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2022年7月28日木曜日

メトホルミンは腹部大動脈瘤の予後を改善させるかもしれない

腹部大動脈瘤は比較的多く見つける動脈硬化性疾患の1つ.

無症候性も多く, 高齢者では腹部の診察やエコーで一度はスクリーニングをかけた方が良い.

症候性や急性の拡大傾向, 大動脈径が>55mmとなると手術を考慮する必要がある.


内科的治療では降圧薬やスタチンなど投与されることが多いが,

TAA(胸部)と異なり, AAAの拡大速度や予後を改善させることが証明されている薬剤は実は無い.


MetforminはAAAの予後を改善させる可能性が示唆


2003-2013年に退役軍人医療システムで管理された無症状のAAA患者のデータをReview.

(J Vasc Surg. 2019 Mar;69(3):710-716.e3.)

・糖尿病併発症例, 且つ 複数回腹部画像検査が施行された患者群を対象とした.

 AAA修復術を施行された患者はその時点で打ち切り.

・投薬内容とAAA径の変化の関連を評価.


13846例で評価. MET使用例は39.7%


・径の拡大速度は


 MET使用群で1.2±1.9mm/y
非使用群で1.5±2.2mm/yと
有意にMETで拡大速度が遅い


大動脈瘤径拡大に関連する因子

・他にはARBやSU剤も関連があるが, 最も効果があるのはMET

・糖尿病自体が瘤のリスクを下げるというDMパラドックスという現象がある.

・増悪させるのはCOPD, 腎疾患, 喫煙, 転移性腫瘍, AAA径


オーストラリアの3都市で行われた前向きCohort.

(Eur J Vasc Endovasc Surg. 2019 Jan;57(1):94-101.)

・無症候性のAAA患者を対象とし, その後のAAA修復の必要性, AAA関連死亡に関わる因子を評価.

・患者は1080名. AAA径は46.1±11.3mm, 平均フォロー期間は2.5±3.1年

・AAAに関連するアウトカムはMET使用例で有意に低下.


 初期AAA径≤50mmの群でも同様.

・MET処方がないDM患者ではアウトカムは有意差なし



2000-2019年の米国の退役軍人データベースを用いて,
糖尿病患者, 非糖尿病患者のMetformin使用の有無と
AAA手術, AAA死亡, AAA手術後死亡への関連をPropensity-score matched analysisにて評価.

(J Investig Med. 2020 Jun;68(5):1015-1018.)

・DM(+), MET(-)が43073例


 DM(+), MET(+)が24361例


 DM(-)が56006例.

アウトカム:
 

DM(+)群ではMETに関係なくAAA手術リスクは低い.
 

・DM(+), MET(+)群ではAAA死亡リスクが唯一低下する.
  

・しかしながら10年後には死亡リスクも上昇する


スウェーデンの4ヶ所の血管センターにおいて,
手術適応のないAAA患者を対象としてスクリーニングを実施

(Ann Vasc Surg. 2021 Jan;70:425-433.)

・2型DM(-)群が428名.


 DM(+), MET(+)群が65名, 


 DM(+),MET(-)が33名

AAA径の拡大速度の比較;

・DMでMET(+)群では非DMと比較して
有意に拡大速度が遅い.

・MET(-)のDM患者群では有意差はない


メトホルミンによるケモカインの減少や
炎症の抑制などが関連していると推測されている

(J Vasc Surg. 2020 Mar;71(3):1056-1062.)


そして, 現在AAAに対するMETのRCTが進行中

・MAT trial: 無症候性AAA, DM(-)患者を対象とし,
 MET 1500mg vs Placeboに割り付け比較.
 

 アウトカムはAAA関連合併症. (Trials. 2021 Dec 27;22(1):962.)

・MAAAGI trial: AAA, DM(-)患者を対象とし,
 MET 2000mg vs Placeboに割り付け, 5年間投与.

 その間のAAA径, 体積の変化を比較. (Eur J Vasc Endovasc Surg. 2021 Apr;61(4):710-711.)