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2015年4月15日水曜日

炎症性腸疾患と大腸癌

[炎症性腸疾患の悪性腫瘍リスク、フォロー]
 潰瘍性大腸炎では年間0.1-0.12%で、クローン病では年間0.07%大腸癌を発症する。長期間、広範囲の腸炎では大腸癌発症リスクも高い。(N Engl J Med. 2015 Apr 9;372(15):1441-52.)

大腸癌発症のリスク因子
 長期間の罹患、若年からの罹患(<15歳の発症でリスクは4倍)。
 広範囲の腸炎(潰瘍性大腸炎において肝湾曲部まで病変があればリスクは大きい)
 原発性硬化性胆管炎との合併(潰瘍性大腸炎で20年で33%、30年で40%で大腸癌合併)
 結腸、直腸癌の家族歴
 炎症が高度
 逆流性回腸炎
(World J Gastroenterol. 2012 Aug 7;18(29):3839-48.)

炎症性腸疾患における大腸癌のスクリーニング
  • UC、CD診断時には全例で大腸内視鏡を行う。
  • 初回内視鏡での所見、炎症性腸疾患の状態、合併症の有無より悪性腫瘍リスクを評価し、その後のフォロー間隔を決定する(表)。
(表) 悪性腫瘍リスクに応じたフォロー間隔
リスク

下部消化管内視鏡検査の期間
低リスク群
全結腸型UCで内視鏡, 組織所見的に活動性病変を認めない
左側結腸型UC
CDで結腸の<50%の罹患
5年毎
中リスク群
全結腸型UCで以下のいずれかを満たす
内視鏡, 組織所見的に軽度の活動性病変
炎症後ポリープを認める
第一親等に大腸癌の家族歴(>50歳で発症)
3年毎
高リスク群
全結腸型で以下のいずれかを満たす
内視鏡, 組織所見的に中等度以上の活動性病変
5年以内の腸管狭窄歴
5年以内の異形成所見
原発性胆汁性硬化症の合併、治療歴
第一親等に大腸癌の家族歴(<50歳で発症)
1年毎
(World J Gastroenterol. 2012 Aug 7;18(29):3839-48.)

  • 初回内視鏡時に評価困難な異形成を認めた場合は6-12ヶ月後に再検査を行う。
  • 初回内視鏡時に低悪性度~高悪性度の異形成を認めた場合
     単一~少数の異形成で内視鏡的切除術が可能ならば切除を行い、6ヶ月後に再検査。
     複数の異形成、内視鏡切除術が困難な低悪性度では6ヶ月後に再検査。
     複数の異形成、内視鏡切除術が困難な高悪性度では大腸切除術を行う。
     6ヶ月後の内視鏡再検査にて再度異形成が認められた場合は大腸切除術を考慮する。
     6ヶ月後の内視鏡再検査にて再度異形成が認められなかった場合は以後1-2年毎にフォロー。
  • 初回内視鏡時に進行性癌が認められた場合は大腸切除術を行う。(N Engl J Med. 2015 Apr 9;372(15):1441-52.)