20歳台女性.
2-3wk前からの頚部リンパ節腫大、発汗で受診.
頚部は後頚部〜前頚部LNの1横指程度の腫大. 扁平で可動性良好.
咽頭所見は認めないが, 咽頭痛はあったと.
トラウベ三角は濁音.
肝Knock pain無し.
血液検査では,
Ly 8200/µL(86%)と著名に上昇. 異形Lyは認めず.
AST/ALT 150/200, LDH 300程度に上昇.
伝染性単核症かな、ということで抗体を評価すると,
EBV VCA IgM 160倍, EBNA陰性.
CMV IgM(CLIA) 陽性(5台) とDual positive.
これはどう考えるか?
------------------------------------
EBVとCMV IgM双方陽性となるDual positiveの症例報告は, Pubmedで検索するとちらほらヒットする. どの論文もCo-infectionや, 免疫抑制による双方の再活性化として報告しているものが多い.
2018年に, 小児例を対象とした交差反応の可能性を報告があったので紹介する.
(Medicine (2018) 97:38(e12380))
小児例のprimary EBV感染症(IM)症例 494例を解析.
・患者はIMに矛盾しない症状, 経過を示し, EBV VCA IgMが陽性であることが確認されている. <3ヶ月, >18歳は除外.
・このうち149例で肝酵素, CMV IgMも合わせて評価されており, 40例(26.8%)がCMV IgMも陽性であった.
CMV IgMはChemiluminescent micro particle immunoassay(CLIA)で評価
・しかしながら1/40のみが血液中CMV Ag陽性, 尿中CMV PCR陽性, CMV IgG陰性であり, 他は交差反応と判断された.
CMV IgM陰性例と陽性例の比較
・CMV IgM陽性例では, より若年, 肝障害が多く, リンパ球数も多い
年齢に応じて, CMV IgM titerは低下
リンパ球が多いほどTiterは上昇する傾向
-------------------------------
EBVとCMV IgMが双方陽性となる場合は,
・Co-infectionや免疫抑制によるEBVとCMV双方が再活性化したとする症例報告は過去に複数認められるが, 交差反応の可能性もある.
・EBV virion glycoprotein gp85がHSV-1,2, CMVにも交差反応を示す報告がある(J Virol. 1987 Apr;61(4):1125-35.)
若年ほど, Lyが高いほど, 肝障害高度なほどCMV IgMも高値となる傾向から, EBV感染に対する免疫反応が強く, それによるLy上昇, 免疫機序の肝障害, CMVへの交叉反応に関連している可能性が考えられる.
今症例では小児例ではないが, Lyは非常に高く, 肝障害も顕著. 傾向としては上記の報告に類似している.
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2019年11月29日金曜日
2019年11月27日水曜日
後天性血友病Aに関連する悪性腫瘍
後天性血友病A: XIII因子インヒビターによる後天性の凝固障害.
APTTのみが延長し, 皮下出血, 筋肉内出血, 消化管出血をきたす.
参考:後天性血友病A
この半数が特発性であるが,
残り半数が二次性で, 背景疾患としては自己免疫性疾患(RA, SLEなど), 悪性腫瘍, 薬剤, 妊娠などが有名.
(Hematology. 2017 Oct;22(9):514-520.)
また, 薬剤ではDPP-4阻害薬による報告も国内から数例報告がある
(Diabetes Ther (2019) 10:1139–1143)
悪性腫瘍では主に血液腫瘍が多いが, どのような腫瘍が原因として多いのだろうか?
悪性腫瘍患者におけるAHA症例のLiterature review
・固形癌が60例, 血液腫瘍が45例
高齢者ほど固形癌の頻度が上昇
・固形癌で多い原発巣は前立腺癌が25.3%, 肺癌が15.8%, 大腸癌が9.5%
他に胃癌, 乳癌, 膀胱癌, 腎癌, 膵癌, 口腔内扁平上皮癌など様々
・血液腫瘍で多いのは,
リンパ腫が24.4%, CLLが22.3%, Plasma cell dyscrasia 20%,
慢性骨髄増殖性腫瘍が13.3%, AMLが9%, MDSが8.8%
Mycosis fungoides 2.2%
(Haemophilia. 2018 Jan;24(1):43-56.)
------------------------------------
血液腫瘍や肺癌で多いイメージでしたが, 前立腺癌も結構多いという発見.
APTTのみが延長し, 皮下出血, 筋肉内出血, 消化管出血をきたす.
参考:後天性血友病A
この半数が特発性であるが,
残り半数が二次性で, 背景疾患としては自己免疫性疾患(RA, SLEなど), 悪性腫瘍, 薬剤, 妊娠などが有名.
(Hematology. 2017 Oct;22(9):514-520.)
また, 薬剤ではDPP-4阻害薬による報告も国内から数例報告がある
(Diabetes Ther (2019) 10:1139–1143)
悪性腫瘍では主に血液腫瘍が多いが, どのような腫瘍が原因として多いのだろうか?
悪性腫瘍患者におけるAHA症例のLiterature review
・固形癌が60例, 血液腫瘍が45例
高齢者ほど固形癌の頻度が上昇
・固形癌で多い原発巣は前立腺癌が25.3%, 肺癌が15.8%, 大腸癌が9.5%
他に胃癌, 乳癌, 膀胱癌, 腎癌, 膵癌, 口腔内扁平上皮癌など様々
・血液腫瘍で多いのは,
リンパ腫が24.4%, CLLが22.3%, Plasma cell dyscrasia 20%,
慢性骨髄増殖性腫瘍が13.3%, AMLが9%, MDSが8.8%
Mycosis fungoides 2.2%
(Haemophilia. 2018 Jan;24(1):43-56.)
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血液腫瘍や肺癌で多いイメージでしたが, 前立腺癌も結構多いという発見.
2019年11月23日土曜日
多剤耐性緑膿菌感染症の治療
多剤耐性緑膿菌: Multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa(MDRP),
また, Extensively drug-resistant Pseudomonas aeruginosa(XDRP)はカルバペネム系抗菌薬をはじめとした抗緑膿菌活性を有する抗菌薬に耐性を示す緑膿菌.
市中病院でも年間数例は保菌患者がおり, 年々増加しているような印象もある.
海外では, 地域によっては15-30%がMDRP/XDRPとの報告もある.
・ヨーロッパでは, 緑膿菌の13.7%が3種類以上の抗菌薬に耐性を示し, 5.5%が5種類すべての抗菌薬に耐性を示す
・米国では重症例の医療関連感染症のうち, 13%がMDRPとの報告もあり
(Clin Microbiol Rev. 2019 Aug 28;32(4). pii: e00031-19.)
MDRPに対する抗菌薬選択には何があるのだろうか?
MDRPに対する抗菌薬ではPolymyxinとCeftolozane-tazobactamが有用.
(Clin Microbiol Rev. 2019 Aug 28;32(4). pii: e00031-19. )
Polymyxin: Polymyxin BとE(colistin) (Clin Microbiol Rev. 2019 Aug 28;32(4). pii: e00031-19. )
・陽イオン性界面活性剤で, 細胞質膜を障害することで殺菌作用を有する
グラム陰性菌に効果が認められる.
・国内ではColistinはオルドレブ®点滴静注用, コリマイシン散(内服)
Polymyxin BはポリミキシンB硫酸塩として使用可能
・重大な副作用としては腎障害と神経障害(呼吸窮迫, 無呼吸)がある点に注意
・Polymixin BやColistinは双方ともネブライザーによる吸入量療法も試されている.
主にColistinで行われていることが多く, Meta-analysisでは肺炎や気管支炎に対する治療成功率は70.4%との報告がある.(Int J Antimicrob Agents. 2018 Jan;51(1):1-9.)
PolymyxinのMDRPに対する効果を評価した報告のまとめ:
Ceftolozane-tazobactam(ザバクサ®) (Clin Microbiol Rev. 2019 Aug 28;32(4). pii: e00031-19. )
・Ceftolozaneは抗緑膿菌活性が強い抗菌薬の1つで, 他の抗緑膿菌活性を有するβラクタム系抗菌薬の20-25%増.
・MDRP/XDRPのCeftolozane-tazobactamへの感受性は55-96.6%
・投与量や投与方法に注意が必要であり, 持続投与や5時間以上かけた長時間の投与の方が有効血中濃度を保ちやすい報告がある.
Ceftolozane/tazobactamのMDRPに対する効果を評価した報告のまとめ:
上記以降の報告:
米国の20病院において, MDRPをCeftolozane-TAZで治療した205例を後ろ向きに解析した報告
・感受性を評価した139例中, 感受性(+)は89.9%であった.
・臨床的改善は73.7%
細菌学的治癒は70.7%
(Open Forum Infect Dis. 2018 Oct 31;5(11):ofy280.)
12例のMDRP, 117例のXDRP(non metallo-β-lactamase産生)例におけるC/Tの感受性を評価した報告
・感受性あり: MIC ≤4mg/L, MIC50 ≤ 2mg/L, MIC90 ≤ 4mg/L
92.2%で感受性ありと判断.
(Rev Esp Quimioter. 2019 Feb;32(1):68-72. Epub 2018 Dec 14.)
多施設の後ろ向きCohort. 薬剤耐性緑膿菌感染症症例において, Ceftolozane/tazobactamで治療した患者群と, PolymyxinまたはAminoglycosideを用いて治療した群を比較.
・各群100例
・ICU症例が7割. 重症敗血症以上の症例が4割程度. VAPが5割を占める.
・薬剤を併用したのはCeftolozane群で15%, Polymyxin/Aminoglycosideで72%
アウトカム
・臨床的治癒は有意にCeftolozan/TAZ群で良好
・AKIリスクも低い
(Clin Infect Dis. 2019 Sep 23. pii: ciz816. doi: 10.1093/cid/ciz816. [Epub ahead of print]
Ceftolozane/Tazobactam vs Polymyxin or Aminoglycoside-based Regimens for the Treatment of Drug-resistant Pseudomonas Aeruginosa.)
参考: カルバペネム耐性グラム陰性菌における新規抗菌薬の選択
(Clinical Infectious Diseases® 2019;69(S7):S565–75)
・カルバペネム耐性のグラム陰性菌は, 腸内細菌群, 緑膿菌, アシネトバクター, ステノトロフォモナス マルトフィリアが挙げられる.
・Ceftolozane-tazobactamが効果的なのは緑膿菌のみ.
----------------------------------
MDRPの保菌者が入院してきたり, 入院中の患者から検出されたり, ということは年に数回あるため, 感染をきたした場合, どのような抗菌薬が使用可能なのか, というのは覚えておきたい.
Ceftolozane-tazobactam(ザバクサ®)は少し前まで売り込みも盛んな薬剤. 当院では採用は見送っていますが, やはりMDRPのために使用頻度は低く保ち, イザという時のためにとっておきたい薬剤と思う.
また, Extensively drug-resistant Pseudomonas aeruginosa(XDRP)はカルバペネム系抗菌薬をはじめとした抗緑膿菌活性を有する抗菌薬に耐性を示す緑膿菌.
市中病院でも年間数例は保菌患者がおり, 年々増加しているような印象もある.
海外では, 地域によっては15-30%がMDRP/XDRPとの報告もある.
・ヨーロッパでは, 緑膿菌の13.7%が3種類以上の抗菌薬に耐性を示し, 5.5%が5種類すべての抗菌薬に耐性を示す
・米国では重症例の医療関連感染症のうち, 13%がMDRPとの報告もあり
(Clin Microbiol Rev. 2019 Aug 28;32(4). pii: e00031-19.)
MDRPに対する抗菌薬選択には何があるのだろうか?
MDRPに対する抗菌薬ではPolymyxinとCeftolozane-tazobactamが有用.
(Clin Microbiol Rev. 2019 Aug 28;32(4). pii: e00031-19. )
Polymyxin: Polymyxin BとE(colistin) (Clin Microbiol Rev. 2019 Aug 28;32(4). pii: e00031-19. )
・陽イオン性界面活性剤で, 細胞質膜を障害することで殺菌作用を有する
グラム陰性菌に効果が認められる.
・国内ではColistinはオルドレブ®点滴静注用, コリマイシン散(内服)
Polymyxin BはポリミキシンB硫酸塩として使用可能
・重大な副作用としては腎障害と神経障害(呼吸窮迫, 無呼吸)がある点に注意
・Polymixin BやColistinは双方ともネブライザーによる吸入量療法も試されている.
主にColistinで行われていることが多く, Meta-analysisでは肺炎や気管支炎に対する治療成功率は70.4%との報告がある.(Int J Antimicrob Agents. 2018 Jan;51(1):1-9.)
PolymyxinのMDRPに対する効果を評価した報告のまとめ:
Ceftolozane-tazobactam(ザバクサ®) (Clin Microbiol Rev. 2019 Aug 28;32(4). pii: e00031-19. )
・Ceftolozaneは抗緑膿菌活性が強い抗菌薬の1つで, 他の抗緑膿菌活性を有するβラクタム系抗菌薬の20-25%増.
・MDRP/XDRPのCeftolozane-tazobactamへの感受性は55-96.6%
・投与量や投与方法に注意が必要であり, 持続投与や5時間以上かけた長時間の投与の方が有効血中濃度を保ちやすい報告がある.
Ceftolozane/tazobactamのMDRPに対する効果を評価した報告のまとめ:
上記以降の報告:
米国の20病院において, MDRPをCeftolozane-TAZで治療した205例を後ろ向きに解析した報告
・感受性を評価した139例中, 感受性(+)は89.9%であった.
・臨床的改善は73.7%
細菌学的治癒は70.7%
(Open Forum Infect Dis. 2018 Oct 31;5(11):ofy280.)
12例のMDRP, 117例のXDRP(non metallo-β-lactamase産生)例におけるC/Tの感受性を評価した報告
・感受性あり: MIC ≤4mg/L, MIC50 ≤ 2mg/L, MIC90 ≤ 4mg/L
92.2%で感受性ありと判断.
(Rev Esp Quimioter. 2019 Feb;32(1):68-72. Epub 2018 Dec 14.)
多施設の後ろ向きCohort. 薬剤耐性緑膿菌感染症症例において, Ceftolozane/tazobactamで治療した患者群と, PolymyxinまたはAminoglycosideを用いて治療した群を比較.
・各群100例
・ICU症例が7割. 重症敗血症以上の症例が4割程度. VAPが5割を占める.
・薬剤を併用したのはCeftolozane群で15%, Polymyxin/Aminoglycosideで72%
アウトカム
・臨床的治癒は有意にCeftolozan/TAZ群で良好
・AKIリスクも低い
(Clin Infect Dis. 2019 Sep 23. pii: ciz816. doi: 10.1093/cid/ciz816. [Epub ahead of print]
Ceftolozane/Tazobactam vs Polymyxin or Aminoglycoside-based Regimens for the Treatment of Drug-resistant Pseudomonas Aeruginosa.)
参考: カルバペネム耐性グラム陰性菌における新規抗菌薬の選択
(Clinical Infectious Diseases® 2019;69(S7):S565–75)
・カルバペネム耐性のグラム陰性菌は, 腸内細菌群, 緑膿菌, アシネトバクター, ステノトロフォモナス マルトフィリアが挙げられる.
・Ceftolozane-tazobactamが効果的なのは緑膿菌のみ.
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MDRPの保菌者が入院してきたり, 入院中の患者から検出されたり, ということは年に数回あるため, 感染をきたした場合, どのような抗菌薬が使用可能なのか, というのは覚えておきたい.
Ceftolozane-tazobactam(ザバクサ®)は少し前まで売り込みも盛んな薬剤. 当院では採用は見送っていますが, やはりMDRPのために使用頻度は低く保ち, イザという時のためにとっておきたい薬剤と思う.
2019年11月20日水曜日
髄外造血巣
70歳台男性, 背部痛にて受診.
血液検査にて, 高度貧血, WBC増多, 血小板減少, LDH上昇を認め,
CT検査では椎体, 肋骨, 骨盤など様々な骨の髄質の消失が認められた(Beautifle bone scanのような感じ.)
また, 巨脾 + 脾臓内の多発性のMass(境界明瞭, 造影CTで造影効果は乏しく, 不均一)あり.
---------------------------
この時点での鑑別は,
・胃癌, 肺癌, 乳癌, 前立腺癌あたりからの骨髄癌腫症, 脾臓転移
>> 特にそれら原発巣を示唆する画像所見や血液検査所見は得られず.
・骨髄増殖性疾患, 特にCMLあたりからの急性転化 + Myeloid sarcomaの形成
>> Myeloid sarcomaはどこでも生じるが, 脾臓の報告は少ない.
・悪性リンパ腫の骨髄浸潤+脾臓病変.
・骨髄増殖性疾患(この場合は骨髄線維症)を背景とした髄外造血巣, 巨脾
ということで, マルクするとDry tap. 骨髄生検所見より骨髄線維症と診断した
--------------
巨脾は骨髄線維症で認められるものの, この多発性のmassはなんだろうか.
おそらくは髄外造血巣(Extramedullary hematopoiesis: EMH)ではないかとの予想.
髄外造血巣: EMH
慢性経過の血液疾患で十分な骨髄造血機能が維持できない状態が持続すると, 髄外の軟部組織において造血が生じる. これをExtramedullary Hematopoiesis(EMH)と呼ぶ.
・慢性溶血性貧血(サラセミア, 鎌状赤血球症), 骨髄線維症, リンパ腫, 白血病
・EMHには2つの機序がある:
骨髄髄質の正常造血組織が髄外に広がる
休止状態にある造血組織が再活性化する
・多い部位は傍脊柱 > 肝臓, 脾臓, リンパ節.
他に胸腺, 心臓, 乳房, 前立腺, 靭帯, 腎臓, 副腎, 胸膜, 後腹膜, 皮膚, 末梢・中枢神経など報告がある.
・EMHでは腫瘤による神経圧迫や, 肋骨, 長幹骨, 椎体に脊髄, 頭蓋骨, 顔面骨が広がることで, 骨粗鬆症を呈する.(画像は頭蓋骨の骨髄の増生を呈した症例)
(Semin Ultrasound CT MRI 35:255-262, 2014)
通常の造血部位
(a)胎児, (b)小児, (c)成人
(Clin Radiol. 2016 Sep;71(9):807-14.)
EMHの画像所見:
某脊柱病変: EMHで最も多い (Semin Ultrasound CT MRI 35:255-262, 2014)
肋骨の骨髄が増生することで, 骨粗鬆症となった例
某脊柱に次いで多いのは肝臓, 脾臓, リンパ節
・肝臓, 脾臓ではび慢性の肝腫大, 脾腫大が認められる
・組織的にはびまん性に造血細胞浸潤が認められる.
・脾腫大から脾梗塞となる例もあり
・稀ながら, 肝臓や脾臓に腫瘤を形成するEMHもあり.
境界明瞭の腫瘤で, エコーでは低エコー領域の不均一な腫瘤, CTでは低濃度の不均一な腫瘤, Hypovascularで脂肪組織を含む
(Journal of Medical Imaging and Radiation Oncology 56 (2012) 538–544 )(Clin Radiol. 2016 Sep;71(9):807-14.)(Semin Ultrasound CT MRI 35:255-262, 2014 )
他, 稀な部位・画像
・腎周囲の髄外造血巣
(Semin Ultrasound CT MRI 35:255-262, 2014)
・脊柱内の髄外造血巣
(Journal of Medical Imaging and Radiation Oncology 56 (2012) 538–544)
・副鼻腔内の髄外造血巣
(Journal of Medical Imaging and Radiation Oncology 56 (2012) 538–544)
血液検査にて, 高度貧血, WBC増多, 血小板減少, LDH上昇を認め,
CT検査では椎体, 肋骨, 骨盤など様々な骨の髄質の消失が認められた(Beautifle bone scanのような感じ.)
また, 巨脾 + 脾臓内の多発性のMass(境界明瞭, 造影CTで造影効果は乏しく, 不均一)あり.
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この時点での鑑別は,
・胃癌, 肺癌, 乳癌, 前立腺癌あたりからの骨髄癌腫症, 脾臓転移
>> 特にそれら原発巣を示唆する画像所見や血液検査所見は得られず.
・骨髄増殖性疾患, 特にCMLあたりからの急性転化 + Myeloid sarcomaの形成
>> Myeloid sarcomaはどこでも生じるが, 脾臓の報告は少ない.
・悪性リンパ腫の骨髄浸潤+脾臓病変.
・骨髄増殖性疾患(この場合は骨髄線維症)を背景とした髄外造血巣, 巨脾
ということで, マルクするとDry tap. 骨髄生検所見より骨髄線維症と診断した
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巨脾は骨髄線維症で認められるものの, この多発性のmassはなんだろうか.
おそらくは髄外造血巣(Extramedullary hematopoiesis: EMH)ではないかとの予想.
髄外造血巣: EMH
慢性経過の血液疾患で十分な骨髄造血機能が維持できない状態が持続すると, 髄外の軟部組織において造血が生じる. これをExtramedullary Hematopoiesis(EMH)と呼ぶ.
・慢性溶血性貧血(サラセミア, 鎌状赤血球症), 骨髄線維症, リンパ腫, 白血病
・EMHには2つの機序がある:
骨髄髄質の正常造血組織が髄外に広がる
休止状態にある造血組織が再活性化する
・多い部位は傍脊柱 > 肝臓, 脾臓, リンパ節.
他に胸腺, 心臓, 乳房, 前立腺, 靭帯, 腎臓, 副腎, 胸膜, 後腹膜, 皮膚, 末梢・中枢神経など報告がある.
・EMHでは腫瘤による神経圧迫や, 肋骨, 長幹骨, 椎体に脊髄, 頭蓋骨, 顔面骨が広がることで, 骨粗鬆症を呈する.(画像は頭蓋骨の骨髄の増生を呈した症例)
(Semin Ultrasound CT MRI 35:255-262, 2014)
通常の造血部位
(a)胎児, (b)小児, (c)成人
(Clin Radiol. 2016 Sep;71(9):807-14.)
EMHの画像所見:
某脊柱病変: EMHで最も多い (Semin Ultrasound CT MRI 35:255-262, 2014)
肋骨の骨髄が増生することで, 骨粗鬆症となった例
某脊柱に次いで多いのは肝臓, 脾臓, リンパ節
・肝臓, 脾臓ではび慢性の肝腫大, 脾腫大が認められる
・組織的にはびまん性に造血細胞浸潤が認められる.
・脾腫大から脾梗塞となる例もあり
・稀ながら, 肝臓や脾臓に腫瘤を形成するEMHもあり.
境界明瞭の腫瘤で, エコーでは低エコー領域の不均一な腫瘤, CTでは低濃度の不均一な腫瘤, Hypovascularで脂肪組織を含む
(Journal of Medical Imaging and Radiation Oncology 56 (2012) 538–544 )(Clin Radiol. 2016 Sep;71(9):807-14.)(Semin Ultrasound CT MRI 35:255-262, 2014 )
他, 稀な部位・画像
・腎周囲の髄外造血巣
(Semin Ultrasound CT MRI 35:255-262, 2014)
・脊柱内の髄外造血巣
(Journal of Medical Imaging and Radiation Oncology 56 (2012) 538–544)
・副鼻腔内の髄外造血巣
(Journal of Medical Imaging and Radiation Oncology 56 (2012) 538–544)
2019年11月17日日曜日
心筋梗塞後のコルヒチン: COLCOT trial
いろいろなところで既に話題になっている, 11/16にNEJMより発表されたCOLCOT trial
(Efficacy and Safety of Low-Dose Colchicine after Myocardial Infarction NEJM 2019. DOI: 10.1056/NEJMoa1912388)
コルヒチンは動脈硬化による炎症を抑制し, 動脈硬化に合併する疾患の予防効果が期待できる.
COLCOT trial: 心筋梗塞後30日以内の患者を対象とし, コルヒチン投与 vs Placeboを比較したDB-RCT.
・患者は心筋梗塞を発症し30日以内の患者で, PCIで治療され, 国際ガイドリンに沿って高用量スタチンも開始されている群を対象
・除外: 重度の心不全, LVEF<35%, 3ヶ月以内の脳卒中既往, 2型心筋梗塞(酸素供給量と需要のバランスで生じるMI: スパスムや貧血など), 3年以内のCABG施行歴・今後CABGが予定されている患者, 3年以内の皮膚以外の悪性腫瘍, IBD, 慢性下痢症, 神経筋疾患, 持続性のCPK>3ULN(梗塞以外の原因で), 血液障害, 重度の腎障害(Cr>2ULN), 重度の肝障害, 薬剤・アルコール依存, ステロイドの全身投与, コルヒチンアレルギー
これら患者群をコルヒチン0.5mg/d群 vs Placeboに割り付け, 比較
母集団データ
アウトカム: フォロー期間の中央値は22.6ヶ月
・心血管イベント・死亡リスクは有意にコルヒチン群で低下する結果.
・特にリスクが軽減するのは脳卒中と再灌流療法を必要とする狭心症
それぞれ -0.6%(NNT 167), -1%(NNT 100)の低下
・炎症マーカーである高感度CRPや白血球数の変化は両者で有意差を認めず
副作用頻度
・悪心や鼓腸はコルヒチンで多いが下痢の頻度は有意差なし.
・肺炎がコルヒチン群で多い
---------------------------------------
MI後の少量コルヒチン投与は脳卒中リスクや再灌流療法を必要とする狭心症のリスクを軽減し得る.
消化管症状が副作用としては多いが, 継続可能なレベル.
これはインパクトの大きいRCT.
確かにコルヒチンは痛風や擬痛風を繰り返す患者などで長期的に使用することがありますが, 少量投与ならば高齢者でも(この場合は0.25mg程度ですが)耐えられる人は多い印象です.
動脈硬化性疾患のリスクを軽減できるならば抗血小板薬やスタチンとともに予防薬として広がる可能性はありそう.
(Efficacy and Safety of Low-Dose Colchicine after Myocardial Infarction NEJM 2019. DOI: 10.1056/NEJMoa1912388)
コルヒチンは動脈硬化による炎症を抑制し, 動脈硬化に合併する疾患の予防効果が期待できる.
COLCOT trial: 心筋梗塞後30日以内の患者を対象とし, コルヒチン投与 vs Placeboを比較したDB-RCT.
・患者は心筋梗塞を発症し30日以内の患者で, PCIで治療され, 国際ガイドリンに沿って高用量スタチンも開始されている群を対象
・除外: 重度の心不全, LVEF<35%, 3ヶ月以内の脳卒中既往, 2型心筋梗塞(酸素供給量と需要のバランスで生じるMI: スパスムや貧血など), 3年以内のCABG施行歴・今後CABGが予定されている患者, 3年以内の皮膚以外の悪性腫瘍, IBD, 慢性下痢症, 神経筋疾患, 持続性のCPK>3ULN(梗塞以外の原因で), 血液障害, 重度の腎障害(Cr>2ULN), 重度の肝障害, 薬剤・アルコール依存, ステロイドの全身投与, コルヒチンアレルギー
これら患者群をコルヒチン0.5mg/d群 vs Placeboに割り付け, 比較
母集団データ
アウトカム: フォロー期間の中央値は22.6ヶ月
・心血管イベント・死亡リスクは有意にコルヒチン群で低下する結果.
・特にリスクが軽減するのは脳卒中と再灌流療法を必要とする狭心症
それぞれ -0.6%(NNT 167), -1%(NNT 100)の低下
・炎症マーカーである高感度CRPや白血球数の変化は両者で有意差を認めず
副作用頻度
・悪心や鼓腸はコルヒチンで多いが下痢の頻度は有意差なし.
・肺炎がコルヒチン群で多い
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MI後の少量コルヒチン投与は脳卒中リスクや再灌流療法を必要とする狭心症のリスクを軽減し得る.
消化管症状が副作用としては多いが, 継続可能なレベル.
これはインパクトの大きいRCT.
確かにコルヒチンは痛風や擬痛風を繰り返す患者などで長期的に使用することがありますが, 少量投与ならば高齢者でも(この場合は0.25mg程度ですが)耐えられる人は多い印象です.
動脈硬化性疾患のリスクを軽減できるならば抗血小板薬やスタチンとともに予防薬として広がる可能性はありそう.
2019年11月15日金曜日
降圧薬は眠前投与が良い
降圧薬を眠前に投与し, 夜間の血圧Dipを作ることで, 心血管イベントリスクが有意に低下するという論文を2012年に紹介している
夜間の血圧をマネージメントする
個人的には, アドヒアランスが保てるならば, 降圧薬は1剤以上は夜間に移す様に処方しているものの, あまり一般的に行われているマネージメントとは言い難い.
10月にその大規模RCTが発表されたので紹介
Eur Heart J. 2019 Oct 22. pii: ehz754. doi: 10.1093/eurheartj/ehz754. [Epub ahead of print]
Bedtime hypertension treatment improves cardiovascular risk reduction: the Hygia Chronotherapy Trial.
Hygia Chronotherapy Trial: 高血圧患者 19084例を対象とし, 降圧薬を1種類以上眠前投与する群 vs 全て朝内服する群に割り付け, 心血管イベントリスクを比較したRCT
・患者は高血圧を認める成人症例で, 日中は活動, 夜間は就寝する生活ができる群
・除外項目は妊婦, アルコール依存・麻薬依存既往, 夜勤やローテーションでの勤務, AIDS, 二次性高血圧, CVDとそれに関連する既往症(UAP, HF, 致死性不整脈, Af, 腎不全, III-IVの網膜症)
アウトカム: フォロー中央期間は6.3年
・CVDリスク, 死亡すべて眠前内服群の方が良好.
サブ解析
・どの患者群でも眠前投与でCVDリスクの軽減効果が得られる.
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使用している降圧薬を1剤、眠前投与に移行するだけでCVDリスクを軽減させる、というなんともお得?なマネージメント法
アドヒアランスに問題がなければ, やって損することはないと思う.