献本御礼
レジデントのための内科診断の道標
小嶌祐介先生は, 京都の洛和会丸太町病院 総合診療科の上田剛士先生の元で総合診療を学び, 現在は市立奈良病院の総合診療科で週に2回の外来をしておられます.
自分も洛和会音羽病院, 丸太町病院で上田先生に教えを受けていたので, 同門といっても差し支えないでしょう.
その影響もあって, この本はすごく馴染みがある, 親和性が高いように感じました.
上田先生の臨床は, データをしっかりと把握し, それを目の前の患者に生かして臨床を行い, 自らの経験を蓄積する, という流れがあります. 丸太町病院に集う医師はそのような姿勢に陶酔, 憧れてその門を叩きますが, 実際そのスタイルを習得し, その後も長く, 丸太町病院を離れても突き詰め続けられる医師はそこまで多くありません.
小嶌先生の本を読んで, これがそれを突き詰めた先生の行き着く先なのだということを実感しまた. 素直にすごいです.
本の内容
EBMを理解するための感度/特異度の説明や批判的吟味などの基本的な内容から始まり, 咳嗽や呼吸困難, 腹痛, 意識障害といった主訴別の各論に入ります.
文章は非常にシンプルでわかりやすく, 読みやすい割には重要な点はしっかり抑えられています.
EBMを理解するための序章なんかはまず研修医は10回は読み込むべき内容です.
方針を変えない検査は意味がない, 検査のStudyは対象集団が何かを意識しないと実臨床で使えない, 新しい検査はどのタイミングで行うべきかを意識して採用するといった記載はシビレます.
各論では症例をベースとし, その疫学, 身体所見の感度/特異度, 検査に続きます. 緊急的な対応が必要となる意識障害や吐血下血などは実臨床に則して緊急対応, 重要な疾患からの鑑別が意識して記載されています.
記載内容は主に診断とその疾患の概要の解説までであり, 治療内容まではカバーされていません. それでも情報量は凄まじく, この内容を全部知っているぜ なんて人は恐らくはいないでしょう.
特に読むのを勧めたいのは初期〜後期研修医です.
まずしっかり読み込んで, この内容を頭と体に叩き込み, 生かしつつ臨床をしてみてください.
その状態で患者を診る, 診療するという経験を積み重ねることが優れた臨床医への成長につながります. 知識がないまま闇雲に臨床をしていても, 変なBiasがはいって自惚れた医師になるだけです.
是非、良い経験を積むために, この本を有意義に使ってください.
心から超おすすめします.
最後に,
小嶌先生は夫婦共に医師で, 子供は三人.
私も夫婦共に医師で子供は二人.
この本を書くのに3年費やしたと聞きました. この分量を1人で. 3年間.
瞼を閉じるとそのキツさが目に浮かびます. 僕もあの地獄の思い出が蘇ります.
PCに向かいすぎて, 坐骨神経痛を発症し, 歩けなくなったあの思い出. 毎日毎日仕事が終わった後に日付が変わるまで書き続けたあの思い出...
お疲れ様でした. しばし休んでください.
どうせ2年後あたりに改訂の話きますから. 間違いなく.