最近胸鎖関節炎をよく診療する, というかよく気づく.
PMRという診断で治療されたが難治性であり, 紹介. → PMRらしさがなく, 胸鎖関節の炎症所見や症状が強く, 治療に難渋した結果, 最終的にADAで治療し改善した症例. 見込み的にはSpAに近い.
掌蹠膿疱症+手指の疼痛で, 胸鎖関節にも圧痛があり → これはPAO/SAPHO
PMRの経過で, 所見もPMR. 画像で胸鎖関節の軟部組織が腫脹. エコーで関節炎 +
こんな感じのプレゼンでおおいですが, 過去を思い起こすと, 化膿性関節炎, 淋菌, CRMOなど
色々な疾患が思い起こされる.
とくにここ数ヶ月, ちょっと胸鎖関節には注目している.
それは, PMRで意識すると結構いるな, という感覚から.
症状はあまり訴えない. 圧痛も, 運動時も前胸部の痛みはないことが多いが,
エコーやCTをよく見ると胸鎖関節炎がある.
そこでちょっと論文を探ってみた.
臨床的には無症候なので、あまりデータはなさそう. というか無い.
なので, PMR症例でのPET/CTを評価した論文を漁ってみた.
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PMRに対するTCZ治療を前向きに評価したTENOR trialより
(Eur J Nucl Med Mol Imaging (2016) 43:773–779)
・胸鎖関節の集積異常は72%と多い.
PMRでPET/CTが評価された15例;
(Radiol Oncol 2017; 51(1): 8-14.)
・関節は肩周囲が15/15, 股関節周囲が15/15, 胸鎖関節周囲が14/15と高頻度
・関節外は, 坐骨結節滑液包(Ischiogluteal bursa)が14例.
関節炎でPET/CTを評価された60例(内14例がPMR)の集積部位
(Annals of Nuclear Medicine (2018) 32:573–577)
・PMRの88%で胸鎖関節への集積があり, 他疾患よりも有意に多い.
2017年のReviewにおけるPMRの集積部位:
(Br J Radiol 2017; 90: 20170198. )
・胸鎖関節への集積は43-93%
PMRに対するPET/CT所見を評価した2021年のMeta-analysis
・PMRの診断に関連する所見, 集積部位は
股関節, 大転子, 棘突起間滑液包, 坐骨結節,
肩, そして胸鎖関節(LR 2.3)
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実臨床の感覚も合わせると, PMRというのは,
「胸鎖関節炎を認めることが多い疾患だが, 臨床症状として同部位の痛みを訴えることが少ない」
しばしば胸腹部CTでうつった胸鎖関節や, エコーで意識的に評価した場合, 胸鎖関節の軟部組織の肥厚やPD亢進が拾える.
棘突起間滑液包の炎症や, 肩周囲の滑液包炎とともに, 「PMRらしさ」を拾い上げる一つのヒントとして日常診療で意識している.