敗血症における抗菌薬投与までの時間を予後を評価した報告はいくつかある.
2015年のMetaでは, 早期抗菌薬使用で予後に有意差は認められない結果であった.
(Crit Care Med 2015; 43:1907–1915)
その後後ろ向きではあるが, いくつかNの大きい報告がでている.
ERを受診した重要敗血症患者で, 24h以内に抗生剤が開始された3929例を対象とした後ろ向きCohort.
(Crit Care Med 2017; 45:623–629)
・全体の死亡率は12.8%, 敗血症性ショックへ移行したのは25%
アウトカム
・初回抗生剤投与までの時間が1時間遅れるごとに敗血症性ショック移行リスクは8%増加する.
・院内死亡リスクもOR 1.05[1.03-1.07]と上昇する結果.
New York州における敗血症治療例49331例の解析.
(N Engl J Med. 2017 Jun 8;376(23):2235-2244.)
・New York州では敗血症の早期認知, 早期治療のためのプロトコールを作成.
ER到着から6時間以内にSepsis protocolを開始, 3時間以内に血液培養, 広域抗生剤の使用, 乳酸の評価を行うよう推奨している.
抗生剤投与までの時間と死亡率, リスク(B)
・(B)抗菌薬投与までの時間が長くなればなるほど死亡リスクも上昇している.
(C)補液ボーラス投与のタイミングはあまり関連はない
カルフォルニア北部で21のERよりランダムで抽出した敗血症症例35000例において, 抗菌薬投与までの時間と院内死亡リスクを評価した.
(Am J Respir Crit Care Med Vol 196, Iss 7, pp 856–863, Oct 1, 2017)
・抗菌薬投与までの時間は2.1時間[1.4-3.1]
抗菌薬投与までの時間と院内死亡OR
・1時間遅れるたびに OR1.09[1.05-1.13] 死亡リスクが増大
・絶対死亡率は,
敗血症では0.3%[0.01-0.6]増加,
重症敗血症では0.4%[0.1-0.8]増加,
敗血症性ショックでは1.8%[0.8-3.0]増加する.
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論文では様々な結果がでているものの, 敗血症と考えたらすぐ抗菌薬を開始して悪いことはないであろう.
個人的には1時間以内に, 「適切」な抗菌薬を開始することを信条としているし, そう指導をしている.
それには「適切」な感染源の検索と「適切」な起因菌の想定を迅速に行うことが不可欠で, 「不適切」な検査結果を待つ必要はない.
一見「手間」がかかるグラム染色が最も迅速に答えにたどり着く方法であったりします.