脳出血後の症候性てんかんのリスクや予防投与については
脳出血後の予防的抗てんかん薬を参照
基本的には予防投与は推奨されていないが, エキスパート診療では投与されているところはよく目にする.
出血の部位やタイプでもリスクは異なるため, 適応を考慮する必要がある.
この効果を評価したRCTは少ない〜なかった.
今回レベチラセタムによる予防投与を評価したRCTが発表
(Lancet Neurol. 2022 Sep;21(9):781-791.)
PEACH trial: 頭蓋内出血後の患者における Levetiracetamの予防投与を評価したDB-RCT
・患者は18歳以上の発症24時間以内のテント上脳出血患者.
・NIHSS ≥25, 外傷, 血管奇形, 脳梗塞による出血, 腫瘍による出血は除外. 抗てんかん薬使用中, てんかん既往例, 授乳婦/妊婦, 重度のうつ病, 精神病の既往なども除外された.
・患者はSCUにて標準治療が行われ, さらに Levetiracetamによる予防投与群 vs Placebo群に割り付け, 症候性てんかん, ECGによるてんかん波をフォローされた.
・予防投与: 500mg q12hを48時間以上 経静脈投与. 経口内服可能となれば切替え, 30日間継続. その後2wkかけて減量し, 終了(250mg q12hを7日, 250mg/dを7日)
・アウトカムは72h以内の症候性発作, 導入から48hの持続脳波モニタリングによるてんかん波の確認 また, 30日以内の症候性発作, 31日〜12ヶ月の発作を評価.
母集団
アウトカム
・72h以内の症候性発作, てんかん波は16% vs 43%, OR0.16[0.03-0.94]と 有意に予防投与群で少ない結果.
・脳波モニタリング中のてんかん波形数も有意に少ない.
・神経学的所見やmRSは両者で有意差なし.
・~72hでフォローされた血腫サイズは有意差はないものの, 予防投与群で拡大は少ない傾向にある.
・発症〜30日, 〜1年間の症候性てんかん発作は両者で有意差なし. それぞれの群で1例ずつ.
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脳出血後の予防的抗てんかん薬の投与は有意にてんかん発作や脳波におけるてんかん波の予防に効果的である.
しかしながら長期的な症候性てんかんのリスクは有意差なし(母集団における発症が1例のみと少ないのでなんとも)
また, 神経機能予後も有意差なし.
長期的なてんかん発作のリスクや, 神経機能予後に影響するならば投与を推奨する根拠にはなりそう. それを評価するには小規模であり, 今後の追試を待ちたいところ.