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2019年11月29日金曜日

EBV VCA IgMとCMV IgMのDual positive

20歳台女性.
2-3wk前からの頚部リンパ節腫大、発汗で受診.
頚部は後頚部〜前頚部LNの1横指程度の腫大. 扁平で可動性良好.

咽頭所見は認めないが, 咽頭痛はあったと.
トラウベ三角は濁音.
肝Knock pain無し.

血液検査では,
 Ly 8200/µL(86%)と著名に上昇. 異形Lyは認めず.
 AST/ALT 150/200, LDH 300程度に上昇.


伝染性単核症かな、ということで抗体を評価すると,
EBV VCA IgM 160倍, EBNA陰性.
CMV IgM(CLIA) 陽性(5台) とDual positive.

これはどう考えるか?

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EBVとCMV IgM双方陽性となるDual positiveの症例報告は, Pubmedで検索するとちらほらヒットする. どの論文もCo-infectionや, 免疫抑制による双方の再活性化として報告しているものが多い.

2018年に, 小児例を対象とした交差反応の可能性を報告があったので紹介する.

(Medicine (2018) 97:38(e12380))
小児例のprimary EBV感染症(IM)症例 494例を解析.
・患者はIMに矛盾しない症状, 経過を示し, EBV VCA IgMが陽性であることが確認されている. <3ヶ月, >18歳は除外.
このうち149例で肝酵素, CMV IgMも合わせて評価されており40(26.8%)CMV IgMも陽性であった.
 CMV IgMChemiluminescent micro particle immunoassay(CLIA)で評価
しかしながら1/40のみが血液中CMV Ag陽性, 尿中CMV PCR陽性, CMV IgG陰性であり, 他は交差反応と判断された.

CMV IgM陰性例と陽性例の比較
・CMV IgM陽性例では, より若年, 肝障害が多く, リンパ球数も多い

年齢に応じて, CMV IgM titerは低下

リンパ球が多いほどTiterは上昇する傾向

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EBVCMV IgMが双方陽性となる場合は,
・Co-infectionや免疫抑制によるEBVCMV双方が再活性化したとする症例報告は過去に複数認められるが交差反応の可能性もある.
・EBV virion glycoprotein gp85HSV-1,2, CMVにも交差反応を示す報告がある(J Virol. 1987 Apr;61(4):1125-35.)

若年ほど, Lyが高いほど, 肝障害高度なほどCMV IgMも高値となる傾向から, EBV感染に対する免疫反応が強く, それによるLy上昇, 免疫機序の肝障害, CMVへの交叉反応に関連している可能性が考えられる.

今症例では小児例ではないが, Lyは非常に高く, 肝障害も顕著. 傾向としては上記の報告に類似している.