急性大動脈解離を予測するリスクスコアがある(ADDリスクスコア)
スコアは3つのカテゴリーで評価し,
・全て満たさない場合は 低リスク(0点),
・1つ満たす場合は中リスク(1点)
・2つ以上満たす場合は高リスク(2-3点)と判断
既往, 家族歴
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疼痛の性状
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所見
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マルファン症候群
大動脈解離の家族歴 既知の大動脈弁疾患 最近の大動脈に対する処置歴 既知の胸部大動脈瘤 |
胸痛, 背部痛, 腹痛が以下の性状を満たす
・突然発症 ・重度の疼痛 ・避けるような疼痛 |
脈拍の欠損
左右の収縮期血圧差 神経局所症状 + 疼痛 新規A弁不全による雑音* + 疼痛 低血圧, ショック |
* 新規の出現か, 今まで指摘がない場合
・ADDリスクスコア ≥1は感度95.7%
・反対に言えばリスクスコア 0でも4.3%は大動脈解離. (Circulation. 2011;123:2213-2218.)
急性大動脈解離を疑われた1328例おいて, ADDリスクスコアを評価した前向きStudyでは,
・そのうち291例(21.9%)が大動脈解離であった
・ADDリスクスコア
0点は33.1%であり, そのうち5.9%が解離症例
1点群は48.6%であり, そのうち 27.3%が解離症例
2点以上は18.3%であり, そのうち 39.1%が解離症例
・ADDリスクスコア 0点は, 感度 91.1%[87.2-94.1], 特異度 39.8%[36.8-42.9]
リスクスコア 2点以上は, 感度 32.7%[27.3-38.4], 特異度 85.7%[83.5-87.8]
(Eur Heart J Acute Cardiovasc Care. 2014 Dec;3(4):373-81.)
除外が可能なスコア, というわけではない
ADD risk score(RS)とD-dimerを合わせると
急性大動脈解離疑いの1035例を対象としADD RSとD-dimer上昇(≥500ng/mL)を評価した前向きStudy
・大動脈解離は233例(22.5%)で診断.
・ADD RS 0点は31.1%, 1点は49.1%, ≥2点は19.8%
・各群におけるD-dimer(カットオフ 500ng/mL)の感度, 特異度
患者群
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感度(%)
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特異度(%)
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LR+
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LR-
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ADD RS 0
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100%
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30.4[25.2-35.9]
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1.44[1.33-1.55]
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0
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ADD RS 1
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98.7[95.3-99.8]
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35.7[32.1-39.4]
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1.53[1.45-1.63]
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0.04[0.01-0.15]
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ADD RS 2-3
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97.5[91.4-99.6]
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37.1[28.6-46.2]
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1.55[1.35-1.78]
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0.07[0.02-0.27]
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(International Journal of Cardiology 175 (2014) 78–82)
ADD RS 0点群におけるD-dimerのNPVは100%, PPVは8.26%
ADD RS 1点群におけるD-dimerのNPVは99.2%, PPVは25.6%
ADD RS 0点群におけるD-dimerのNPVは100%, PPVは8.26%
ADD RS 1点群におけるD-dimerのNPVは99.2%, PPVは25.6%
ADD RS 2-3点群におけるD-dimerのNPVは95.8%, PPVは50.3%
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D-dimerと組み合わせると, ようやく除外が可能なスコア, と言えるかもしれない.
また, D-dimerに頼るのはADD RS 0~1点程度にしておくべきであり,
ADD RS 2以上ではそもそもD-dimerの結果に関わらず, 評価必要がありそう.
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ADDリスクスコアにエコーを組み合わせてみる
エコーではFOCUSを評価
FOCUSは心エコーにおいて, 以下を評価する方法で, 上行大動脈解離の評価を行う.
直接的な解離所見: フラップ, 壁内血腫(壁厚>5mm)
間接的な解離所見: 上行大動脈の拡張(≥4cm), A弁不全の存在, 心嚢水貯留
大動脈解離を疑われた281例を対象とし, FOCUSとADDリスクスコアを評価した前向きStudy.
(Intern Emerg Med (2014) 9:665–670 )
・上記のうち50例がA型大動脈解離. 13例はそれ以外の大動脈解離.
各検査, ADDリスクスコアのA型解離に対する感度, 特異度
ADDリスクスコアにエコーを組み合わせてみる
エコーではFOCUSを評価
FOCUSは心エコーにおいて, 以下を評価する方法で, 上行大動脈解離の評価を行う.
直接的な解離所見: フラップ, 壁内血腫(壁厚>5mm)
間接的な解離所見: 上行大動脈の拡張(≥4cm), A弁不全の存在, 心嚢水貯留
大動脈解離を疑われた281例を対象とし, FOCUSとADDリスクスコアを評価した前向きStudy.
(Intern Emerg Med (2014) 9:665–670 )
・上記のうち50例がA型大動脈解離. 13例はそれ以外の大動脈解離.
各検査, ADDリスクスコアのA型解離に対する感度, 特異度
検査
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感度(%)
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特異度(%)
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LR+
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LR-
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エコー所見: 直接
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54[39-68]
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94[90-97]
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8.9[5-15.7]
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0.5[0.4-0.7]
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上行Ao拡張
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70[55-82]
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75[69-81]
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2.8[2.1-3.8]
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0.4[0.3-0.6]
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AV不全
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50[35-64]
|
80[75-85]
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2.6[1.7-3.8]
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0.6[0.5-0.8]
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心嚢液
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36[23-51]
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88[83-92]
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3[1.8-4.9]
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0.7[0.6-0.9]
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FOCUS どれか1項目以上
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88[76-95]
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56[49-62]
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2[1.7-2.4]
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0.2[0.1-0.5]
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ADD RS >0
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90[78-97]
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28[22-34]
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1.2[1.1-1.4]
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0.4[0.1-0.8]
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ADD RS >0 + FOCUS
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96[86-99]
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15[10-20]
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1.1[1-1.2]
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0.3[0.1-1.1]
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ADD RS >1
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40[26-55]
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81[75-86]
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2.1[1.4-3.2]
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0.7[0.6-0.9]
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ADD RS >1 + FOCUS
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24[13-38]
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98[96-99]
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13.9[4.7-41.2]
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0.8[0.7-0.9]
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超緊急で処置が必要な上行解離はADD RSとFOCUSで評価しつつ,
可能性が低ければD-dimer待ちつつCTを考慮, とかいうマネージメントはどうだろうか.
エコーなら腹部Aoも評価できますし.
当然なにかひっかかれば(以下の場合)すぐに動くと.
・ADD RS ≥2
・FOCUS陽性
・ADD RS 0-1, FOCUS陰性の場合はD-dimer陽性の場合
まあ臨床はそんな簡単にはいかないのですけどもね。