多剤耐性緑膿菌: Multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa(MDRP),
また, Extensively drug-resistant Pseudomonas aeruginosa(XDRP)はカルバペネム系抗菌薬をはじめとした抗緑膿菌活性を有する抗菌薬に耐性を示す緑膿菌.
市中病院でも年間数例は保菌患者がおり, 年々増加しているような印象もある.
海外では, 地域によっては15-30%がMDRP/XDRPとの報告もある.
・ヨーロッパでは, 緑膿菌の13.7%が3種類以上の抗菌薬に耐性を示し, 5.5%が5種類すべての抗菌薬に耐性を示す
・米国では重症例の医療関連感染症のうち, 13%がMDRPとの報告もあり
(Clin Microbiol Rev. 2019 Aug 28;32(4). pii: e00031-19.)
MDRPに対する抗菌薬選択には何があるのだろうか?
MDRPに対する抗菌薬ではPolymyxinとCeftolozane-tazobactamが有用.
(Clin Microbiol Rev. 2019 Aug 28;32(4). pii: e00031-19. )
Polymyxin: Polymyxin BとE(colistin) (Clin Microbiol Rev. 2019 Aug 28;32(4). pii: e00031-19. )
・陽イオン性界面活性剤で, 細胞質膜を障害することで殺菌作用を有する
グラム陰性菌に効果が認められる.
・国内ではColistinはオルドレブ®点滴静注用, コリマイシン散(内服)
Polymyxin BはポリミキシンB硫酸塩として使用可能
・重大な副作用としては腎障害と神経障害(呼吸窮迫, 無呼吸)がある点に注意
・Polymixin BやColistinは双方ともネブライザーによる吸入量療法も試されている.
主にColistinで行われていることが多く, Meta-analysisでは肺炎や気管支炎に対する治療成功率は70.4%との報告がある.(Int J Antimicrob Agents. 2018 Jan;51(1):1-9.)
PolymyxinのMDRPに対する効果を評価した報告のまとめ:
Ceftolozane-tazobactam(ザバクサ®) (Clin Microbiol Rev. 2019 Aug 28;32(4). pii: e00031-19. )
・Ceftolozaneは抗緑膿菌活性が強い抗菌薬の1つで, 他の抗緑膿菌活性を有するβラクタム系抗菌薬の20-25%増.
・MDRP/XDRPのCeftolozane-tazobactamへの感受性は55-96.6%
・投与量や投与方法に注意が必要であり, 持続投与や5時間以上かけた長時間の投与の方が有効血中濃度を保ちやすい報告がある.
Ceftolozane/tazobactamのMDRPに対する効果を評価した報告のまとめ:
上記以降の報告:
米国の20病院において, MDRPをCeftolozane-TAZで治療した205例を後ろ向きに解析した報告
・感受性を評価した139例中, 感受性(+)は89.9%であった.
・臨床的改善は73.7%
細菌学的治癒は70.7%
(Open Forum Infect Dis. 2018 Oct 31;5(11):ofy280.)
12例のMDRP, 117例のXDRP(non metallo-β-lactamase産生)例におけるC/Tの感受性を評価した報告
・感受性あり: MIC ≤4mg/L, MIC50 ≤ 2mg/L, MIC90 ≤ 4mg/L
92.2%で感受性ありと判断.
(Rev Esp Quimioter. 2019 Feb;32(1):68-72. Epub 2018 Dec 14.)
多施設の後ろ向きCohort. 薬剤耐性緑膿菌感染症症例において, Ceftolozane/tazobactamで治療した患者群と, PolymyxinまたはAminoglycosideを用いて治療した群を比較.
・各群100例
・ICU症例が7割. 重症敗血症以上の症例が4割程度. VAPが5割を占める.
・薬剤を併用したのはCeftolozane群で15%, Polymyxin/Aminoglycosideで72%
アウトカム
・臨床的治癒は有意にCeftolozan/TAZ群で良好
・AKIリスクも低い
(Clin Infect Dis. 2019 Sep 23. pii: ciz816. doi: 10.1093/cid/ciz816. [Epub ahead of print]
Ceftolozane/Tazobactam vs Polymyxin or Aminoglycoside-based Regimens for the Treatment of Drug-resistant Pseudomonas Aeruginosa.)
参考: カルバペネム耐性グラム陰性菌における新規抗菌薬の選択
(Clinical Infectious Diseases® 2019;69(S7):S565–75)
・カルバペネム耐性のグラム陰性菌は, 腸内細菌群, 緑膿菌, アシネトバクター, ステノトロフォモナス マルトフィリアが挙げられる.
・Ceftolozane-tazobactamが効果的なのは緑膿菌のみ.
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MDRPの保菌者が入院してきたり, 入院中の患者から検出されたり, ということは年に数回あるため, 感染をきたした場合, どのような抗菌薬が使用可能なのか, というのは覚えておきたい.
Ceftolozane-tazobactam(ザバクサ®)は少し前まで売り込みも盛んな薬剤. 当院では採用は見送っていますが, やはりMDRPのために使用頻度は低く保ち, イザという時のためにとっておきたい薬剤と思う.