ブログ内検索

2019年3月20日水曜日

症例: 30歳台男性, 心停止

30歳台男性の心停止症例.
 小児期からのてんかん既往があり, 抗てんかん薬3剤を使用しているが, コントロールは不十分の背景あり。
 朝方物音がし、確認しにゆくと呼吸停止で発見。救急隊到着時Asystoleであり、CPR開始され搬送された。最終生存確認は20分前。

 ER搬送後ECMO CPRに移行し, その際肺塞栓、ACSは除外。全身CTでもSAHや脳卒中, 動脈解離, 出血は認めず, 電解質や薬剤でも原因となるものは認められず.

 心停止の原因はなんだろうか?
--------------------------------








てんかん患者では一般人口と比較して突然死のリスクが高く,
明らかな原因を認めないてんかん患者の突然死をSUDEPと呼ぶ.

明らかな誘因は不明であり, そのような病態・症候群として現在リスク因子や病態の解明が行われている感じ

以下(Lancet Neurol 2016; 15: 1075–88): SUDEPのReviewのまとめ:

SUDEP: sudden unexpected death in epilepsy. てんかん発作による予測不能な突然死
・20-45歳のGeneralized tonic-clonic seizureで多く脳幹機能の障害による無呼吸や徐脈が原因と推測されている.
頻度は母集団により異なり,
 てんかん手術を予定している患者, 術後患者では6.3-9.3/1000pt-y
 てんかんクリニックの患者では1.1-5.9/1000pt-y, 主に難治性痙攣患者.
 一般人口では0.35-2.3/1000pt-y
てんかん患者全体では1.2/1000pt-yとの報告がある.

SUDEPの定義(主にStudyで使用される)


SUDEPの機序
・痙攣後の副交感神経が有意となることで心血管系や脳幹機能が抑制され, 突然死に至る

SUDEP 2例における心拍数と呼吸数の変動.

遺伝子の関与も示されている



SUDEPの頻度と年齢分布


SUDEPのリスク因子

・どの年齢でも生じるが多いのは20-40歳代.
・もっとも強いリスク因子はコントロール不良なGeneralized, tonic-clonic seizure(GTCS)である.
他は男性例(OR 1.42),  16歳未満での発症(OR 1.72), 罹患期間が15年以上(OR 1.95), GTCSの発作頻度: 1-2/yOR 5.073/y以上でOR 15.46
・てんかん発作後の無呼吸もSUDEPのリスクとなる報告もある(Neurology® 2019;92:e1-e12.)

最近のReviewにおけるリスク因子のまとめ
(Curr Treat Options Neurol (2019) 21:7 )


SUDEPは夜間, 睡眠時に多い.
・4時~8時に生じるのが58.5%をしめる.
 夜間の痙攣発作はSUDEPリスクを2.6倍に上昇させる
・非睡眠時に生じるのは31%, 8-12, 16-20時に多い
 10.5%は発症時間が不明.

SUDEPと同様に突然死を呈するSIDS, SUDCとの比較
SIDS: sudden infant death syndrome,
SUDC: sudden unexplained death in childhood