(Mayo Clin Proc. 2015;90(8):1125-1130 )(Cardiovasc Diagn Ther 2015;5(1):37-48 )
虚血性心疾患の原因1つで若年女性で特に多い疾患
冠動脈の解離や壁内血腫による狭窄を呈する.
ACS全体の3-4%を占める. また、<50歳のACSでは8.7%, さらに若年女性のACSでは10.8%を占める
妊娠関連MIでは最も多い原因.
報告では74-92%が女性例. 平均年齢は42-52歳
非動脈硬化性冠動脈解離 168例の解析より, 年齢分布 (Circ Cardiovasc Interv. 2014;7:645-655.)
冠動脈解離はnon-STEMI, STEMI, UAP, 心停止など, 様々なACSのタイプを呈する.
非動脈硬化性冠動脈解離 168例の解析より (Circ Cardiovasc Interv. 2014;7:645-655.)
解離による狭窄のパターンは2つ
Intraluminal hemorrhage: 血管壁を栄養する血管からの出血によるもの
Intimal tear: 冠動脈内膜に損傷が生じ, 解離するタイプ. (Cardiovasc Diagn Ther 2015;5(1):37-48 )
Intimal tear: 冠動脈内膜に損傷が生じ, 解離するタイプ. (Cardiovasc Diagn Ther 2015;5(1):37-48 )
非動脈硬化性冠動脈解離の誘因
結合織障害, 炎症性疾患, 妊娠, ホルモン治療, 冠動脈攣縮, 精神的, 身体的ストレス, 出産などが冠動脈解離の誘因となることがわかっている.
(Cardiovasc Diagn Ther 2015;5(1):37-48 )
非動脈硬化性冠動脈解離 168例の解析より, 背景疾患の頻度 (Circ Cardiovasc Interv. 2014;7:645-655.)
FMDとは非動脈硬化性, 非炎症性の血管異常を示す病態で, 主に小〜中サイズの筋性動脈に影響を来す. 若年女性に多い.
冠動脈解離患者では他の血管に動脈瘤や解離所見、FMDを認める頻度も高い(Am J Cardiol 2015;115:1672-1677)
ACSであるが, 動脈硬化のリスクが乏しい若い女性例で冠動脈解離を疑う(特に40−50歳台)
通常上記患者群の胸痛ではACSを疑うことは少ないため念頭に置いておくことが重要.
冠動脈解離を疑う状況のまとめ
≤50歳女性のACS
動脈硬化リスクがないACS
冠動脈に動脈硬化性変化を認めないか, 軽度のみのACS
出産後のACS
結合織障害やFibromuscular dysplasiaの既往がある患者のACS
膠原病などの炎症性疾患がある患者のACS
ストレスが誘因となるACS
冠動脈解離の診断
冠動脈造影所見は主に3タイプに分類
Type 1: 血管壁も造影されるタイプ(偽腔が造影)
この所見があれば冠動脈解離の診断が可能.
Type 2: びまん性の狭窄所見を呈するタイプ
びまん性で辺縁がなだらかに狭窄している所見
狭窄範囲は>20mmと広範囲に及ぶ
Type 3: 動脈硬化性病変に類似した狭窄像
動脈硬化との鑑別点は,
・他の血管に所見がない点
・11−20mmと比較的広範囲
・Hazy stenosis
・線状の狭窄像
Type 1: 血管壁も造影されるタイプ(偽腔が造影)
この所見があれば冠動脈解離の診断が可能.
Type 2: びまん性の狭窄所見を呈するタイプ
びまん性で辺縁がなだらかに狭窄している所見
狭窄範囲は>20mmと広範囲に及ぶ
Type 3: 動脈硬化性病変に類似した狭窄像
動脈硬化との鑑別点は,
・他の血管に所見がない点
・11−20mmと比較的広範囲
・Hazy stenosis
・線状の狭窄像
(Cardiovasc Diagn Ther 2015;5(1):37-48 )
Type 1ならば冠動脈解離と診断可能であり,
Type 2, 3では血管内エコーやCT, MRIなど他の画像検査、またはフォローを行う
Type 2, 3では血管内エコーやCT, MRIなど他の画像検査、またはフォローを行う
非動脈硬化性冠動脈解離 168例の解析より, 冠動脈造影所見の頻度 (Circ Cardiovasc Interv. 2014;7:645-655.)
罹患血管の分布 (Circ Cardiovasc Interv. 2014;7:645-655.)
非動脈硬化性冠動脈解離の治療
冠動脈解離ではPCIの成功率は低下する.
PCI失敗率は~53%との報告もあり.(Circ Cardiovasc Interv. 2014;7:777-786.)
血行動態不安定ならばPCI, CABGを行う必要があるが安定していればβ阻害薬, 抗血小板薬(1剤), スタチンを使用し経過観察する方法もある.
(Cardiovasc Diagn Ther 2015;5(1):37-48 )
長期的なマネジメントでは心臓リハビリやうつ症状への対応が必要
若年女性でACSを経験した場合, その後抑うつ症状や不安症状が認められることが多いため症状を拾い上げ, 対応する.
アスピリンも併用. 冠動脈解離によるACS予防に有用かどうかは不明であるがACS全体の予防効果を期待して使用する.
LV機能低下患者へはβ阻害薬やACE阻害薬を使用
冠攣縮の関連が疑われる場合(ストレスが誘因となる解離)ではCa-ch阻害薬が推奨される.
妊娠や出産が誘因の場合は, 今後の妊娠, 出産は避ける必要がある
(Mayo Clin Proc. 2015;90(8):1125-1130 )