Myofascial pain syndrome: MPSは筋と筋膜に由来する疼痛を呈する症候群.
・筋肉に関連する放散痛や, トリガーポイントを認めることが特徴で, TPは筋のコリの部位に認められることが多い.
・MPSのEtiologyは様々なものが関連している.
機械的要因 外傷, 微細な外傷, 骨折, 外科手術 姿勢, 骨格の非対称性 繰り返す同一筋帯への負荷 運動量の低下, 筋疲労 | 栄養障害 鉄欠乏 低ビタミン(B1, B6, B12, C) |
代謝/内分泌 電解質異常 甲状腺機能低下症 低血糖 高尿酸血症 | その他 Radiculopathy, 内臓疾患, 感染症 うつ病 加齢 |
多い疼痛の分布とトリガーポイントの部位
MPSではトリガーポイント注射が効果的であるが, 薬剤の使用ではアレルギーや局所反応などが問題となる.
そこで, 僧帽筋, 中臀筋/大臀筋, 胸腸肋筋, 腰方形筋, 傍脊柱筋のMPS症例51例において, TPIで使用する薬剤で効果を比較.
(American Journal of Emergency Medicine 38 (2020) 311–316 )
・Single blind RCT(患者がBlind)
・NSによるTPI群 vs Lidocaine 1% 10mL + Triamcinolone 40mg/mL使用群に割り付け, 疼痛の経過を比較した.
・TPIは25G針を使用
・投与後はBlindされた評価者が疼痛の経過をフォローする.
母集団
アウトカム
・疼痛の経過は両群で有意に改善傾向を示し, 投与後2週間の経過もほぼ同等.
頭頸部のMPSで顔面の側面に疼痛があり, 咀嚼筋にTPを認める患者群を対象としたDB-RCT.
(ORL 1996;58:306-310)
・Bupivacaine 0.25% 5mL群 vs Lignocaine 1% vs NS群に割り付けTPIを施行.
・各部位1mLを使用. 0.3mLを皮内に投与し, 0.7mLを筋膜レベルに投与
アウトカム
・どの薬剤でも疼痛抑制効果は良好に認められる.
僧帽筋のMPS症例39例において, Lidocaine 0.5%を用いたTPI群 vs 鍼灸針を刺入する群に割り付け, 比較したSingle-blind RCT.
(ACUPUNCTURE IN MEDICINE 2007;25(4):130-136.)
・処置は0, 7, 14日に施行.
・患者は60歳以上で慢性経過(6ヶ月以上)の頚部痛, 頭痛を認める群.
・6ヶ月以内に鍼灸やTPI施行した群や, 頭頸部の手術既往が1年以内にある群, オピオイド使用群, 線維筋痛症の基準を満たす群, 頚部Radiculopathy, myelopathy, 重度の心疾患, 肺疾患, 薬剤や注射へのアレルギー, 認知機能障害, コミュニケーション不可の例は除外
・鍼灸治療は伏臥位で全てのTPに対して鍼灸針を刺入.
母指と示指で近傍を触れながら, 深さは30-35mm程度で針を前後させ, TPが不活化するまで継続.
不活化は針を刺入し, 前後させた際の筋のピクつきの消失で定義
・TPIは25G針を用いて, 0.5% LidocaineをTP1カ所につき0.2mL注入
アウトカム: 疼痛の変化, うつ症状, ROMの変化
・双方とも有意に疼痛やROM, 抑うつ症状は改善
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筋膜痛症候群における治療ではトリガーポイントは有効な治療の一つ.
注射液はリドカイン+ステロイドで行われることが多いが, 生理食塩水でも効果は変わらない.
はたまた、薬液を用いない鍼灸のみでも効果は十分ある.
自分は筋膜リリースというのはNSによるトリガーポイントと認識しているのですが,
エコー下での筋膜リリースと, NSによるトリガーポイントで差がでるのかどうかは気になります.