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2017年10月18日水曜日

非特異的胸膜炎

滲出性胸水貯留では胸膜炎を考える.
胸水検査, 培養などで精査するが, それでも原因がわからない場合は胸腔鏡検査, 胸膜生検を行う.

胸膜生検において, 胸膜の炎症所見や線維化は非特異的所見で診断に寄与するものではない.
特異的所見は腫瘍性細胞や乾酪性肉芽腫, 血管炎所見など
・このような組織所見しか得られない原因不明の胸膜炎をnonspecific pleuritis/fibrosis(NSP: 非特異的胸膜炎)と呼ぶ
・このうち他の精査やフォローでも原因が判明しないものが特発性胸膜炎
・NSPの中には引っ掛けられなかった悪性腫瘍も含まれる.
・ちなみに胸腔鏡検査の悪性腫瘍に対する感度は85-100%
(Current Opinion in Pulmonary Medicine 2011, 17:242 – 246)

胸腔鏡検査を施行した142例の解析では, NSP31%. 
他の報告でもNSP31-38%の頻度.
(Current Opinion in Pulmonary Medicine 2011, 17:242 – 246)
・胸腔鏡で胸膜炎の原因疾患が判明するのは58-69%(悪性腫瘍症例も含む)
・NSPの中に最終的に悪性腫瘍であった症例も0-12%程度あり

上記の31%(44)の解析:
(European Journal of Cardio-thoracic Surgery 38 (2010) 472—477)
・このうち5(12%)9.8±4.6ヶ月のフォローで悪性腫瘍を診断(全例が悪性中皮腫)
残りの37例中, 特発性は26(18.3%).
 他にはアスベスト関連, Cabergoline関連アミロイドーシス, RA, CABG後など原因となる疾患あり

滲出性胸水貯留があり, 胸腔鏡検査, 組織検査でNSPと診断された75例の解析
(Respiration 2005;72:74-78)
・平均年齢は63.4±13.3, 男性 49, 女性 26.
 喫煙歴(+)68%, アスベスト暴露歴は23%, 悪性腫瘍は29%
・7例は腫瘍性が推測され残り68例をフォローし, 最終診断
・特発性胸膜炎は15例(25%)
・フォロー中に肺癌や中皮腫を認めた症例が5例.
・NSPで胸水の再貯留をきたしたのは10例.


NSPにおける悪性腫瘍や悪性疾患の可能性をあげる因子:

胸腔鏡検査を施行された287例の解析では101(35.2%)Fibrinous pleuritisと診断.
(Respiratory Medicine (2012) 106, 1177e1183)
・Fibrinous pleuritis患者を2年間フォローした結果悪性中皮腫は16転移性腫瘍が2例, 結核が1例認められた.
・Fibrinous pleuritisにおいて, 術者の胸腔鏡所見からの印象は重要で
 良性だろうと判断した場合95.7%が良性.
 悪性だろうと判断した場合66.7%(2/3)が悪性
 判断に困る場合は68.7(2/3)%が良性となる

・Fibrinous pleuritis症例における悪性疾患を示唆する情報
 女性例, CTで悪性疾患が疑われる場合, 疼痛を認める場合は悪性の可能性.

NSPではいつまでフォローすべきか?

2001-2012年に診断されたNSP 413例より1年未満のフォロー症例, 膿胸, 結核性胸膜炎, 活動性の膠原病, 血管炎, 活動性の悪性腫瘍症例を除外した86例を解析.
(Ann Thorac Surg 2014;97:1867–71)
・平均フォロー期間は1824±1032
・胸膜悪性腫瘍と診断されたのは3例であった(3.5%)
 全例が悪性中皮腫で, 診断までの期間は205±126(範囲 64-306)
・22例が原因となりえる疾患が疑われ原因不明のIdiopathic 64例で計算すると4.7%が悪性腫瘍.

これより1年間のフォローが重要と言える.
それ以降で悪性腫瘍が判明することは少ない.