原因不明の大量心嚢水貯留があり, 穿刺を行い排液.
その後の経過は良好で, 退院となった高齢男性の患者さん.
心外膜炎の精査で自己免疫性疾患の可能性はないですか?との相談.
元々元気で特に既往もなく, 今回の検査ではANA 160(Homo)のみ. 特異抗体は全て評価されて陰性を確認.
穿刺も一度おこなってから再貯留もなく経過している.
身体所見や病歴でも膠原病や自己免疫性疾患を疑う所見は無い.
色々相談し, 可能性低いこと, 多いのはウイルス性ですということなど説明していると,
「そういえば, コロナ陽性になったんですよ、その時!」との話(紹介状には一言もそんなこと書いてない...)
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COVID-19関連の心外膜炎
英国における16歳以上のSARS-CoV-2感染例, ワクチン接種者と心筋炎/心外膜炎リスクを評価
(Nat Med. 2022 Feb;28(2):410-422.)
・ワクチンはChAdOx1, BNT162b2, mRNA-1273の3種類で評価.
接種前後の日数別に上記疾患発症リスクを評価.
・SARS-CoV-2検査陽性例は検査陽性日を診断日とし, それからの発症リスクを評価した.
ワクチンや感染とリスク
・心筋炎のリスクはワクチンの初回投与, 2回目投与で有意に上昇 することは有名だが,
SARS-CoV-2感染でも上昇し, そのリスク上昇の程度は感染の方が高い(IRR 30以上)
・心外膜炎や不整脈は感染例でリスクが上昇する
ワクチン接種ではこれらのリスク上昇はほぼない(一部で不整脈が上昇している)
100万人あたりの増加症例数
・心筋炎はワクチンでは100万あたり~10例ほど増加する. COVID-19感染例では40例も増加.ワクチンでの上昇例は<40歳で特に多い傾向がある.
・心外膜炎はワクチンではほぼ上昇を認めない. 感染例でのみ上昇する. 100万人あたり6例.
不整脈も感染例で増加.
COVID-19感染による心外膜炎症例のSystematic review
(Cureus. 2022 Aug 12;14(8):e27948.)
・COVID-19感染と心外膜炎(心筋炎合併含む)の症例報告33例を抽出.
・症状は胸痛が60.6%, 発熱は51.5%, 呼吸苦 51.5%, 咳嗽 39.4%の頻度
・治療の多くはコルヒチンとNSAIDで行われ, 心嚢穿刺など処置が必要となった例が13/33
ちなみに, ワクチンによる心筋炎はCOVID-19に限ったことではなく, 基本的に色々なワクチンで報告がある.
ワクチンによる心筋炎リスクを評価したMeta
(Lancet Respir Med 2022; 10: 679–88)
・ワクチン全体による心筋炎発症率は100万回あたり33.3[15.3-72.6]例.
・COVID-19ワクチンと他のワクチンで差はない.
COVID-19ワクチン: 18.2[10.9-30.3]
非COVID-19ワクチン: 56.0[10.7-293.7], p=0.20
・COVID-19ワクチンでは, 男性例, 30歳未満, mRNAワクチン, 2回目接種後が有意にリスクが高い.
・発症率と重症度は別物なので、そこは勘違いしないこと
(感染による心筋炎のほうが基本的に重篤となる)