オルメサルタン(オルメテック®)はARBであるが, Sprue-like enteropathyを来すことがある.
・2012年に提唱され, 2015年までに100例ほど英語論文で報告されている
Olmesartan-associated enteropathy(OAE)という疾患概念が形成された.
・頻度は稀であり, 4000人規模のオルメサルタンのRCT(ROADMAP)では両群で下痢や腸炎の頻度に有意差はない結果.
・報告例の平均年齢は68歳. 範囲は46-91歳と高齢者で多い.
男女差は認めない.
・大半の患者が慢性の非血性下痢と体重減少が認められる
他は倦怠感, 悪心嘔吐, 腹痛, 腹部膨満感
重症例では脱水や電解質異常, 低栄養で入院が必要となる.
・Olmesartan開始後数カ月~数年経過して発症
平均 3.1年間, 範囲 0.5-7年間という報告もある.
血液検査所見では,
・正球性貧血, 低アルブミン血症
・Celiac sprueの検査であるanti-trasglutaminase, anti-gliadin, anti-endomysial antibodiesは陰性.
・HLA-DQ2, DQ8が65例中45例(69%)で認められる. HLA-DQ2が最も多い
DQ2, DQ8はCeliac sprueのリスクでもある
補足: 日本人では, DQ2は0.26%, DQ8は8.74% (http://www.bmdc.jrc.or.jp/stat.html 骨髄提供希望登録者の頻度)
画像所見は非特異的.
・小腸 腸管壁のびまん性腫大と腹腔内リンパ節腫大が認められる.
・内視鏡では粘膜の小結節形成, 絨毛萎縮, 潰瘍病変が認められる.
OAEの組織所見
・十二指腸粘膜生検でよく報告されるのが絨毛構造異常
100例中92例で絨毛の鈍化所見が認められた.
5例は絨毛構造は正常, このうち2例は上皮内リンパ球浸潤あり
1: 十二指腸絨毛の鈍化が認められる
2: 部分的な絨毛構造の鈍化, 粘膜固有層の炎症が粘膜下層に及んでいる
・上皮内リンパ球の増加: 25~100以上/100enterocyte (61%で陽性)
・粘膜下のコラーゲン線維の肥厚(22%)も多く認められる所見.
3: 上皮内のリンパ球増加
4, 5: 粘膜下コラーゲン線維の肥厚
・胃粘膜では潰瘍やlymphocytic, collagenous gstritisの所見が得られることもある(6)
・大腸や潰瘍末端部でも十二指腸と同様の所見や, 陰窩アポトーシス, 陰窩過形成, 好酸球増多を伴う粘膜固有層の慢性炎症所見が認められる(7)
2016年のReviewより, 104例のまとめ
(Human Pathology (2016) 50, 127–134 )
(DQ2/DR8はDQ2/DQ8と思われる)
OAEの診断, 治療
OAEは除外診断であり, 他にCeliac sprueや自己免疫性腸炎の診断, 除外が優先される.
・除外が必要な疾患: 自己免疫性腸炎, Celiac sprue, CVID(common variable immune deficiency), 細菌過増殖
・オルメサルタン内服中に出現した腸炎で,
他の原因が考えにくく
組織所見で矛盾しない結果ならばOAEを考慮する.
・治療はオルメサルタンの中止
中止後 1週間以内に下痢症状は改善を認める事が多い
・薬剤中止前にステロイドや免疫抑制剤を使用した報告では, 一部の患者では, 症状の改善が得られている.
・薬剤中止後組織所見をフォローした46例では前例で所見は改善
中止後2ヶ月以上で, 絨毛構造の正常化は41/46で確認された
他疾患とOAEの組織所見の鑑別点