市中肺炎に対するステロイド投与のStudyは2015年あたりより多く発表されている。
例えば: http://hospitalist-gim.blogspot.com/2015/02/blog-post_18.html
他には 市中肺炎785例を対象としたRCT: Lancet 2015; 385: 1511–18 など.
9 RCTs, 6 cohortsのMeta-analysisでは (CHEST 2016; 149(1):209-219)
・ステロイド投与量で多いのはmPSL 30mg/dを7日間
・市中肺炎に対するステロイド投与は, 死亡リスクを改善させない結果.
肺炎の死亡リスク RR 0.72[0.43-1.21] 重症肺炎の死亡リスク RR 0.72[0.43-1.21]
・ステロイド投与はARDSのリスクを軽減する効果はある ARDSリスク RR 0.21[0.08-0.59]
6 RCTsのMetaでは, (Clinical Infectious Diseases® 2018;66(3):346–54)
・ステロイド投与により死亡リスクは変わらない(aOR 0.75[0.46-1.21])
・状態安定化までの期間は1日短縮(-1.03[-1.62~-0.43])
・入院期間も1日短縮(-1.15[-1.75~-0.55])
・高血糖リスクは上昇(aOR 2.15[1.60-2.90])
・ 市中肺炎関連再入院率も上昇(aOR 1.85[1.03-3.32])
といった結果があり,
これまでは死亡リスクは低下させないものの, 重症化リスクを低下させたり,
入院期間の短縮や挿管管理リスクの低下効果が期待できる, というような認識であった
今回ICU管理となるような重症CAPにおけるステロイド投与のStudyが発表
CRICS-TriGGERSep: ICU管理が必要なCAP症例を対象とし, Hydrocortisone投与群 vs Placeboに割り付け比較したDB-RCT.
(N Engl J Med. 2023 Mar 21. doi: 10.1056/NEJMoa2215145.)
・重症例の定義は以下の1つ以上を満たす:
人工呼吸器管理(PEEP ≥5cmH2O)
HFNCによる酸素投与: FiO2 ≥50%, P/F <300
マスクによる酸素投与: P/F <300
PSI ≥130, Group Vに分類されたCAP
・除外項目: 気管挿管を希望しない患者, インフルエンザ肺炎, 敗血症性ショック症例.
・Hydrocortisoneは200mg/d, 4-8日継続し, その後減量.
投与期間は臨床的改善の有無で決められた.
合計8-14日間投与.
・ 28日間の死亡リスクを比較した
StudyはN=800の時点で, 死亡リスクに差が認めたために中断.
アウトカム:
・28日死亡率は, Hydrocortisone投与群では6.2%[3.9-8.6]
Placebo群では11.9%[8.7-15.1], AD -5.6%[-9.6~-1.7]と有意にHydrocortisone群で低下する
・人工呼吸器管理がされていなかった患者群では,
その後呼吸器管理となったのは18.0% vs 29.5%, HR 0.59[0.40-0.86]
・昇圧薬未使用群では, その後昇圧薬を使用したのは 15.3% vs 25%. HR 0.59[0.43-0.82]と, これらも有意にHydrocortisone群で重症化リスクの低下が期待できる.
・消化管出血リスクや感染症リスクは両者で有意差なし
・インスリン使用量はステロイド投与群で増加する
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重症市中肺炎ではステロイドの投与により予後の改善が期待できる.
これまでも臨床的な改善効果などは認められていたものの, どのような患者群で投与すべきかが明確ではない問題点があったが, これにより投与により利益が期待できる患者群がある程度わかってきたかもしれない.