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2019年3月7日木曜日

CJDっぽい自己免疫性脳症

まだ診断はついていませんが...

70台男性. 急性経過の認知機能障害, 手足・舌のミオクローヌス様運動
数日〜1週間程度の経過で増悪した上記症状にて受診. 小脳失調は認めない.

色々鑑別した結果,
 髄液: リンパ球優位の細胞数増多(10-30程度), 蛋白増加
  髄液細胞診陰性
 頭部MRI正常
 血液培養、髄液培養陰性(抗酸菌含む). Tau蛋白陰性, HSV-PCR陰性
 T-SPOT陰性
 一般的な自己抗体は陰性.
 抗甲状腺抗体陰性
 腫瘍精査では何も引っかからず。

病歴や所見, 検査は長くなるので端折ります

ミオクローヌスが目立ったことから, CJDを鑑別にいれつつ精査, フォローしましたが、診断つかず, 精査の数週間で状態は増悪.
 尿閉, 起立性低血圧といった自律神経症状も出現した.

感染症の可能性は乏しく神経内科相談の上mPSLパルスを施行すると, 明らかに反応があり改善傾向を認めた.

という経過. その後IVIGを施行.

この経過からLGI-1抗体がでるのではないかと精査中(結果未)


さて, CJDに類似した自己免疫性脳症でPubmedを漁ると, VGKC抗体脳炎と橋本脳症がよく引っかかる.

CJDを疑われた346例で細胞表面抗体を評価したところ, 6例で陽性.
・CASPR2抗体, LGI-1抗体, NMDAR抗体, AQP4抗体, Tr抗体, 不明が1例ずつ
・ただし, これら6例はどれもCJDの診断基準(possible, probable)は満たさなかった.
(JAMA Neurol. 2014;71(1):74-78. )

初期にCJDと判断され, 最終的に自己免疫性脳症であった8例中, 6例はLGI-1抗体陽性例, 2例がCASPR2抗体陽性例.
(Journal of Neuroimmunology 295–296 (2016) 1–8 )
・LGI-1抗体とCASPR2抗体 = VGKC抗体
・上記8例と, CJD19例を比較
・ミオクローヌスはCJDミオクローヌス様運動は自己免疫性脳炎で認める.
・自律神経障害も自己免疫性脳炎で認める所見

VGKC抗体脳炎で認められるMyoclonus-like symptomMyoclonusと判断され, CJDを疑われる場合が多い.
・CJDにおけるMyoclonusは感度が高い所見ではあるもののCJDの中期~後期で多く出現する症状.
 一方で, Myoclonus-like symptomは自己免疫性脳炎の早期に認められる症状であり, 病初期で認められる場合はCJDよりも自己免疫性脳症を疑うべきかもしれない.

また, 橋本脳症もCJDに類似する報告があり,
(J Neurol Neurosurg Psychiatry 1999;66:172–176 )
・急速進行性の認知症, ミオクローヌス, 精神症状, 失調など症状が類似している
・てんかん発作や局所症状はCJDでは稀
 変動性の経過もCJDらしくないと言える.