例えば人工呼吸器管理中の患者で膿性喀痰が増悪すればVAPやVATを考慮するし,
COPD患者で膿性喀痰が増加すれば急性増悪を考慮する.
その色は何か意味があるのか?
急性の咳嗽を主訴に受診した241例において喀痰の色と細菌感染の可能性を評価.
(Scand J Prim Health Care. 2009;27(2):70-3.)
・黄色~緑色喀痰は,
アウトカム:
細菌培養陽性(>106CFU/mL)
扁平上皮<10/LPF
白血球>25/LPF に対して,
感度 79%[63-94], 特異度 46%[38-53], LR+ 1.46[1.17-1.85], LR- 0.16[0.13-0.18]であり, なんとも微妙な結果.
色が付いていても培養陽性を強く示唆するわけでは無いが, 色がついていなければ培養陽性となる可能性は結構下がる.
121例のCOPD急性増悪患者において, 喀痰の性状と細菌感染の有無を評価.
(CHEST 2000; 117:1638–1645)
・細菌量>107CFU/mLに対して膿性喀痰は感度 94%[85-98], 特異度 60%[45-73]
LR+ 2.4[1.7-3.3], LR- 0.1[0-0.2]と, 通常の咳嗽群よりも診断に寄与する
喀痰の色と細菌の種類の関係を慢性気管支炎患者群で評価
(Eur Respir J 2012; 39: 1354–1360)
・4003例の喀痰検体のうち, 培養陽性例が1898例(46.4%)
・緑色喀痰では58.9%が培養陽性, 黄色喀痰では45.5%と高い.
鉄サビ色喀痰では39%, 白色喀痰では18%
・喀痰の色と検出菌の関係
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黄色喀痰
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緑色喀痰
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白色喀痰
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鉄サビ色
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H. influenzae
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14.1%
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20.0%
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10.6%
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5.9%
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S. pneumoniae
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7.4%
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9.5%
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12.4%
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2.5%
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Moraxella catarrhalis
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7.3%
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11.2%
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2.3%
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4.4%
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H. parainflueinzae
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5.8%
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9.2%
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2.5%
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5.3%
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S. aureus
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3.4%
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5.4%
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1.7%
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5.3%
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K. pneuoniae
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3.9%
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3.1%
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0.8%
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1.8%
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P. aeruginosa
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2.4%
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3.1%
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2.5%
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1.8%
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Haemophilus spp.
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1.4%
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2.4%
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0.3%
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0.0
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陰性
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54.5%
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41.1%
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81.6%
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61.1%
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特に色で鑑別できるものでもない.
「肺炎球菌性肺炎に典型的な鉄サビ色」と言われているものの, そんなことはなく,
「緑」膿菌でも緑色の喀痰になるわけでもない.
というトリビア