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2014年1月8日水曜日

2014年 高血圧ガイドライン (JNC8)

JAMA 2014 online first.
2014 Evidence-Based Guideline for the Management of High Blood Pressure inAdults
Report From the Panel Members Appointed to the Eighth Joint National Committee (JNC8) より

高血圧マネージメントのRecommendation
60歳以上の高血圧患者において;
 ≥60歳の一般患者群(DMもCKDも無し)では, BP≥150/90を治療導入ラインとし, 目標血圧はBP<150/90とすべし(Strong-Grade A)
 上記患者群でsBP<140とコントロール良好で, 副作用も特無ければ, 治療を弱くする必要は無い(Expert opinion-Grade E)

<60歳の患者群において;
 <60歳での治療開始ラインはsBP≥140 (Expert opinion-Grade E)
 ≥18歳でCKD(+), DM(+)の場合, 治療開始ラインはsBP≥140, dBP≥90で治療開始(Expert-E)

治療薬の選択について;
 非黒人での初期降圧薬選択はサイアザイド系, CCB, ACEi, ARBsのいずれかで開始すべき(Moderate recommendation-Grade B)
 黒人での初期降圧薬選択はサイアザイド系, CCBのどちらかで開始すべきである(Moderate recommendation-Grade C)
 ≥18歳でCKD(+)の場合, 降圧薬にはACEiかARBsを含むべき. これは人種, DMの有無に関係しない(Moderate-Grade B)

高血圧の主な治療は正常血圧を維持することであり, 治療開始後1ヶ月間で血圧安定化が困難な場合,増量するか, 他の薬剤を追加すべきである.
 その場合選択すべきはサイアザイド, CCB, ACEi, ARBsのどれか. 併用でもコントロール困難な場合はさらに追加するが,ACEiとARBの併用は避けるべきである.
 上記に挙げた薬剤を使用してもコントロール困難な場合,もしくは副作用で使用できない場合,β阻害薬やα阻害薬といった他の薬剤を考慮する.(Expert Opinion-Grade E)


今回のガイドラインでは, DMもCKDも無い≥60yでは治療開始ラインを≥150/90に引き上げたのが新しい点.
 また, β阻害薬の推奨も下がった.
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この60歳以上における高血圧治療開始ラインを下げた根拠に2つの文献を引用している. 双方とも日本国内からのOpen-label RCTであり, 紹介すると,

Hypertension. 2010;56:196-202.
VALISH trial; 日本国内において, 70-84歳で, 高血圧のみの3260例を対象としたopen-label RCT
 高血圧はsBP >160, dBP <90で定義.
 二次性高血圧, 悪性高血圧, sBP≥200, dBP≥90, 6m以内の脳血管イベント, MIの既往, 開始の6m前後にAngioplastyを施行された患者, NYHA III以上の心不全, 重度AS, 弁膜症, Af, flutter, 重度の不整脈, Cre≥2.0mg/dLのCKD,valsartanへのアレルギーのある患者は除外

上記患者群を厳密なBPコントロール群(sBP<140)
 vs. 緩徐なコントロール群(sBP 140-150)に割り付け, 心血管予後を比較.
降圧はValsartanを使用し, 増量でもコントロール困難ならば他の薬剤を追加する方法.

母集団と使用薬剤
アウトカム
 3.07年フォローにて, 心血管イベント, 死亡, 腎不全特に有意差無し.
 Sub解析でも有意差認める項目無し.

Hypertens Res 2008; 31: 2115–2127
JATOS trial; 日本国内において, 65-85歳のsBP>160を満たす本態性高血圧患者4418例を対象としたopen-label RCT.
dBP≥120, 二次性高血圧, 6m以内のStroke, 6m以内のMI, angioplasty, 入院が必要な狭心症, NYHA≥IIの心不全, Af等の持続性不整脈, 大動脈解離, 閉塞性動脈疾患, 高血圧性網膜症, 肝酵素≥2ULN,コントロール不良なDM(HbA1c ≥8%), Cre≥1.5mg/dLのCKD, 悪性腫瘍, 膠原病は除外.
上記患者群をsBP<140でコントロールする群
 vs sBP 140-160で維持する群に割り付け, 心血管予後を比較

治療はCCBを主に使用し, コントロール困難な場合, 他の薬剤を使う方法

アウトカム;
 心血管, 脳血管, 腎不全全て両者で優位差無し.

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これらの結果から, 65歳を超える, DMやCKDや心不全はあっても軽度(Cre<1.5~2.0, NYHA II-III程度まで)の高血圧患者では, sBP<140を厳密に行うよりは140-150, <160程度を維持しても予後は変わらない可能性がある.
ただし, 10-20年フォローしてようやく結論がでる分野でもあり, 楽観視はできない.

従って, これをこのまま臨床に適応するより, 
さらにリスクが低い群(CKD, DMが無い)で, sBP<150とするマネージメント推奨は理解できる. 
現に高齢者では低血圧による弊害も多いので, これはやり易くて良い感じ。

2014年1月7日火曜日

市中細菌性髄膜炎に合併する関節炎

発熱、意識障害で来院した80台男性。
腰椎穿刺にて混濁したCSFを認め、グラム染色ではグラム陽性双球菌が検出。
尿中肺炎球菌抗原も陽性であり、肺炎球菌性髄膜炎と診断。

入院後 手首の腫脹にも気付き、穿刺すると膿性の関節液が引けた.
多分 化膿性関節炎でよさそうと思われる.

このような細菌性髄膜炎と化膿性関節炎の合併というのは多いものなのだろうか?

BMC Infectious Diseases 2006, 6:64
16歳以上の市中細菌性髄膜炎696例のProspective study.

関節炎は48例 ( 7% )で認められた.
23/48で関節穿刺が施行され, 6例で培養陽性. 5例が髄膜炎菌で, 1例が肺炎球菌であった.
関節炎をきたした髄膜炎の起因菌は, 髄膜炎菌が67%, 肺炎球菌が23%と多く, それ以外はインフルエンザ桿菌, GBS, GGS, E coli等
関節炎の部位は膝関節が48%, 手首が17%, 足首14%. 多関節炎は40%であった.


細菌性髄膜炎と関節炎の合併については、
この文献をみつけたのみでした。

まぁ、合併していてもおかしくない、という感じでしょうか。

2014年1月6日月曜日

非アセトアミノフェン性の急性肝障害へのNアセチルシステイン

アセトアミノフェン中毒による急性肝障害にはNアセチルシステイン(NAC)は有用な薬剤の1つ.
最近出版されたMayo Clin Procに薬剤性肝炎というReviewがあり読んでみると, アセトアミノフェンが原因ではない急性肝障害でもNAC投与をすべきであるとの意見があった.
(Mayo Clin Proc. 2014;89(1):95-106)

そこでその根拠を勉強してみた.

Gastroenterology. 2009 September ; 137(3): 856–864
アセトアミノフェンによらないALI患者を対象としたDB-RCT
 18歳以上で急性肝障害患者(肝性脳症+で, INR≥1.5を満たす)患者群.
 アセトアミノフェン中毒, 虚血性肝炎, 妊娠関連, 腫瘍関連, 敗血症性ショック, 不応性低血圧, 移植適応外症例は除外.
 上記を満たす173例を, NAC vs Placeboに割り付け, 予後を比較.
 NACは150mg/kg/hで1時間, その後12.5mg/kg/hを4時間, 6.25mg/kg/hを67時間継続, 合計72時間投与.

 母集団は肝性脳症のGrade I-II, III-IVで分けて, 両群に割り付けられた.

母集団データ;
アウトカム;

両者で, 21日死亡率は有意差無し. 1年予後も有意差認めなかった.
肝性脳症 I-IIの群では肝移植Free生存率が有意にNAC群で良好. 肝移植率も有意に低いという結果であった.

この文献を元に, Grade I-IIの急性肝炎ではNACを投与すべきであるとの記載がされていた.
特に移植が容易にできない国, 環境では重要な結果と考えられる.

これ以外に同様のRCTは小児例を対象とした1つのみ.
HEPATOLOGY 2013;57:1542-1549
小児の非アセトアミノフェンALI患者におけるNACを評価したDB-RCT
 成人と小児ではALIの原因は大きく異なる. 
 そこで, 生後〜17歳までの非アセトアミノフェンALI症例184例でNAC vs Placebo群に割り付け, 予後を比較.
 NACは150mg/kg/dを7日間 経静脈投与.

 患者群は凝固障害を伴う急性肝障害で, 慢性肝障害が無い患者. APTT 15-19.9sec もしくはINR 1.5-1.9ならば肝性脳症合併が必須で, APTT 20sec以上, もしくはINR 2.0以上ならば肝性脳症は問わない.

 アセトアミノフェン中毒, 妊娠, 腫瘍, 敗血症, 脳ヘルニア, 昇圧剤を必要とする低血圧は除外.

母集団と急性肝障害の原因;
アウトカム;
1年生存率は両者有意差ないが, 肝移植Free生存率はNACで有意に低い結果.
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2013年の時点でRCTは成人例, 小児例の2つのみ
成人例ではGrade I-IIの肝性脳症を認める急性肝炎ではNACにて移植率が低下するとの結果,
小児例では有意差は認められなかった.  むしろNAC投与群で移植Free生存率が低下する結果.

今後のStudyでいくらでも結論は変わる可能性があり, 飛びつかない方が無難.
ただし, NAC自体は副作用もあまりなく, 安全に使用できる薬剤であるため, 成人例では使ってみる分には良いのかもしれない…

あ、というか日本には経口薬のみでしたね(笑)
まぁ、試しに経鼻胃管から使ってみてもいいかな、安いし。

2014年1月4日土曜日

腎動脈狭窄による高血圧, 慢性腎不全患者へのステントは予後を改善させない

N Engl J Med 2014;370:13-22.
CORAL trial; 
動脈硬化による腎動脈狭窄 + 高血圧, CKDを満たす947例のRCT
 患者は, 2-3剤の降圧薬を内服していても, sBP≥155mmHgとなる重度の高血圧症を有するか, CKD(GFR<60ml/min)を有し, 80%~<100%の腎動脈狭窄, もしくは60-80%の狭窄で, 狭窄前後の脈圧差≥20mmHgを満たす患者群.

除外項目は, Fibromuscular dysplasiaによる腎動脈狭窄, 虚血以外の機序によるCKD, Cre>4.0mg/dL, 腎長径 <7cm, 1箇所のステントのみでは治療困難な場合.

これら患者群を, 薬剤治療 + 腎動脈ステント術 vs 薬剤治療のみに割り付け心血管, 腎イベントリスクを比較.
 薬物治療群では, 特に禁忌がない限り, ARB(Candesartan) ± Hydrocholorothiazide, 加えてAmlodipine-atorvastatinを増量し, 血圧コントロール.
 血圧目標値はリスクが無い患者では<140/90, DMやCKDがある場合は<130/80とした.

母集団データ
アウトカム


5年後の心血管イベント, 腎不全の進行, 死亡リスクは両者で有意差無し.
Sub-analysisを見ても, 特に有意差のでる因子は無し.

MDSに合併する関節炎

Medicine 2014;93: 1-10
MDSでは様々な自己免疫疾患を合併する可能性がある.
 何故自己免疫疾患が増加するかは未だ解明されていない.
 RAや未分類関節炎, PMR, RS3PEの合併例が過去に報告されている.

MDSの診断基準を満たし, さらに以下を満たす22名の患者群を解析したRetrospective review.
 >6wk持続する>2の圧痛関節 and/or 腫脹関節
 関節以外の症状無し
 MDSと関節炎の診断は5年以内に行われる.
 結晶性関節炎, 化膿性関節炎は除外.

上記を満たす患者22名の解析
 平均年齢77.5歳[69-81], 12名が男性例, 女性は10例であった.
 MDSのタイプは RA(1), RARS(1), RAEB1(5), RAEB2(3), RCMD(8), 5q短腕欠損(2), CMML(1), MDS-U(1)

関節炎のタイプは,
 多関節炎 17例(77%), 左右対称性15例(68%), 単一の肩関節痛でPMRに典型的なのが4例, RS3PEに典型的な例が4例であった.
 RF陽性例が5例, その内ACPA陽性が2/5, XPで骨融解(+)が1例. RA診断Criteriaを満たすのが8例であった.

関節炎診断〜MDS診断までの期間は平均10ヶ月[6-42].
 関節炎の期間は平均3ヶ月[2-8] 
 関節炎とMDSを同時に診断したのは27%,
 関節炎が先行したのは55%, MDSが先行したのが18%であった.

Literature Reviewでは, MDS + 関節炎の68例を解析
 RA, 未分類関節炎例が42例, RS3PEが8例, PMRが18例報告されている.
 関節炎〜MDS診断までの期間はほとんどが1年以内だが, 5年以上経過して合併する例も少なからずある.

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MDSは高齢者では多い疾患なので, MDSと炎症性関節炎に本当に関連性があるのか, それともただ偶然合併したのか分かりません。
PMRもRS3PEも少ない疾患なのでやはり関連性があると考えるべきなのかもしれません.
またMDSと関節炎合併例では男女比がほぼ等しいのも興味深い所です.

高齢の男性例のRAやPMRでは(元々RS3PEは男性に多い)MDS合併の可能性を考えるべきとも考えられる。
また、PMRの患者さんで良く貧血が合併しており, いままでは 『慢性炎症による貧血かなぁ』と安易に考えていましたが、これも注意すべきかもしれませんね。

2014年1月3日金曜日

髄膜炎に対するJolt accentuation of headacheのStudy; ERを受診した患者群 その2

髄膜炎に対するJolt accentuation of headacheのStudy; ERを受診した患者群 ①

その1は↑から

American Journal of Emergency Medicine 32 (2014) 24–28
2006-2009年にERを受診した18y以上の髄膜炎疑いでLPを施行された患者230名のProspective cohort. 
マンハッタンのSt Luke’s Hospital, Roosevelt HospitalのER
意識障害や, 同意を得られない患者群は除外

230名中, LPにてCSF-WBC上昇を認めたのは47例(20%)
CSF培養陽性率は3例(6%)で, Neisseria meningitiditis, Cryptococcus neoformans, Enterovirusであった. (つまりほぼすべてがウイルス性)

上記患者群において, Jolt accentuation of headacheやKernig sign, Brudzinski signの髄膜炎診断に対する感度, 特異度を評価

Jolt accentuation of headacheは感度21% 特異度82%.
発熱や頭痛, 項部硬直, Kernig sign, Brudzinski signも同様に髄膜炎診断に対して有用とは言えない.
KernigやBrudzinskiは, 所見があれば, 中等度のCSF-WBC上昇をアウトカムとした LRは上昇するが, 感度7%程度と非常に低い.

2013年12月30日月曜日

アミオダロンによる肺障害

アミオダロンによる副作用
アミオダロンはその長い半減期から様々な副作用を呈する.
有名なのは甲状腺機能異常, 肝障害, 皮膚色素障害, 肺障害.
2つのCohort, アミオダロンによる副作用2216例の解析では, 最も多いものは甲状腺障害, 次いで不整脈, 血液毒性, 肺毒性の順番.

Br J Clin Pharmacol 2008;66:82-87

アミオダロンによる肺毒性 Am J Cardiol 2011;108:705–710
肺障害の頻度は0-10%の範囲で報告されている.
RCTでは0-8%, prospective cohortでは2-8%, Meta-analysisでは<2%の報告.
死亡率は1-33%と差がある.

肺障害に関わるリスク因子は, 年齢と使用期間が重要

60歳以上, 投与期間は半年以上の群で高リスクとなる.
また, 総投与量も重要であり,
 101-150g でOR 10.29[3.42-30.92]
 >150gで OR 9.50[3.82-23.67] と101g以上でプラトーとなる.

AF患者群のRetrospective studyにて, Am J Cardiol 2011;108:705–710
 ≥65yのAmiodarone使用者6460例, 非使用者50933例を比較.
 肺毒性を認めたのは, 使用群で3.87%, 非使用群で1.33%

肺障害のパターンは, 肺線維化が最多. 様々な間質性肺炎パターンを呈する. ARDSもあり.
アミオダロンによる肺障害のリスク因子;
男性例, 高齢者, COPD, 腎不全がリスクとなる.
また, アミオダロンの投与量; >200mg/d, ≤200mg/dも同等のリスク因子となり, 低用量でもリスクが少ない訳ではない.


投与開始〜肺障害発症までの期間;
 投与開始から6年間は徐々に発症例が増加し, その後プラトーとなった.
 数年は発症するリスクがある点に注意すべき.

アミオダロン肺炎の治療
通常の薬剤性肺炎ならば原因薬剤の中止で改善する例もあれば, 短期間(~1ヶ月程度)のステロイド治療でステロイドを中止可能な事も多い.

アミオダロンの場合, ステロイド減量とともに再度増悪する例も報告されており, 通常の薬剤性肺炎よりも長期間の免疫抑制が必要となる事がある.

理由としては、アミオダロンは脂溶性であり、体内蓄積する傾向が強いため. 
例えば, アミオダロンによる甲状腺炎や精巣上体炎は同部位に蓄積したアミオダロンに対する自己抗体が炎症の機序の1つとして指摘されており, 同様の理由でより長期間のステロイド投与、Taperingの際には再燃への注意が必要となる.
Internal Medicine 2006;45:1303-1307