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2021年5月22日土曜日

シェーグレン症候群による腎障害. 特にRTAについて

 pSSの5%で腎障害を生じる.

・pSSに伴う腎病変の頻度は4-7%程度とされるが, 
中国人のCohortでは34%, インドでは50%と人種差や診断基準による差がある

・腎病変に関連する因子として, ANA, 抗SS-B抗体陽性, RFが関連.

 高IgGはdRTAへの関連があり,


 低C3, クリオグロブリン血症は糸球体腎炎への関連がある


腎尿細管へのリンパ球浸潤や免疫複合体の沈着により,
 尿細管間質性腎炎(TIN)を認める頻度が高い.

・他に低K血症を伴うRTA(遠位, I型)やFanconi症候群, 腎性尿崩症がある.

・これら腎障害はSicca症状に先行して生じることもあるし,
 徐々に進行し顕在化する場合もある

・糸球体病変の頻度は上記に比べると低く, 免疫複合体沈着が機序となる

・pSSによる腎障害への治療は定まったものはなく,
 電解質異常を伴うTINでは免疫抑制が効果的である可能性が示唆される


 また, 腎病理に応じて免疫抑制を考慮することもある

(Rheumatol Ther (2021) 8:63–80)


pSSで腎病変を認めた35例の解析では, 
 (Rheumatology International (2018) 38:2251–2262)

・顕性dRTAは25例,
 潜在性dRTAが4例


 腎結石は5例
, 低K性四肢麻痺が22例


このうち腎生検を行なった17例の病理では
・TINが9例, 糸球体変化が6例で認められた

pSSにおける腎症のスクリーニング
・pSS患者では, 腎障害の徴候に注意する(浮腫やネフローゼ, 腎炎に関連する症状, 骨痛, 筋力低下, 多尿, 多飲)
・尿検査ではpH, 蛋白, 尿糖, 血尿に注目し, 異常があれば尿中電解質の評価も検討
・血液検査では一般検査に加えてリンやHCO3の評価も行う
・Nephrocalcinosisや尿路閉塞, 腎結石の評価にエコーを行う
・糸球体腎炎が疑われた場合は, クリオグロブリン, 免疫グロブリン, M蛋白, 補体の評価を推奨
・腎機能低下や重度の電解質異常がある場合は腎臓内科へのコンサルトを行う
(Rheumatol Ther (2021) 8:63–80)


pSSに伴う腎病変のスペクトラム

尿細管障害(主にRTA)
・遠位RTA, Fanconi症候群, Bartter症候群, Gitelman症候群, 腎性尿崩症
・低Kの頻度が高く, 腎障害を合併したpSSの30-47%で認められる.

 通常無症候だが, 四肢麻痺や呼吸筋麻痺を認める例も報告あり
・dRTAの頻度は報告によりばらつきが多く, 5-70%.

 pSSで低K血症を認める患者で腎生検を行うと, 
ほぼ全例でTINが認められる報告がある

pSSで認めるRTAは遠位尿細管性RTA(1型RTA)であり,
 遠位尿細管で十分なH+イオンを分泌できない状態
・完全なdRTAでは, AG正常代謝性アシドーシスとなり, 尿pH>5.5
, 低K血症を伴う.
・不完全型のdRTAではアシドーシスは認められないが,
 酸の負荷を行なっても尿の酸性化が生じない反応(塩化アンモニウム負荷)や,
 ラシックスを使用しても尿の酸性化が認めないことで判断する
(一般的な診療では行われない)
・pSSによるdRTAの機序は未だ不明ではあるが,
 H-ATPase pumpが消失しており, Carbonic anhydrase IIに対する抗体が認められる報告がある

・稀(~3%)だが, 近位尿細管が障害されることがあり,

 その場合Fanconi症候群(近位尿細管性アシドーシス)を生じる
・近位尿細管は糸球体で濾過された物質の再吸収を行うメインな部位であるため, 同部位の障害でFanconi症候群となる
・電解質のみならず, Glucoseやアミノ酸, 尿素, リンなどの再吸収が障害
・Fanconi症候群では, 尿中リンの上昇, 尿糖, アミノ酸尿を伴うAG正常代謝性アシドーシスを生じる. 血中リン濃度は低下する.

・他に稀であるが, GitelmanやBartter症候群も合併することがある

・これらの病態は其々サイアザイドやループ利尿薬の慢性使用に類似する

 双方ともpSSへの合併は症例報告レベルの頻度.
・Gitelman症候群はSalt-wasting tubulopathyで, アルカローシス, 低K血症, 低Mg血症, 高Ca尿症を認め, 二次性の高アルドステロン症を認める

 遠位尿細管のThiazide-like sodium-chloride cotransporter(NCCT)に対する自己抗体の関連が示唆されている.
・Bartter症候群はヘンレの上行脚におけるNa-Cl再吸収の低下が関連.

 アルカローシス, 低K血症, 二次性高アルドステロン症を認める

 低Mg血症の頻度は低く, さらに尿中Ca排泄は正常〜亢進する

南インドにおいて, 腎臓内科をRTAを疑う症状で受診した患者群を前向きに評価.
(Am J Nephrol 2014;40:123–130)
・RTAを疑う症状: 上下肢の近位筋筋力低下, 多尿, 腎結石, 骨変形, 成長障害
・この期間にRTAと診断された症例が149例, うちpSSが52例(34.8%)
・症状と検査

・RTA+pSS患者における血液電解質, 尿電解質


集合管の障害: 腎性尿崩症
・ADHへの反応が低下することにより, 尿の濃縮障害を認める.
・イタリアのコホートでは, pSSの1/4で濃縮障害を認め,
 中国のコホートでは38%で認められた. 腎性尿崩症は3例のみ.

腎結石, 尿路結石
・pSSの14-25%で尿路結石を合併する.
・dRTAによる尿中Caの上昇と尿中Citrateの低下が関連している.

 アシドーシスの状況下では骨からのCalcium phosphateの放出が増加し,
 尿pHの上昇により尿中への析出がしやすくなる.
 さらにCitrateの低下でより析出が増加する.
・高Ca尿症は24h尿中Ca >300mg(男性), >250mg(女性)

 低Citrate尿症は24h尿中Citrate <350mg
・RTAにより骨軟化症を合併する例もある.
・pSSにおける腎疝痛や, 急性腎障害を見た時は, 腎後性の評価は重要

補足: Ca nepholithiasisの
原因となる病態  (J Nephrol (2016) 29:715–734)

補足: Expert opinionが主であるが, (イタリアの尿路結石におけるConsensus)
(J Nephrol (2016) 29:715–734)

・繰り返すCa結石では不完全型dRTAの評価は推奨される.
・評価には塩化アンモニウム負荷
による尿pHの変化を用いる
・国内では
塩化アンモニウム補正液
5mEq/L, 20mLがあり.

 1Aあたり100mEq, 5.35g含有.
 体重50kgあたり1A使用くらい
(希釈して使用)


尿細管間質性腎炎(TIN)
・pSSで最も多い腎病変が慢性/急性のTINであり,
 pSSで腎生検を行なったうちの75%が病理でTINを認める.
・尿細管にはCD4+ Tリンパ球の浸潤を主に認め,
 唾液腺の病理に類似している.
 
CD8+ Tリンパ球や形質細胞浸潤も認められる

 10%でB細胞が主となる.
 肉芽腫を認める場合はSarcoidosisを示唆する所見として捉えるべき
・TINの臨床症状や経過は様々であり,
 尿細管障害やAKI, 慢性経過の腎障害など様々である
・Sicca症候群を生じる前にTINが認められている報告もあり, 
低K血症やTINではpSSも考慮すべき鑑別疾患となる

糸球体障害
・pSSでは糸球体の障害はTINに比べると少ないが, 
AKIやRPGN, CKD, ネフローゼ症候群などは起こり得る
・腎炎は糸球体内皮の障害で生じるため, 血尿や蛋白尿(通常<3g/d)を伴うAKIや乏尿, 高血圧が生じる.

 一方でネフローゼ症候群では, Podocyteや糸球体基底膜の障害で生じる
・pSSの糸球体障害で最も報告が多いのがMPGN. 
 他にはMCD, IgA腎症, FSGS, MGN, Fibrillary GN, 血管炎などもあり.
 
pSSにおけるMPGNは免疫複合体の沈着やクリオグロブリンの関連が示唆されている.
・ANCA関連血管炎の合併も6-7%であり.

pSSにおいて腎生検を考慮すべきタイミング
・腎排泄機能が保たれており, 低K血症などの尿細管異常があるpSS患者では, 腎病理はTINと推定され, 通常腎生検は不要.
・腎生検はAKI and/or 尿の異常がある場合に考慮する

pSSによる腎症の治療
・pSSにおける腎症の治療は定まっておらず, 病態に応じて様々である.
・CKDは心血管疾患のリスクであり, 
BP管理, 蛋白尿を最小限で維持すること, 他のCVリスク因子への介入が重要となる.

dRTAへの対応
・dRTAでは主にアシドーシスと低K血症への補正が中心となる
 
BicarbonateやKの補充を考慮.

繰り返す尿路結石(Ca系)への対応
・一般的に繰り返す尿路結石の場合は, 水分摂取量を増やし,
 尿量を2-2.5L/dを目標とする.
 
砂糖が少ない飲み物を用いた方が良い.

 砂糖を加えていないオレンジジュースは, Ca腎症の予防効果があるかもしれない.
・CaOx, リン酸Caによる結石で,
  
(1)尿中Citrateが低い,
  (2)完全/不完全dRTA, 慢性下痢による結石, 薬剤や食事による尿中Citrateの低下, 
 (3)骨軟化症/骨粗鬆症がある場合は, 
 クエン酸Kの投与を考慮する.
ただし, クエン酸Naは尿中Ca排泄を促進するため, 避けた方が良い.
 国内で処方できるのはウラリット-U®だが, クエン酸K, クエン酸Naが含まれてしまう. サプリメントではクエン酸Kのみのものがある.
・サイアザイドも尿中Caが高値のCaOx, リン酸Ca結石で, 食事や飲水により予防困難な場合は良い適応かもしれない.

TINの治療
・pSS-TINでどの患者群にステロイドが有効かどうかは不明確
・PSL 40mg[30-60] ±免疫抑制薬の使用により, 60%が20%以上の腎機能改善が得られた報告もあるが, 他の報告では25%でしか効果が認められないとする結果もあり.

 免疫抑制役はカルシニューリン系やMMFが選択されることが多い
・RTXも試されている

糸球体障害の治療
・ACEiやARBによる蛋白尿への対応と, 
他の糸球体腎炎と同様に免疫抑制療法が行われることが多い