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2015年8月5日水曜日

リウマチ熱

リウマチ熱
Lancet 2012; 379: 953–64, BMJ 2015;351:h3443 

A群溶連菌性の咽頭炎に続発する関節, 皮膚, 中枢神経, 心臓に自己免疫性の炎症を来す病態
 感染後 3wk程度で発症することが多い.
 症状は多発関節炎, 心炎, 舞踏様運動, Erythema marginatum(有縁性紅斑), 皮下結節など.
 発症年齢のピークは5-14歳.
 世界で毎年500000人の急性リウマチ熱患者がおり, 慢性リウマチ性心疾患患者は1500万人に及ぶ.

心炎は感染後数週後に出現する.
 リウマチ熱の50%で合併し, 弁自体の炎症であることが多い.
 また, 心外膜炎, 心筋炎を伴うこともある.
 S1の減弱や夜間の頻脈,  MRを示唆する汎収縮期雑音のチェックが大事.
 最も多い弁膜症はMR. 
 炎症が進行すると癒合しMSとなる.
 ARはMRに合併することが多いが,  単独でもあり得る.
 右心系の弁膜症は単独では先ずあり得ない.
 無症状で弁膜症が進行するタイプもあり, 臨床症状のみでは見落とす可能性が高い.
 リスクがある地域では心エコーでのスクリーニングが推奨される.

関節炎は最も早期に出現する症状
 60-80%で認められる. 有痛性, 遊走性の中, 大関節炎.

Sydenham’s choreaは晩期に出現する症状
 溶連菌感染後1-6ヶ月後に出現する舞踏様運動.
 舌の震える様な運動を伴う.
 頻度は7-28%と様々.
リウマチ熱の診断: Jonesクライテリア
2 major もしくは 1 major + 2 minor + GAS感染の証明で診断

Majorクライテリア(Low risk populationにおける)

criteria

心炎
50-65%の患者が臨床的に心炎(弁膜症)を認める.
心外膜炎, 心筋炎も合併しえる.
心不全となるほどの重度の症状は20%
30%
は軽症であり, エコーを行わないとわからない
数週〜数カ月で出現するため, 初期評価が正常でも2−4週後にエコーを繰り返す
関節炎
遊走性, 左右非対称性の多発関節炎で, 主に大関節で生じる
NSAID
に反応するため, マスクされる可能性がある
舞踏運動
15%で認め, 特に女性や学童で多い.
レンサ球菌感染後 数カ月経って生じることが多く, その際は他の炎症兆候は認めない
~60%
が弁膜症を合併, 舞踏運動は20%が長期間残存する
舞踏運動は睡眠中は軽快する.
皮下結節
<5%のみと稀
<2cm
の小結節で硬く, 無痛性, 可動性の結節が肘, 手首, , 足関節の伸側に生じる
稀にアキレス腱や脊椎に生じる
炎症早期に出現し, 2週間程度持続
有縁性紅斑
<5%のみと稀
体幹, 前腕, 下肢に生じる環状紅斑. 辺縁が隆起する丘疹もある
数週間持続する
掻痒感や疼痛は認めない

Minorクライテリア(Low risk populationにおける)

criteria

関節痛
関節炎がある場合は関節痛はcriteriaとして含まない
NSAID
でマスクされる可能性がある
疼痛は変動性で, 数日〜数週持続
1度房室ブロック
心炎がある場合はcriteriaとして含まない
発熱
38度の発熱で有意と判断する。
NSAID
やアセトアミノフェンでマスクされる可能性もある
発熱には様々なパターンがある
炎症反応
ESR 50mm/hとなる例が多い. 30mm/hを有意ととる
ESR
亢進は数週間持続する。
CRP
も上昇するが, ESRよりも改善が早い
GAS感染の証明
咽頭培養, GAS抗体検査(DNAase B, ASOT)で評価


リウマチ熱と鑑別が必要な疾患



リウマチ熱の治療
リウマチ熱を疑った場合は対症療法と, 咽頭培養採取後に抗生剤を開始する.
 抗生剤はPenGなど, βラクタム系で10日間
 ペニシリンアレルギーがある場合はエリスロマイシンを使用
リウマチ熱患者では抗生剤の予防投与も必要となる
 GASの再感染, リウマチ熱の再発を予防する目的
 ペニシリンの静注を3−4週毎に行う.

心炎に対する対応
 対応は心不全や弁膜症に対する対症療法が主となる.
 ACE阻害薬や利尿薬, 血管拡張薬など
 重度の弁膜症では外科手術も考慮.
 手術は急性期が過ぎてから行う方が良い
 アスピリンやステロイドは心予後改善効果は乏しいとされているが, Expart opionでは心炎急性期で心嚢水や重症例に対するステロイドは抗炎症作用が期待できるという意見もある.

舞踏運動に対する対応
 決まった治療はないが, バルプロ酸やカルバマゼピンは有用である報告がある.
 ハロペリドールや他のNeurolepticは錐体外路兆候のリスクとなるため, 避けるべき.
 IVIGや血漿交換, ステロイドも有用との報告がある.
 舞踏運動を認めるリウマチ熱では心炎の合併も多いため抗生剤投与も必要.

関節炎, 関節痛への対応
 関節症状は疼痛が強いため, NSAIDによる鎮痛は重要
 ただし, NSAIDを使用すると症状がマスクされるため, 診断がつくまではアセトアミノフェンの方が良い.

リウマチ熱の予防投与
Primary prevention; 溶連菌性咽頭炎の早期治療.
 M-type-specific vaccineの開発もされているが, 地域限定の溶連菌のみ効果を示し, まだ実用には向かない.
Secondary prevention; 溶連菌再感染の予防.
 再感染は慢性リウマチ熱を引き起こす可能性がある.
 リウマチ性心炎の予防, 増悪予防にもなる.
 初回のリウマチ熱後, 定期的な抗生剤筋注 or 経口投与が必要
 抗生剤による予防; 5-10年間の予防投与が必要.