VB12はDNA合成に重要な栄養素であり, 成人の1日必要量は1-2µg/d, 最近は3-4µgが推奨
食事中には7-30µg/日が含有され, この内1-5µgが吸収される.
貯蔵量は2-5mg/bodyであり, 従って摂取や吸収の低下〜欠乏までは3-5年かかる
欠乏の背景疾患には消化管障害や外科切除後, メトホルミンやPPIなどの薬剤による吸収効率の低下が主となる.
従って補充方法も経口よりもIMが好まれてきたが, いくつかのRCTでは経口補充でも十分との報告がある.
2018年にコクランが経口とIMを比較した3つのRCTをMeta-analysisしたが, Study間に方法の差が大きく, またNも少ないため, より良質な研究が望まれるとの結論.
(Cochrane Database Syst Rev. 2018 Mar 15;3(3):CD004655.)経口Vit B12と筋注を比較したRCT(OB12)
(BMJ Open. 2020 Aug 20;10(8):e033687.)
・スペインのPrimary care settingの多施設研究
. ≥65歳のVB12欠乏症例283例を対象とし, 経口補充群とIM投与群に割り付け比較.
・患者はプライマリケアを何かしらの理由で通院中の高齢者で, 血液検査にてVB<179pg/mLを認めた群
・除外項目: VB12欠乏の治療中, 重度の神経/精神症状, 視神経萎縮, 葉酸欠乏合併, Stage 4 CKD, 吸収不良性疾患/手術の施行歴(十二指腸-回腸に影響が及ぶ疾患や手術, 炎症性腸疾患, Celiac disease), 慢性膵炎, 骨髄異形性/血液悪性腫瘍, 血友病/他の凝固障害で注射が困難, 重度の全身性疾患, HIV, HBV, HCV, 使用薬剤への過敏など
・IM群では1mgを隔日投与 1-2週間. 1mg/wkを3-8週目, 以後1mg/月を9-52wk継続.
・経口投与群では1mg/dを1-8wk投与し, 以後1wk/週を9-52wk
母集団
・内因子抗体は10.8%
・PPI, メトホルミン使用例は 半数近い.
・胃切後症例はほぼ無し
アウトカム: VB12 ≥211pg/mL達成
・治療期間中のVB12上昇は両群で有意差は認めない.
経口は連日投与の8wkで上昇は良好だが, 週1回投与となると下がる傾向がある
二次アウトカム
・QOLやVB12欠乏関連症状の頻度も両者で変わらず.
しかしながらIM群ではBaselineの半数に減っている一方で 経口群ではN自体変化がない.
・そもそも症状/所見を認める患者が少ない
この経口維持量としての1mg/wkというのは妥当なのか?
・≥70歳の120例のビタミンB12欠乏患者に対して, 2.5, 100, 250, 500, 1000µg/日を16日間投与し, メチルマロン酸濃度を評価したRCT.(Arch Intern Med. 2005;165:1167-1172)
・投与量に依存してVB12やVB12欠乏のマーカーとなるMMA, ホモシステインの変化は良好に認められる.
・補充時の投与量は少なくとも≥1000µg/日とすべきだし, 維持量としてある程度必要な可能性がある. 少なくとも1g/wkはやや少ない可能性がある.
でも維持量としては連日の継続は不要なのであろう(よく見るやつ).
胃切除症例は?
26例の胃全摘を行った患者群を対象に, 全例でBV12 1mg/日を経口投与を行い, 3ヶ月毎に長期間フォロー (GE Port J Gastroenterol. 2018 Apr;25(3):117-122. )
・患者は64歳[29-79]で, 胃全摘後65ヶ月[3-309]経過していた.
・Study導入時にVB12のIM投与をしていた例が17/26.
残り9例はVB12投与はされていなかった.
・VB12正常例は25/26
・経口補充に切替/開始後からも VB12値は上昇し, 維持が可能
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高齢者におけるビタミンB12欠乏の補充では, 吸収する小腸が使用できれば基本的に経口内服で補充は十分に可能である.
内因子抗体や胃切後でもそれは変わらない
補充量は1mg/日程度の使用量でよく, まず2-3ヶ月継続し, その後は減量が可能.
ただし週1回程度の使用では再度欠乏するリスクがあるので, その点は注意. 個々に合わせて減量がBetterか.
例えば、胃切除や内因子抗体例では連日で継続とか。そうでなければ週3回〜週1回とか。
1日1錠で見るとか(500µg)