ブログ内検索

2020年4月7日火曜日

造影剤腎症の予防: 補液無し vs Bicarbonateの前輸液

造影剤腎症のエントリーは過去に結構書いています
造影剤腎症

造影剤腎症; 造影CTに対するNAC投与による腎症予防効果


結局のところ, ごちゃごちゃありますが, 現時点ではリスクがある患者(CKDや糖尿病やら高齢者, 心不全やら)では補液しておけ、という感じです.

その補液の有用性も, 実際確立されたものではないです.

そんななか, Kompus trialが発表

補液無し vs 重炭酸Naによる補液を比較したRCT: Kompas
(JAMA Intern Med. 2020;180(4):533-541. )
・造影CTを予定しているStage 3CKD患者を対象とし撮影前に補液無しとする群と, 250mL1.4% Sodium bicarbonate1時間で投与する群に割付け, その後のAKIリスクを比較したRCT.
 (Bicarbonateの量は以前のRCTNSと予防効果が同等である報告より)

患者はeGFR 30-44mL/min/1.73m2を満たすか,
 eGFR 45-59mL/min/1.73m2 且つ 糖尿病, または以下の2項目を満たす群を対象.
 PAD, CHF, >75, 造影剤使用量>150mL, 腎毒性がある薬剤を使用(利尿薬, NSAID, Cyclosporin, Tacrolimus, 抗ウイルス薬, Amp B, アミノグリコシド, シスプラチン, VCM)

除外項目: eGFR≤30, <18, 妊婦, 造影剤アレルギー, 3年以内の腎移植, 血行動態不安定, 過去7日~未来5日までにStudy以外の造影剤を使用する予定がある患者

母集団

アウトカム

・造影CT2-5, 7-14日における腎機能低下は両群で有意差なし
・造影剤後AKI(2-5日におけるCr 25%以上, 0.5mg/dLの増加)も有意差無し
・長期予後も有意差認めず

--------------------------
G3CKD患者における造影CTでは特に予防的補液をしても造影剤腎症の予防効果は認められない.

結局, 
 予防的補液
 → NACやらBicarbonateやらもいいかも
 → 結局補液じゃん  ときて

 → 結局要らなくね? になるのだろうか.

自己抗体陽性は免疫チェックポイント阻害薬によるirAEのリスクになるのか?

年々適応拡大している免疫チェックポイント阻害薬.
使用により自己免疫疾患を合併するirAEが問題となりやすいが,
治療開始前の自己抗体陽性はirAEのリスクになり得るのだろうか?

2014-2018年にPD-1/PD-L1阻害薬を使用した191例の解析
(Clin Transl Oncol. 2019 Oct 1. doi: 10.1007/s12094-019-02214-8. [Epub ahead of print]
Safety and efficacy of PD-1/PD-L1 blockade in patients with preexisting antinuclear antibodies.)
・使用前のANA陽性例(1:160)と陰性例(<1:160)においてirAEリスクが変わるかどうかを評価した.
・ANA陽性例は9, 陰性例は182.

アウトカム
・ANAirAEリスクにはならない結果

また, 背景に自己免疫性疾患がある8例中irAEを発症したのは3.
原疾患の増悪を認めたのは1
・8例中ANA陽性は1例のみ

NSCLCPD-1阻害薬を使用した83例の解析
(Lung Cancer 130 (2019) 5–9)
・このうちANA陽性例(1:40)18例であった.
その全例が治療開始時に自己免疫疾患の兆候を認めていない

irAEの頻度:

・それぞれ1/3程度でirAEを発症. ANA陽性はリスクにはならない

Nivolumab, Pembrolizumabを使用した137例の解析
(JAMA Oncol. 2019 Mar 1;5(3):376-383.)
・治療開始前のRF(15IU/mL), ANA(1:40), 抗サイログロブリン抗体, TPO抗体の有無とirAEリスクの関連を評価
・どの患者も活動性の自己免疫疾患の診断は無し.

治療によりirAEを発症したのは66
自己抗体とアウトカム
・RF陽性例ではirAEリスクは上昇. 特に皮膚の>G3 irAEは上昇
ANAirAEリスク上昇に関連する.
抗甲状腺抗体は甲状腺機能低下症発症に関連

また, irAEを発症した方がPFS, OSは良好

RF陽性の方がPFSが良い

----------------------------------
治療前のANA陽性はirAE発症を予測しないとする報告が多く, あっても軽度のリスク因子程度と考えられる.
抗甲状腺抗体陽性患者では治療により甲状腺機能低下症が発症する可能性はあるかも.
RFは皮膚障害と関連している可能性がある.

また自己抗体陽性(特にRF)の方が治療反応性が良好?という傾向ありそう

2020年4月6日月曜日

上部消化管出血に対する内視鏡検査のタイミング

上部消化管出血の以前のノート

高リスク群の上部消化管出血において, どのタイミングで内視鏡検査を行うのかは, あまりRCTはない. あっても小規模だけ.

そりゃ早ければそれに越したことはないであろうが, 血餅で病変の観察が不十分であったり, または夜間や休日に救急搬送となった例では専門医呼び出すべきか, 転院させるべきかどうか, という問題も生じる.

今回 n=500規模のRCTが発表

(N Engl J Med 2020;382:1299-308.)
上部消化管出血(吐血, 黒色便)を認め, Glasgow-Blatchford score≥12を満たす患者群を対象としたRCT
・緊急内視鏡施行群(<6h) vs 早期内視鏡施行群(6-24h)に割り付け, 再出血リスクを比較.
除外項目: <18, IC不可, 妊婦, 終末期
 低血圧性ショック, 初期蘇生により安定しない患者これらは緊急内視鏡へ.
両群とも高用量PPIを使用(80mg IV, 8mg/hrで継続)
 内視鏡後もPPI72h継続.
 食道静脈瘤出血が疑われる患者(既往や肝硬変)では, 血管収縮薬と抗菌薬投与も併用.

母集団
・潰瘍が大半
・静脈瘤も1割弱含まれる

両群における内視鏡検査のタイミング

アウトカム
再出血リスク, 死亡リスクは両群で有意差なし
・内視鏡治療を行うのは緊急内視鏡群で多い.

------------------------------

・上部消化管出血において, 初期治療で血行動態が安定すれば, 朝まで待ってから内視鏡, という流れでも予後は増悪させない.
・PPIは高用量投与することと, これは大規模RCT中だが, トラネキサム酸を使用すると尚よいかも
・結構動態安定化しない場合や, 再増悪時は待たない方が良いのは当然

2020年4月3日金曜日

外傷性胸水貯留患者にはPhysical therapyと陽圧換気がよい

胸水貯留を認め, ドレナージが開始された成人症例を対象とし, 以下の3群に割り付け管理したRCT.
(Journal of Physiotherapy 66 (2020) 19–26)
・コントロール: CPAP 4cmH2O(sham)30分施行
 Exp1: インセンティブスパイロメトリー(5セットを20), 高周波振動を用いた排痰, CPAP 4cmH2O(sham)を座位で5分間, 100mの歩行
 Exp2: CPAP以外のExp1の介入 + CPAP 15cmH2O(active)を座位で30
・ドレナージの期間, 合併症リスクを比較した.

除外項目は結構動態不安定, 安静不可, 意識障害, 顔面外傷十分な咳嗽が困難, 嚥下障害, 嘔吐, 上部消化管出血, AMI, 嚢胞性肺気腫

母集団
・外傷による胸水貯留がほとんど
・外傷性胸膜炎とすると疼痛で呼吸が減弱している可能性もありそう

アウトカム
・CPAPによる陽圧換気は有意にドレナージの期間や入院期間の短縮効果が期待できる.

合併症リスク
・陽圧換気群(Exp2)では肺炎の合併率が低い
・抗菌薬使用頻度も低くすむ
Lung entrapmentリスクも低い

------------------------------
外傷性の胸水貯留患者では, CPAPによる陽圧換気やPhysical therapyを加えることでドレナージ短縮効果や, 肺炎, Lung entrapmentの合併リスクを軽減し得る.

陽圧喚起自体による肺拡張 → 胸水貯留スペースが減ることと,
外傷による疼痛性の低換気が軽くなることで肺炎やLung entrapmentのリスクも低下することが考えられそう.

前々から胸水ドレナージの際に陽圧喚起することでドレナージ早くなったり, 再膨張性肺水腫リスクを軽減させる効果があるのではないか, と思っており, この論文に飛びついたものの, ほぼ外傷性ということで, 内因疾患を母集団とした群の結果を熱望

2020年4月1日水曜日

クラインフェルター症候群による性線系以外の症候(自己免疫系)

成人診断(高齢診断ですが)のKlinefelter症候群がありました.

KSは基本的に長身, 女性化乳房, 不妊, 精巣萎縮が有名ですが,
診断されないケースもあり, 他の症候を合併することもあります

ということでチェックです

Klinefelter症候群は男性の不妊において最も多い遺伝子疾患
(Lancet 2004; 364: 273–83)
・一般人口の0.1-0.2%, 不妊男性の3.1%で認められるとされる.
長身, 手足が長い体格で
 精巣萎縮, 女性化乳房, 低ゴナドトロピン, FSH正常~高値を認める
・遺伝子異常の80%47, XXYであり,
 残りの20%48,XXXY; 48,XXYY; 49XXXXY; 46, XY/47, XXYモザイクがある
 基本的にX染色体の過剰が原因となる

Klinefelter症候群は未診断例が多い
・出生前診断が10%, 
 小児期や成人で診断される例が26%(低ゴナドトロピン, 女性化乳房, 不妊での精査)
 残り64%は診断されていない.


KS: 低ゴナドトロピン以外の症候

KSでは低ゴナドトロピン, 不妊以外に,
代謝内分泌疾患(インスリン抵抗性, 脂質代謝異常, 肥満)
血栓傾向(上記を含めて心血管障害リスク)
悪性腫瘍
・自己免疫性疾患 のリスクが上昇することが分かっている
(Metabolism Clinical and Experimental 86 (2018) 135–144)


悪性腫瘍全体は一般男性と比較してリスク上昇は認めないが
・乳癌リスクは19-30倍に,
性線外胚細胞性腫瘍リスクは30-40 (非セミノーマ型)
血液腫瘍: 白血病(SIR 3.62)や非ホジキンリンパ腫(SIR 3.02)
前立腺癌のリスクは反対に低下する(SIR 0.24)

自己免疫性疾患では, SLE, RA, JIA, PsA, PM/DM, SSc, MCTDなど
・自己免疫性甲状腺疾患の合併は多い
(Autoimmunity, 2015; 48(2): 125–128)

男性例のpSS 136例において, 47,XXYを評価した報告では47,XXY4例で認められた(2.9%).
・Control群では1/1254であり, 有意にpSSで多い.
また, RA 384例の評価では47,XXYは認めずSLE患者 308例では8例で陽性(2.6%)
・pSSSLE患者における47,XXY陽性率は同等.
(Clinical Immunology 168 (2016) 25–29)

男性例のSLE 213例において遺伝子検査を施行した報告ではKSと診断されたのは5(2.3%)
(ARTHRITIS & RHEUMATISM Vol. 58, No. 8, August 2008, pp 2511–2517)

男性例のSLE 276例の評価では, KS患者は7(2.5%)
・47,XXY4, 46,XY/47,XXY2, 46,XX/47,XXY1.
・KS患者におけるSLEでは漿膜炎や神経障害, AIHA, 血小板減少, RNP抗体, Sm抗体陽性例は認められず, 全体的に軽症例が多い.(一般的に男性例のSLEは女性例よりも重症が多い中で)
(Acta Pædiatrica 2011 100, pp. 819–823)

SLEに対するメトフォルミン

この間書いた,

ステロイド長期使用におけるメトフォルミンの併用

に関連?して

(Lancet Rheum 2020;2(4):PE210-6 DOI: 10.1016/S2665-9913(20)30004-7)
SLE患者に対するメトフォルミンを評価したDB-RCT

上海における多施設DB-RCT. 糖尿病合併のないSLE, 且つSELENA-SLEDAI <6, BILAG scaleA scoreを満たさず, B score≤1, さらに過去1回以上の再燃歴があり, 過去12M以内にPSL≥20mg/dを投与されていたことがある患者群を対象.
上記患者群をMet投与群(目標500mg tid) vs Placebo群に割り付け, 最大12ヶ月継続

・30日以内にMet使用歴がある群, 副作用で使用困難な群, 糖尿病の診断がある患者群, 肝障害, 腎障害(CCr<60mL/), 妊婦, 授乳婦は除外.
 また6ヶ月以内のCYC使用歴, 12ヶ月以内の生物学的製剤使用歴がある患者も除外.

母集団

アウトカム

・有意差はないが再燃率はMet群で低い可能性
 Major flareは有意差あり
SLEDAIの低下はMet群で良好
BMIも低下するため?
PSL使用量は変わらない

副作用頻度
・消化管副作用は有意に増加するが, 重大なものはなし

-----------------------------------