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2019年4月2日火曜日

症例: SLE患者のヘンな菌血症

70歳代女性. 
SLEの既往があり, 他院にてPSL 3mg/dを継続されている。
現時点で目立つ所見や臓器障害は認めない。

悪寒戦慄を伴う発熱にて救急受診.
身体所見や各種検査にて明らかな感染源となる所見は認められず, 経過観察入院とした.
翌日血液培養よりGNRが陽性となり, CTRXを開始.
胸腹部CTを見直すも明らかなフォーカスは認めず, UTIも否定的.

後日Edwardsiella tardaが陽性となった.

補足: E. tardaは腸細菌科に属するGNRだが, ヒトの腸管に常在することは稀.
 自然界では汽水域にいるらしく, ウナギやナマズ, 養殖魚から検出される. これらの摂取により腸炎をきたすこともある.
 腸管感染症以外は創部感染が多い.

 個人的には肝硬変患者のSBPでE. tardaが腹水・血液培養より陽性となったことはある.

 この症例では, 魚の生食歴は無し. 腸管感染を示唆する所見乏しかった.

PSLを3mg/d使用しているSLE患者であり, 免疫不全も考慮.
薬剤以外の免疫不全の評価として, 免疫グロブリンをチェックしたところ, 
IgG, IgAは正常範囲である一方, IgMが<20mg/dLと異常低値であった.

この病態は一体。。。?

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選択的IgM低下症(おそらくSLEに伴う)
(Ann Allergy Asthma Immunol. 2006;97:717–730.)

IgMは免疫グロブリンの10%を占める(IgA15%, IgG75%)
・20-40歳時に最も高くなり, 50歳以上では低い値で一定
 また, 一般的に女性の方が高い.
選択的IgM低下症はIgMが単独で低値(小児では<20mg/dL, 成人では<-2SD)となり, 他の免疫グロブリンは正常
ただしIgEは軽度上昇することがある.
完全にIgM欠損は0.03%と希だが, IgMの低値は入院患者の0.1-3.8%で認められるまた軽度男性に多い(1.97% vs 1.42)

13700人の成人のうち, 選択的IgM低下は36(0.26%)
診断時の年齢は55±13.5
血清IgM値は29.74±8.68mg/dL
症状は再発性の気道感染症, 細菌感染症, 喘息, アレルギー性鼻炎血管運動性鼻炎, 血管浮腫, アナフィラキシー
・抗核抗体陽性が13%
他にIgG1IgG3などサブクラスの低下も伴うことがある
 IgG4低下の報告もあり

選択的IgM低下症に合併した疾患
・背景疾患, 併存症はアレルギー性疾患や血管浮腫, 自己免疫疾患がある.
・選択的IgM低下症に関連する自己免疫疾患(Clinic Rev Allerg Immunol (2014) 46:104–111 )

・悪性腫瘍ではClear cell sarcoma, 多発性骨髄腫, NHL, primary cutaneous anapestic large cell CD30+ lymphoma, promyelocytic leukemia, 肝細胞癌, Stomach Leiomyomaの報告あり(Clinic Rev Allerg Immunol (2014) 46:104–111 )

選択的IgM低下症の機序
(Front. Immunol. 8:1056.)
・T細胞の関連やB細胞の低下が関連している

この病態にIVIGは効果があるのか?
免疫グロブリン製剤に含まれるIgMは少量ではあるが投与により感染の抑制や重症度の抑制効果は期待できる(Front. Immunol. 8:1056.)
・IgA欠乏症では抗IgA抗体があるため, 免疫グロブリン投与によるアレルギー反応や副反応が生じるため. 原則禁忌.
・IgM低下症でも同様のリスクはあるかもしれないがIgM抗体の存在は認められていない
・ただしIgG異なり半減期も短い(23日と5)でありあまり意味がない可能性も高い.

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去年診療した症例の1つ(症例レビューカンファで思い出しました・・・)
実は治癒後, 数カ月経過して再度別の菌ですが菌血症をきたして入院しています.
幸い抗菌薬投与ですんなり改善しましたが, 重症化する場合は躊躇なく免疫グロブリンを投与するつもりでした.

成人で発症しうる免疫不全ではCVID, AIDSが有名ですが, このような病態も意外に多くあるということで紹介

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