群をアジスロマイシン 10mg/kgを3日間 vs プラセボに割り付け, 症状の持続期間を比較した.

アウトカム
 症状はプラセボ群で7.7日間, アジスロマイシンで3.4日間と有意に改善が早い.

サブ解析では
・CRP値別では, CRP<0.8mg/dL群でより短縮効果が良好.
・発熱も<38度群で有意に短縮する.
・また細菌感染も検出されていない群の方が短縮効果を認めている.
 ただしH. Influenzaeが検出された群では抗生剤投与の方が早い
・検出されたウイルス別では,
 Rhinovirus, RSVが陰性例, Enterovirusが陽性例で有意な症状の短縮が認められた。

アジスロマイシンには抗菌作用以外に気道炎症を抑制する効果があるのではないか、と著者は推測している.

マウスで人為的に気道炎症を誘発しアジスロマイシン投与 vs プラセボ投与群で比較した研究では
 投与開始17日目での気道炎症を評価したところアジスロマイシン投与群で有意に気道炎症の改善が認められた.
 炎症は非細菌性, 感染性の炎症であり, アジスロマイシンに抗炎症作用がある可能性が示唆.
(CHEST 2009; 136:498–506) 
IL-1とnon-canonical inflammasome activationを抑制するという報告もある
(Sci Rep. 2015 Jul 8;5:12016. )


COPD急性増悪時にアジスロマイシンとAMPCを比較したRCTでは両者で差は認めない結果であった(J Bras Pneumol. 2007;33(1):43-50)

成人例における気管支喘息症例に対するDB-RCT, AZALEA trialが発表(2016.10.5 UpDate)
AZALEA trial: 成人例の喘息患者で, 喘息発作で受診し, 全身ステロイド投与を必要とする患者群を対象としたDB-RCT
(Azithromycin for Acute Exacerbations of Asthma The AZALEA Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med.)
・56-65歳では喫煙歴 ≥20 pack-yがある患者は除外, >65歳では≥5 pack-yの喫煙歴がある患者は除外
・患者は喘息発作発症48時間以内
・除外項目は28日以内の抗生剤使用歴, ICU管理が必要となる発作, PSL 20mg/d以上のステロイド長期使用歴, QT延長, 不整脈の既往, 日代償性心不全の病歴, QT延長リスクがある薬剤の併用.

上記を満たす患者群に通常の喘息治療に加えて
 AZT 500mg/dを3日間継続 vs Placebo群に割り付け, Day 5,10における症状を比較.

母集団:

アウトカム
・症状の重症度, AQLQの変化, 改善は有意差を認めず.

------------
成人例の喘息発作ではアジスロマイシンの優位性は認められない結果であった.

ではコントローラーとしてはどうか?
AZMATICS trial: 成人のpersistent asthma 97例を対象としたDB-RCT
( J Am Board Fam Med 2012;25:442– 459.) 
・このうち38例でアジスロマイシン群, 37例でプラセボ群に割り付け22例はopen-labelのアジスロマイシン群に割り付け.
・アジスロマイシンは600mgを最初の3日間使用し, 以後は600mgを毎週1回投与, 合計12週間継続
・アウトカムは12ヶ月後の喘息コントロールとQOL.

アウトカム:
・DB-RCT群では, アジスロマイシン, プラセボで喘息コントロール, QOLに有意差なし.

AZISAST trial: 重症喘息で発作を繰り返す109例を対象としたDB-RCT
(Thorax 2013;68:322–329.)
・患者が重症喘息で, 高用量ICS+LABAの併用が必要な群
・ICS+LABA併用に加えて少量アジスロマイシン投与群 vs プラセボ群に割り付け, 6ヶ月継続
・アジスロマイシンは250mg/日を使用
 最初の5日間は連日内服し, 以後は週3回内服を継続
・26週間以内の喘息発作, 下気道感染症リスクを比較.

アウトカム: 両者で喘息発作頻度は有意差なし.
・ただし, 非好酸球性重症喘息発作の頻度はアジスロマイシン群で有意に低下する結果であった.
・呼吸機能検査にも両者で有意差はない

とうことでコントローラーとしての効果はない

気管支喘息発作の急性期治療としてアジスロマイシンが加わるかどうかはまだよくわかりません.